企業概要
三菱HCキャピタルは、ファイナンスリース・オペレーティングリース・割賦販売・不動産リースなど多種多様なファイナンスソリューションを提供する大手総合リース会社。2021年に三菱グループの三菱UFJリースと日立グループの日立キャピタルが経営統合して誕生。リース業界では業界首位のオリックスに続く、業界第2位の座を三井住友ファイナンス&リースと争う。旧三菱UFJリースは航空機・不動産・コンテナなどのアセットリースを得意とし、旧日立キャピタルは機械製品などの販売金融が得意。
・三菱G・日立Gの大手リース会社、経営統合によって業界3位へ躍進
・売上高・利益は経営統合で過去最高を更新、財務体質も良好
・平均年収977万円だが総合職は全国転勤が前提、福利厚生はそれなり
就職偏差値
✔就職偏差値:68(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。給与・待遇は大手企業の中でも上位クラス、満足度の高い人生を安定して歩むことができる可能性が高い。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間30人~50人ほど。2021年の社名変更から日が浅いために一般知名度はあまり高くないが、リース業界の志望者にとっては上位企業であるため選考倍率は低くない。
採用大学:【国公立】一橋大学・大阪大学・北海道大学・金沢大学・熊本大学・岡山大学・滋賀大学・小樽商科大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・同志社大学・明治大学・立教大学・法政大学・立命館アジア太平洋大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
三菱HCキャピタルの売上高は2020年まで8,300億~9,400億円で推移していたが、2021年に日立キャピタルと経営統合したことで急成長*1。2023年には売上高1.95兆円に到達しており、リース業界3位に躍進した。営業利益も2021年から増加傾向にあり、2023年には過去最高となる1,461億円に到達。
*1:2021年に売上高が急増した理由は、日立キャピタルと経営統合が主要因(参考リンク)。合併前にあたる2019年の売上高は三菱UFJリース9,237億円に対して日立キャピタル4,640億円であった。
✔セグメント別の状況
三菱HCキャピタルは、カスタマーソリューション事業(法人・官公庁向けファイナンス、販売金融・不動産リース・金融サービスなど)、海外事業(欧州・北米・中国・アジア・オセアニアにおける事業展開)、環境エネルギー事業(再生可能エネルギー事業・環境関連ファイナンスなど)、航空事業(航空機・エンジンリース)、ロジスティクス事業(海上コンテナ・鉄道貨車リースなど)、不動産事業(不動産証券化・不動産リース・アセットマネジメントなど)、モビリティ事業(自動車リース)、の7事業を有する。
当社は三菱UFJリース・日立キャピタルの事業を承継したことから極めて広範な事業ポートフォリオを有する。海外売上高比率は約40%レベルにまで達しており、イギリスを中心とした欧州地域における事業展開も大きい。同業の三井住友ファイナンス&リースが航空事業・不動産事業に注力している一方、当社の航空事業・不動産事業はまだ売上高に占める比率は高くない。
✔最終利益と利益率
三菱HCキャピタルの純利益は2020年までは530億~700億円ほどで推移していたが、2021年の経営統合により増加傾向。2023年には過去最高となる純利益1,238億円に到達している。営業利益率は2019年まで9%台で推移していたが、2021年の経営統合後は6%~7%台に低下している。
✔自己資本比率と純資産
三菱HCキャピタルの自己資本比率は12%~15%前後で推移しており低めの水準だが、リース会社としては健全な水準。リース会社は借入などで調達した資金でリース対象の資産を購入、収益を得るビジネスモデルゆえに自己資本比率が低くなりやすい*2。
*2:リース会社は巨額の負債を背負っている場合が常だが、リース対象の機械設備などを顧客に一定期間に渡って貸し出すため、安定的に資金回収できるビジネスモデル。顧客企業が大量倒産などしない限り、自己資本比率の低さは問題にならない。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
三菱HCキャピタルの平均年収は増加傾向にあり、2023年には977万円に到達*3。大卒総合職は30歳で年収700万〜800万円ほど、課長職レベルで1,100万〜1,300万円ほどと推定。賞与比率が高い給与制度となっているため、直近数年間の業績好調も給与水準を下支えしている。
*3:当社は2021年に給与制度を改定しており、管理職以上の給与引上と職責に応じた給与設定が導入された。この影響により平均年収が2022年から上昇している。
✔従業員数と勤続年数
三菱HCキャピタルの単体従業員数は2020年まで緩やかな増加傾向が続いていたが、2021年には日立キャピタルとの経営統合により2,235人まで急増。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は8,400人ほど。平均勤続年数は2023年で15.5年と、大手企業の標準的な水準にある。
総合評価
企業格付け:BBB
三菱商事・三菱UFJフィナンシャルグループが筆頭株主の大手リース会社。かつて業界中位級であった三菱UFJリース・日立キャピタルが2021年に経営統合したことで、リース業界3位にまで食い込んだ新興勢力。業績においては売上高・利益いずれも2021年の経営統合によって急増、直近数年は過去最高となる水準で推移している状況。幸運にも三菱UFJリースと日立キャピタルはそれぞれ得意分野が異なっており、経営統合後にも事業重複する事態には陥らず、相互補完によるシナジーを発揮できていると評価できよう。2022年にはロシアによるウクライナ侵攻により、同業の三井住友ファイナンス&リースと東京センチュリーがロシア向け航空機リースで巨額の特別損失を計上したが、三菱HCキャピタルはロシア向けの航空機リース事業がなかった為に被害を被らなかったことも幸運であった。現在の中期経営計画においては、将来における利益成長の柱として「再生可能エネルギー・不動産・データプラットフォームサービス」の3領域を設定(参考リンク)。2022年にはイギリスで洋上風力発電所を稼働開始しており、原子力発電所1基分の出力を発揮する(参考リンク)。将来における利益成長の種を仕込むフェーズにある。
就職格付け:BB
リース業界大手の一角であり、三菱商事・三菱UFJフィナンシャルグループの持分法適用会社という立ち位置。売上高ではリース業界首位のオリックスの背中こそ遠いものの、業界2位の座を占めてきた三井住友ファイナンス&リースと互角級にまで躍進。給与水準においては平均年収977万円(2023年)とリース業界上位級にある。大卒総合職であれば30歳で年収700万〜800万円ほど、課長職レベルで1,100万〜1,300万円が目安となる。福利厚生においては給与に込みという思想が強く、世間が思うほど恵まれてはいない。独身寮・家賃補助制度は廃止されており、基本的には自己負担での対応が必要と考えておきたい(同業他社よりも基本給・平均年収が高めなのはこの事情が大きい)。ただし、地方転勤となった場合には、借上げ社宅制度によって住宅コストを格安で抑えられる。メガバンク同様に3年サイクルでの全国転勤があるうえ、北は札幌・南は福岡まで支店があるため転勤エリアは広範である点はリスクとなるだろう。