企業概要
京王電鉄は、神奈川県・東京都において鉄道事業・バス事業・百貨店行・不動産業などを展開する大手鉄道会社。1910年に鉄道会社として創業。1913年に笹塚-調布間を開通して営業を開始、1926年には府中~東八王子まで延伸を果たした。戦時下には東急電鉄・小田急電鉄・京浜急行電鉄などと国策合併を強いられたが、終戦後には分離独立。現在では東京都・多摩地域と神奈川県・相模原地域を地盤としており、グループ54社で幅広い事業展開を志向。年間輸送人員数は6.7億人を超え、鉄道業界9位に位置する。
・神奈川県・東京都が地盤の大手私鉄、百貨店・バス・不動産など事業多角化
・売上高・利益はCOVID-19前にまで回復、財務体質はそこそこ
・平均年収760万円だが総合職は昇給が早い、福利厚生はかなり充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:68(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。給与・待遇は大手企業の中でも上位クラス、満足度の高い人生を安定して歩むことができる可能性が高い。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:総合職=難関上位級、現業職=難関
総合職の採用数は年間15人~20名と門戸は狭い。首都圏の大手私鉄ゆえに人気は高く、ハイレベル大学からの応募も多い。総合職としての入社難易度は相当以上である。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・名古屋大学・東北大学・筑波大学・横浜国立大学・一橋大学・東京外国語大学・横浜市立大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学・明治大学・法政大学・東洋大学・拓殖大学・国際基督教大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
京王電鉄の売上高は2021年に2,998億円まで激減*1したが、同年以降は増加傾向に転換。2024年には売上高4,529億円まで回復を遂げている。営業利益は2020年に▲208億円に赤字転落したが、2024年には541億円まで増加。売上高・営業利益いずれもCOVID-19以前の水準に回復している
*1:当社はCOVID-19感染拡大により大打撃を被った1社。外出自粛により鉄道需要が激減したうえ、グループ会社のタクシー・バス・ホテルなども大打撃を受けた。
✔セグメント別の状況
京王電鉄は、運輸業(鉄道・バス・タクシー・物流サービスなど)、流通業(百貨店・ストア・書店・ベーカリーなど)、不動産業(京王不動産による不動産分譲・賃貸など)、レジャー・サービス業(ホテル・レストラン・旅行代理店・ゴルフ場運営・テニススクールなど)、その他事業(鉄道車両整備・建設・人材派遣など)、の5事業を有する。
当社は鉄道会社のイメージが強いが、実際には事業多角化が極めて進んでいる企業。現在では運輸業事業が売上高に占める割合は約26%に過ぎず、鉄道が売上高に占める割合は高くない。現在では流通事業・不動産事業・レジャー事業も育っており、とりわけ不動産事業は全社利益の約32%を稼いでいる。
✔最終利益と利益率
京王電鉄の純利益は2020年に▲275億円の赤字に陥ったが、同年以降は増加傾向に転換。2024年には純利益428億円までの回復を遂げている。営業利益率は2020年に▲6.61%まで悪化したが、2024年には11.9%まで拡大。鉄道会社としては良好な利益率となっている。
✔自己資本比率と純資産
京王電鉄の自己資本比率は長期的に36%~42%ほどで推移しており、鉄道会社としては自己資本比率はやや高めの水準にある*3。純資産は2022年まで3,400億~3,700億円で推移していたが、2024年には4,147億円に上振れしている。
*3:鉄道会社は鉄道車輛や線路の維持管理に膨大な設備投資資金を要する特性があり、自己資本比率は他業界と比べて低めとなる特徴がある。ただし、安定したキャッシュフローが得られる業態であるため自己資本比率がやや低めであったとしても大きな問題とはならない。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
京王電鉄の平均年収は2023年まで650万~730万円ほどで推移していたが、2024年は760万円に上振れしている。総合職の場合、35歳の課長代理職で年収750万〜850万円、課長職レベルで年収950万~1,050万円が目安。運転士採用でも30代で年収500万円は超え、40歳で年収650万円以上となる。平均年齢は41.2歳(2024年)と大手企業の標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
京王電鉄の単体従業員数は2019年をピークに微減傾向にあり、2024年は2,411人ほどの組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.30万人規模。平均勤続年数は17.6年(2024年)と、大手企業の標準的な水準を上回る。
総合評価
企業格付け:B
■業績動向
COVID-19の大打撃から回復。リモートワークの普及によって通勤需要は全盛期までに回復しないが、ホテル事業や不動産事業の着実な成長によって売上高・利益を拡大。ただし、2025年からは鉄道事業の修繕費の増加負担が重く、利益はいったん頭打ちになる公算。
■財務体質
可もなく不可もなし。有利子負債は4,469億円(2024年)と巨額であり、純資産4,147億円(2024年)を上回る。鉄道事業は安定したキャッシュフローが得られる業態であるため問題はないが、COVID-19のような異常事態が発生すると弱さも。が、それでも自己資本比率は40%前後とそこそこの水準であり、鉄道会社の中では上位級ではある。
■ビジネス動向
現在の重点領域は、新宿駅西南口地区開発計画・笹塚以西連続立体交差事業・聖蹟桜ヶ丘再開発事業。鉄道事業はリモートワークの普及でCOVID-19以前まで回復しないと判断、鉄道以外の事業拡大を志向。全社利益を支えている不動産事業への更なるテコ入れを模索しており、不動産販売拡大を目指す。2023年には高級マンションを主力とするサンウッドを買収、マンション販売の規模拡大は既定路線となりつつある。
就職格付け:BB
■給与水準
関東大手私鉄の標準的水準。若手社員のうちは給与水準は低めだが、30歳過ぎに課長補佐へと昇進すると年収750万円以上へと跳ね上がる。課長へ昇進すれば年収1,000万円が見えてくる。年功序列色が強いため、同職種の同期入社組と概ね横並びで昇進していく。COVID-19以降には給与水準が急落したが、2022年には早々に元の水準まで回復した。
■福利厚生
大手私鉄の標準的水準。独身寮・社宅が揃っており、給与水準が低めの若手社員のうちは格安で生活できる。サテライトオフィスが新宿・調布・府中・八王子に揃っているため、郊外で家賃を抑えたい場合も都心で働きたい場合も柔軟。
■キャリア
事務系総合職・技術系総合職・エキスパート職の3職種制。総合職は将来の京王グループ幹部候補として育成されるため、30歳過ぎで課長代理・30代後半には課長へと昇進するスピード感で出世していく。総合職はローテーションで様々な職種を経験しながらの昇進が基本である。なお、総合職は新卒で例年20人程しか採用されない狭き門。