カテゴリー
石油資源

【勝ち組?】住友金属鉱山の就職偏差値と平均年収・待遇【企業研究レポート】

企業概要

住友金属鉱山は、鉱山開発・精錬・素材生産を展開する住友グループの非鉄金属系の資源会社。住友グループの源流企業であり、1590年に蘇我理右衛門が銅吹所として創業。1690年に別子銅山を開発、1973年の閉山まで日本経済を銅採掘で支えた。1980年代からは菱刈鉱山で金採掘を進める他、海外へ資源開発・精錬を展開。現在では素材メーカーとして磁石・電池材料・触媒なども供給するほか、非鉄金属分野では権益量・生産量で世界トップ5社に食い込む。

POINT

・銅・ニッケルなどの採掘・精錬における世界的大手、住友Gの源流企業
・売上高・利益は過去最高圏から急速に悪化、財務体質は優良
・平均年収823万円で大手メーカー並み、福利厚生は住宅補助が優良

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:69(上位)

かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関上位級

総合職の採用人数は年間40名~75名と企業規模なり。資源開発・非鉄金属分野における上位企業であり、ハイレベル大学からの応募は多い。博士卒の採用実績も少なくない。
採用大学:【国公立】東京大学・大阪大学・九州大学・神戸大学・筑波大学・信州大学・岡山大学・秋田大学・東京工業大学・電気通信大学・国際教養大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・同志社大学・関西学院大学・青山学院大学・立命館大学・日本大学など(出典:マイナビ2027

業績動向

✔売上高と営業利益

住友金属鉱山の売上高は2020年まで8,500億~9,200億円で推移していたが、2021年から急増傾向*1。2024年には過去最高となる売上高1.59兆円に到達している。営業利益は2021年に2,050億円まで増加したが、同年以降は低下傾向。2024年には営業赤字▲158億円に転落している。
*1:2021年に業績好調となった要因は、①世界的な資源価格高騰による銅・ニッケル価格の上昇、②電気自動車の生産台数増加によるバッテリー正極材向けニッケルの拡販、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:2024年の営業赤字の理由は、①ニッケル価格の低下による製錬子会社・コーラルベイニッケル社の減損損失、②材料事業における電池材料の将来需要の減少による減損損失、など、

✔セグメント別の状況

住友金属鉱山は、資源事業(国内外における非鉄金属資源の探査・開発・生産など)、精練事業(金・銀・プラチナ・銅・ニッケル・フェロニッケル・亜鉛などの精練・販売など)、材料事業(電池材料・磁性材料・近赤外線吸収材料・結晶材料・気泡コンクリートなど)、その他事業(不動産事業・エンジニアリング事業など)、の4事業を有する。
当社は社名から鉱山会社だと思われがちだが、実際には金属精錬が売上高の約74%を占める精錬会社である。銅・ニッケルなど非鉄金属価格が上昇すると業績好転する一方、非鉄金属価格が下落すると業績悪化を引き起こしやすい。

✔最終利益と利益率

住友金属鉱山の純利益は資源価格に左右されやすいこともあり、不安定。2021年には過去最高となる純利益2,810億円に急増したが、2024年には164億円まで減少*2。営業利益率も2021年には16.3%まで上振れたが、2024年には▲1%に転落している。
*2:2021年は世界的な非鉄金属価格の上昇に加えて、チリ・シエラゴルダ銅鉱山の全持分譲渡による売却益743億が加わったことが急増の原因。持分譲渡による売却益はあくまでも一過性要因であるため、2022年には純利益が減少した。

✔自己資本比率と純資産

住友金属鉱山の自己資本比率は長期的に60%以上で長期的に推移しており、財務基盤は安定的。資源価格の上下変動に備えて、一時的な業績悪化であれば余裕で耐え凌げる水準を確保している。純資産は2021年から右肩上がりで急増しており、2024年には2.04兆円に到達。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

住友金属鉱山の平均年収は770万~830万円ほどで安定的に推移しており、業績変動と給与の連動性は低い。総合職の場合、30歳で年収650万~750万円、課長職レベルで年収1,050万~1,200万円が目安。平均年齢は2018年から低下傾向にあり、2023年は40.7歳となっている。

✔従業員数と勤続年数

住友金属鉱山の単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いており、2023年には2,892人に到達。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7,490人ほど。平均勤続年数は2018年まで20年を上回って推移していたが、同年以降は減少傾向。2023年には18年まで低下したが、大手企業の標準的な水準を上回る。

総合評価

企業格付け:BBB

■業績動向
悪化傾向。2021年までは世界的な資源価格の高騰を追い風に売上高・利益いずれも過去最高を更新して絶好調であったが、あくまでも資源価格高騰・円安に支えられた好調であった。2024年には営業赤字にまで転落。とりわけ、①ニッケルの世界的な供給過剰、②電気自動車ブームの一服による電池材料の需要停滞、は構造的な問題であるため当社独力の努力では如何ともしがたい難しさがある。

■財務体質
良好。良くも悪くも資源価格に業績を大きく左右される事業であるために財務健全性には相当の注意が払われている。自己資本比率60%以上を長年に渡って維持し続けており、負債への依存度も低い。当社は450年以上に渡って存続してきた老舗企業であり、数々の戦争・災害を乗り越えて生き残ってきた実績もある。

■ビジネス動向
電池材料を得意とする当社にとって成長ドライバーとして期待された電気自動車ブームの一服が痛手。そのうえ電気自動車に採用される正極材がNCA系からNMC系へと品種転換が急速に進んだことが、NCA系を前提とした投資を進めてきた当社にとって想定外に。ニッケル需要の停滞に加えて、将来の成長ドライバーでも誤算が生じた苦しさが当面の課題である。

就職格付け:BB

■給与水準
大手メーカー同等水準。平均年収780万~830万円ほどで安定しており、大卒総合職なら30歳で年収650万円は超え、リーダークラスになれば年収800万円以上に到達、課長職レベルで年収1,050万以上となる。業績は年度により好不調がはっきり分かれるが、賞与額はあまり業績に連動しておらず、良くも悪くも安定的である。

■福利厚生
企業規模相応。若手社員には独身寮が整備されており、月1万円以下で入居可能。が、築50年以上の風呂トイレ共同物件も多数ある。退寮後は借上げ社宅制度・家賃補助制度を選択することになるが、家賃補助額は2万円/月ほどであるため借上げ社宅の方が圧倒的にコスパが良い。借り上げ社宅を選べば年額50万円以上の節約になるため、生活水準は見た目の年収以上。

■キャリア
事務系・技術系の2職種制。資源開発という事業ゆえに、技術系では鉱物学・岩石学・構造地質学などの専攻者も有利。年功序列色があるものの優秀であれば入社10年強で管理職まで到達することも制度上は可能。主力工場は愛媛・鹿児島に集中であるため生産系技術職は同地での勤務可能性が高い。

■労働災害が多い
鉱山開発という業種柄、労働災害が多い。2000年代は年間60件以上の労働災害で従業員が死傷しており、2020年代においても年間20件以上の労働災害が国内だけで発生。2020年には死亡事故について労働安全衛生法違反の罪で略式起訴も受けている。

就職偏差値ランキング【完全版】はこちら!

出典:住友金属鉱山株式会社(有価証券報告書)