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化学メーカー

【勝ち組?】信越化学工業の就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

信越化学工業は、塩化ビニル・シリコンウエハーなどを主力とする大手化学メーカー。石炭窒素を製造する為に信濃電気と日本窒素肥料が合弁会社として1926年に設立した信越窒素肥料を源流とし、戦前の1940年に現社名の信越化学工業に社名変更。塩化ビニル・合成石英・フォトマスクブランクス・シリコンウエハーなど現代社会に不可欠な素材で世界シェア1位を掌握し、レアアース・電子材料など先端素材でも世界的存在感。化学セクターで時価総額1位、全上場企業トップ10社に食い込む(2023年5月時点)。

POINT

・世界シェア首位級の製品多数の化学メーカー、化学業界で断トツの利益率
・売上高は2兆円超に急成長、利益率も高水準で財務も著しく堅実
・平均年収886万円と意外に普通だが、平均勤続年数20年超でホワイト

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:73(最上位)

日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関上位級

総合職の採用人数は年間100人以下であり、大手化学メーカーとしては少なめ。一般認知度はかなり低いが、それでも優良企業だけあって倍率は相当に高くなる。総合職の出身大学は旧帝大・早慶クラスがボリューム層。
採用大学:【国公立】東京大学・大阪大学・東北大学・名古屋大学・北海道大学・東京工業大学・千葉大学・豊橋科学技術大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・関西学院大学など(出典:マイナビ2026

業績動向

✔売上高と営業利益

信越化学工業の売上高はかつて1兆円超で安定していたが、2021年以降に急成長を遂げて2兆円規模に拡大。2022年には2.81兆円に到達*1。営業利益も売上高に比例して急成長を遂げ、2022年には9,982億円に到達。
*1:業績好調の理由は、①最主力の塩化ビニール樹脂での値上げ効果、②世界的な半導体不足による半導体用シリコンウエハーの需要急増、③為替レートの円安推移による為替効果、など。

✔セグメント別の状況

信越化学工業は生活環境基盤事業(塩化ビニル樹脂・か性ソーダ・メタノールほか)、電子材料事業(半導体シリコン・希土類磁石・フォトレジスト・半導体封止材など)、機能材料事業(シリコン・セルロース誘導体・塩ビ酢ビ共重合成樹脂・エラストマーほか)、加工・商事・技術サービス事業(樹脂加工・技術プラント輸出など)の4事業を有する。
生活環境基盤事業が売上高の約40%を支えており、電子材料事業も売上高の約30%を抑える。需要が安定的な基盤材料を基軸に据えつつ、市況に応じて利益が乱高下する先端材料を組み合わせることで「好況期に大きく稼ぐが不況期にも底堅い」事業構造を構築できている。

✔最終利益と利益率

信越化学工業の純利益は売上高に連動して増加基調、2022年には過去最高となる7,078億円に到達。2023年はやや減益*2したが、依然として巨額の利益を稼いでいる。営業利益率は化学メーカー屈指の高さを誇り、直近でも29%の高水準にある。
*2:2023年の減益要因は、①主力の塩化ビニール樹脂における需要減速による利益縮小、②半導体材料の需要緩和による利益減少、など。COVID-19後の急激な市況回復の反動とも。

✔自己資本比率と純資産

信越化学工業の自己資本比率は80%以上の超高水準にて推移、安定した利益体質を加味すれば倒産リスクとはおよそ無縁。有利子負債は極端に少なく、無借金経営に等しい。純資産も右肩上がりでの成長を遂げており、直近では4.42兆円に到達。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

信越化学工業の平均年収は830~850万円のレンジで極めて安定的な推移。著しい好決算と成長をしているにも関わらず、従業員の給与水準に向上が見られないのは不思議。総合職であれば30歳で550万〜650万円、課長職レベルで1,050万〜1,150万円ほど。平均年齢は長期的に42歳前後のレベルで安定的。

✔従業員数と勤続年数

信越化学工業の単体従業員数は業績成長に連動して増加基調にあり、直近では3,680人に到達。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は2.49万人ほど。平均勤続年数は20年を上回っており、大手メーカーの中でも特に長い。離職率が非常に低いホワイト企業である。

総合評価

企業格付け:AAA

■業界ポジション
化学業界において売上高では第5位に位置するものの、利益では他企業を引き離して断トツの首位。純利益で言えば、優良企業として広く認知される富士フィルムホールディングスの2倍以上、業界随一の巨大企業である三菱ケミカルグループの4倍以上。一般知名度はかなり低いが、まさしく化学業界におけるトップスタア企業である。他社との違いは優れた事業ポートフォリオにあり、塩化ビニル樹脂や半導体シリコンなど高利益率製品で世界シェア首位級。

■業績動向
好調。2021年以降は主力製品の旺盛な需要と為替レートの円安恩恵をフル享受してお。、2022年には営業利益率35%という驚異的水準に飛躍。大手化学メーカーの営業利益率が軒並み1桁%台に留まることを思えば、頭二つ飛びぬけている。2023年は減収減益に沈んだが、それでも純利益5,201億円と巨額利益を確保できている。

■財務体質
超優良。自己資本比率は82.7%(2023年)と大手化学メーカーとしては屈指の高水準。財務健全性を高水準に維持しながら、著しい急成長を遂げている。有利子負債はたったの243億円(2023年)に過ぎず、純資産4.42兆円(2023年)と比較すれば無いも同然。

就職格付け:AA

■給与水準
直近の平均年収は886万円と、著しい業績好調・高利益率の割には従業員への還元はそれほど進んでいない。総合職であれば30歳で550万〜650万円、課長職レベルで1,050万~1,150万円ほど。年功序列色が強く、30代後半までは同期と大きな給与差が広がることもない。

■福利厚生
良い。いずれの事業所にも独身寮が整備されており、独身の若手社員であれば自己負担が月額1万円以下で生活可能。既婚者であれば社宅が用意され、生活コストを大きく節約できる。独身寮に入居できる期間は40歳までとやたら長く、独身を貫く場合には資産形成に有利か。極めて健全な財務体質と利益率による「倒産リスクとは無縁」の安心感がなによりの福利厚生であろう。

■キャリア
事務系総合職・技術系総合職・一般職の3職種制。事務系総合職は営業・経理・人事・広報・法務・総務などに配属され、技術系総合職は研究開発・生産技術・プラントエンジニアリング・品質保証・ITなどに配属される。基本的には入社時の職種において専門性・経験を蓄積していくことが求められるが、部門間を隔てたローテーションもある。一般職は事務作業・秘書業務に職域を限定されるが、昇給スピードは遅く昇進も限られる。

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出典:信越化学工業株式会社(有価証券報告書)