企業概要
三菱UFJ信託銀行は、MUFGグループ傘下の大手信託銀行。1927年に三菱財閥が信託会社として設立。終戦後には財閥解体により『朝日信託銀行』と改称するが、1952年には『三菱』を再び行名に冠する。1974年にはニューヨークに支店を開設して海外進出を果たした。2001年には日本信託銀行と合併、2005年にはUFJ信託銀行と合併して規模を拡大。現在ではMUFGグループの信託銀行として不動産・受託財産・資産金融・証券代行など幅広い金融ソリューションを展開、三井住友信託銀行に続く業界2位に君臨する。
・MUFGグループの大手信託銀行、信託銀行分野で業界2位を確立
・業績は安定的で景気後退局面にも強い、財務体質も健全
・平均年収915万円で福利厚生も良好だが、55歳以降は転籍リスクあり
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:71(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用数は年間120人~200人ほど。専門性を重視する金融業界の志望者には根強い人気があり、業界首位の三井住友信託銀行と人気を二分する状況にある。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・名古屋大学・九州大学・北海道大学・神戸大学・千葉大学・一橋大学・東京外国語大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・同志社大学・中央大学・関西学院大学・立命館大学など(出典:大学通信オンライン)
業績動向
✔経常収益と経常利益
三菱UFJ信託銀行の経常収益は2021年までは7,000億〜8,000億円レベルで推移していたが、同年以降は急増傾向*1。2023年には経常収益1.82兆円に到達している。経常利益は1,300億〜2,300億円での横ばいが続いており、良くも悪くも安定的である。
*1:2022年に経常収益が増加した理由は、①世界的な金利上昇による貸出金利息・預け金利息の増加、②保有する有価証券利息配当金の増加、が主要因。
✔セグメント別の状況
三菱UFJ信託銀行は、リテール事業(個人向け預金・資産運用・不動産売買・資産承継など)、不動産事業(法人向け不動産の購入・売却支援)、証券代行事業(株式実務アドバイス・株主総会運営・配当金支払いなど)、資産金融事業(金銭債権信託・資金調達支援)、受託財産事業(企業年金運営・オルタナティブ投資支援・海外資産管理サービスなど)、市場事業(為替リスク軽減サポート・為替取引サービス)、その他事業(取締役会ガバナンスコンサルティング)、の6事業を有する。
当行は多種多様な金融サービスを提供するが、最大の稼ぎ頭は受託財産事業となっており、売上高・利益の各60%以上を占めている。同事業では法人向けの企業年金運営・資産運用サービスを主力としている他、最近ではオルタナティブ投資支援にも注力している(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
三菱UFJ信託銀行の純利益は970億〜1,600億円での横ばいが続いており、安定的な推移が続いている。ただし、経常収益が急増した2022年・2023年は減益となっている。自己資本利益率は長期的に3%~6%ほどで推移しており、銀行業としては標準的な水準。
✔自己資本比率と純資産
三菱UFJ信託銀行の自己資本比率は6.3%(2023年)と低めだが、銀行業であれば健全な水準。銀行業は顧客から預金・有価証券を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。純資産は2023年に2.63兆円となっているが、長期的な横ばい傾向が強い。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
三菱UFJ信託銀行の平均年収は2019年から増加傾向にあり、2023年には915万円に到達。総合職であれば30歳で830万円~950万円ほど、課長職レベルで年収1,400万~1,500万円レベル。平均年齢は43.8歳と、大企業の標準的な水準である。
✔従業員数と勤続年数
三菱UFJ信託銀行の単体従業員数は2017年をピークに減少傾向が続いており、2023年は6,283人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.44万人ほど。平均勤続年数は直近で16.6年と銀行業としては長めの部類。
総合評価
企業格付け:AA
三菱UFJフィナンシャルグループにおいて信託機能を担う企業。信託銀行分野において三井住友信託銀行に続く業界2位の地位を確立しており、業界3位のみずほ信託銀行(純利益407億円・2023年)を大差で突き放している。最近では政府による「資産運用立国」の旗振りを追い風にMUFGグループ内での存在感を拡大しており、資産運用・不動産・相続・企業年金など幅広いソリューションによって顧客の囲い込みを図っている。業績においては経常利益・純利益が安定しており、金融業界にありながら景気後退局面にも底堅い。当行に限らず、信託銀行は「預かり資産の規模を活かして利益を稼ぐ」点においてストックビジネスの性質が色濃く、良くも悪くも業績が安定していることが強みである。財務体質においても優良であり、純資産は2.63兆円(2023年)と巨額。不良債権比率も0.05%(2023年)に過ぎず、大手金融機関の中でも特に少ない部類となっている。
就職格付け:AA
国内最大手の信託銀行として金融業界の志望者には底堅い人気を誇る企業。給与水準においてはメガバンク同等(三菱UFJ銀行と初任給も横並び)であり、30歳で830万円~950万円ほど、課長職レベルで年収1,400万~1,500万円レベル。入社8年目に調査役補に昇格すると年収900万円を超え、家賃補助や残業代が多ければ年収1,000万円に達する。福利厚生においても恵まれており、入社8年目までは独身寮に月額1.5万円で入居できるほか、2023年には転居を伴う転勤時には支度金として50万円が支給されるように。勤務地においても全国48支店の多くが政令指定都市に所在しており、極端な僻地への転勤がないのは大きな安心材料である。ただし、総合職は55歳頃から徐々に子会社・関連会社へ片道切符での転籍(給与は75%ほどに減)となっていくため、キャリア後半戦における収入減少にはよく注意したい。