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兼松の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

兼松は、電子部品・食料・鉄鋼・素材・航空機・ロケットなどを幅広く取り扱う中堅商社。1889年に兼松房治郎がオーストラリアからの羊毛輸入を目指して設立した豪州貿易兼松房治郎商店を源流とし、戦前には日本の羊毛輸入の約半分を支配する大手商社へ躍進。1967年には大手商社・江商と合併して兼松江商と社名変更、十大総合商社の一角に数えられるまでの躍進を果たした。1990年代以降にバブル崩壊の余波で経営危機に瀕したが、事業整理を経て再建を果たした。現在では、ITソリューション・半導体分野において存在感を放つ他、オートミール輸入ではトップシェアを誇る。

POINT

1.1990年代までは総合商社の一角、現在は電子・食料・鉄鋼に事業を集中
2.売上高・利益が拡大傾向、財務体質は自己資本比率がやや後退
3.平均年収1,204万円まで急増、従業員の待遇改善が急速に進む

業績動向

✔売上高と営業利益

兼松の売上高は6,000億∼7,000億円で安定していたが、2021年以降は急ピッチな増加傾向。とはいえ、全盛期と比べると低位推移が続く*1。営業利益は緩やかな増加が続いており、2022年には過去最高となる営業利益389億円に到達。
*1:兼松は1992年に売上高6兆円を誇ったが、バブル崩壊後に巨額債務を抱えて業績悪化。事業整理を進めたことで売上高1兆円未満にまで縮小した経緯がある。

✔セグメント別の状況

兼松は、電子・デバイス事業(電子部品・半導体製造装置・電子関連素材・モバイル通信機器・セキュリティ機器など)、食料事業(調理食品・フルーツ・農産加工品・酒類・飲料原料など)、鉄鋼・素材・プラント事業(鋼板・鋼管・線材・ステンレス製品・医薬品・機能性化学品など)、車両・航空事業(航空機・ヘリコプター・防衛機器・自動車などの貿易取引など)、の4事業を有する。
兼松はバブル崩壊後に事業整理を進め、現在では電子・食料・鉄鋼が主要3事業となっている。とりわけ電子・デバイス事業は利益貢献が大きく、全社利益の半分以上を稼ぎ出している。

✔最終利益と利益率

兼松の純利益は営業利益と連動して増加傾向*2。COVID-19感染拡大による急変動期にも安定的に利益確保ができている。営業利益率は緩やかな増加が続いており、直近では4.27%に到達。
*2:兼松の業績好調は、①大手企業のIT・DX投資の活況による電子・デバイス事業の好調、②鋼材価格の上昇など素材市況の高騰による素材・鉄鋼分野での好調、などが主要因。

✔自己資本比率と純資産

兼松の自己資本比率は20%台で安定的であったが、直近の2022年には19%に急落*3。低水準ではあるが安定的な利益確保ができているため大きな問題にはならない。純資産も増加傾向が続いており、直近の2022年には純資産6,776億円に到達。
*3:兼松は2023年3月に上場子会社の兼松エレクトロニクスを買収。買収費用750億円を銀行借り入れで賄ったことで負債が増加して自己資本比率が低下した。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

兼松の平均年収は業績連動色が強いが、長期的には増加傾向。かつては商社らしくない給与水準であったが、直近では平均年収1,204万円に到達しており商社らしい給与水準にまで改善。大卒総合職は30歳前後で年収900万円ほど、課長職レベルで年収1,500万が目安。

✔従業員数と勤続年数

兼松の単体従業員数は長年に渡って横這い傾向が続いており、700人~800人ほどの組織規模。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7,800人ほど。平均勤続年数は直近で13.7年とやや短めだが、社員の待遇改善が進んだのが最近であるため今後の伸びに期待。

総合評価

企業格付け:A

かつて大手総合商社の一角として売上高6兆円規模を誇ったが、バブル崩壊後の倒産危機により急激な衰退を経験した企業。電子・食料・鉄鋼を主要3事業として事業整理したことで、現在では電子部品・ITに強い商社として認知される(総合商社とはあまり言われない)。業績は2020年から好転しており、売上高1兆円台を10年ぶりに回復できそうな勢い。2022年には750億円を投じて兼松エレクトロニクスを完全子会社化したことで、更なるIT領域への積極攻勢に向けた土台を築いた。一時的な買収費用の負担で財務体質がやや悪化したが、これまでグループ外へ流出していた兼松エレクトロニクスの利益をグループ内部で完全に取り込めるようになっており、それほど心配するほどでもないか。

就職格付け:A

現在では総合商社とはあまり呼ばれなくなったものの、1990年代までは大手総合商社であったが故に、一般知名度はそこそこ。よくある鉄鋼や電子部品の専門商社とは異なり、幅広い事業を手掛けているのは事実である為、ミニ総合商社ともいえる。平均年収は2016年頃までは700万円台で大手メーカーの方がマシと言われる状況であったが、同年以降は一気に待遇改善が進展。現在では平均年収1,200万円台にまで躍進、豊田通商・長瀬産業・岩谷産業を追い抜いて双日と同格クラスにまで到達。再び「準総合商社」と呼ばれる日が近そうな待遇改善を示した。福利厚生はそこまで傑出してはおらず、若手社員のみ借上げ社宅制度があるが、その後は地方転勤・海外赴任者への社宅提供があるくらい。待遇改善が進んだのは喜ばしいニュースだが、この勢いがどこまで持続可能かが今後の焦点となるだろう。

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