企業概要
三菱商事は、金属資源・天然ガス・石油・食料・自動車・素材などを幅広く展開する三菱グループの総合商社。三菱グループの源流である三菱社から1918年に営業部が独立して創設。戦前から日本を代表する総合商社として発展、戦後はGHQに分割解体されたが1954年に復活を遂げた。1970年代から資源開発を積極的に手掛け、1980年代には食料品・自動車・コンビニ分野を開拓。現在では国内外1,700社ものグループ会社を率いており、日本を代表する巨大コングロマリットである。
・三菱Gの総合商社、グループ会社1,700社超の巨大コングロマリット
・売上高・利益は資源価格高騰で好調、財務体質も良好な水準
・平均年収2,090万円で日系企業首位級、超人気企業で入社は至難
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:79(頂点)
サラリーマン社会の頂点。日系の民間企業としては最高峰の給与水準とキャリアが用意されており、社会的名声も傑出。昨今の業績好調により、勝ち組の地位がより盤石に固まった。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:至難
総合職の採用数は年間120人~140人ほど、総合商社の中でも最高峰の人気を誇り、入社難易度は至難を極める。ハイレベル大学の出身であることは当然、人並外れた実績は必須。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・大阪大学・名古屋大学・九州大学・北海道大学・神戸大学・筑波大学・滋賀大学・一橋大学・東京工業大学・東京外国語大学・国際教養大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・立教大学・関西学院大学・東海大学など(出典:大学通信オンライン)
業績動向
✔売上高と営業利益
三菱商事の売上高は2019年から急増傾向*1が続いており、2022年には過去最高となる21.5兆円に到達している*1。が、同年以降はやや減少傾向もみられる。営業利益は2022年に0.95兆円に到達したが、2024年には0.37兆円まで後退。年度による浮き沈みがかなり激しい。
*1:2019年の売上高の急増は国際会計基準IFRS第15号の適用による影響。売上高の認識基準の違いから売上高が急増したものであり、業績自体に変化が生じたわけではない。
*2:2022年の業績好調は、①世界的な資源価格高騰が主力事業の資源・ガス・石油事業の販売価格を大きく押し上げた点、②為替レートの円安推移による為替効果、③世界的な景気回復による各事業の販売好調、などが主要因。
✔セグメント別の状況
三菱商事は、地球環境エネルギー事業(天然ガス・石油・LPGなど)、マテリアルソリューション事業(鉄鋼・機能素材・セメント・石化製品など)、金属資源事業(銅・原料炭・鉄鉱石・アルミ・ニッケルなど)、社会インフラ事業(都市開発・産業機械・工作機械・船舶・防衛機器など)、モビリティ事業(乗用車・商用車の販売・販売金融など)、食品産業事業(食料・生鮮品など)、S.L.C.事業(小売流通・医療・衣料など)、電力ソリューション事業(発送電・電力トレーディング)、その他事業、の8事業を有する。
当社は国内外1,700社ものグループ会社を通じて極めて広範な事業領域に展開する巨大コングロマリットである。他の5大商社と敢えて比較すれば、当社の強みとなっているのは資源領域であり、石炭・銅・アルミなどでは海外鉱山の権益を保有する他、トレーディング分野でも存在感を発揮(参考リンク)。そのため、資源価格の上昇・下降が当社の業績に及ぼす影響は大きい。
✔最終利益と利益率
三菱商事の純利益は2020年に0.17兆円まで急減したが、2022年には過去最高となる1.18兆円にまで躍進。同年以降は純利益0.95兆円ほどでの推移が続いている。営業利益率は長期的に1%~6%と高くはないが、事業規模の大きさによって巨額の利益を得られる構造。
✔自己資本比率と純資産
三菱商事の自己資本比率は2022年から増加傾向にあり、2024年には43.6%となっている。巨額の利益を稼いでいる割には高くないが、総合商社は自己資本比率が高まりにくいビジネスモデルである点に注意を要する*3。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2024年には純資産10.1兆円に到達。
*3:総合商社は規模・信用を活かして多額の資金を調達して事業に投資するビジネスモデル。常に新たな事業への投資を模索しているため、自己資本比率は高まりにくい業態。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
三菱商事の平均年収は長年に渡って1,400万~1,670万円ほどで推移してきたが、2023年には2,090万円まで急増している。業績によって給与水準が大幅に変動するが、大卒総合職は30歳で1,200万~1,600万円、課長職レベルで2,500万~3,000万円ほど。平均年齢は42.7歳(2023年)と大手企業の標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
三菱商事の単体従業員数は2018年に大きな減少が発生しており、2023年は4,400人ほどの組織体制となっている。ビジネス規模を考えれば極めて単体従業員数は少ない。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7.97万人ほど。平均勤続年数は直近で18.2年とかなり長めである。
総合評価
企業格付け:SSS
まさに5大商社の筆頭格として長年に渡って君臨してきた企業であると共に、三菱重工業・三菱UFJフィナンシャルグループと並んで三菱グループ御三家を形成する超名門企業。5大商社の中では比較的バランス型の事業構造ではあるが、金属資源分野においては頭一つ抜けており、同社の大きな強みとなってきた。業績においては、2020年以降の世界的な資源価格高騰を追い風に過去最高となる純利益1兆円の突破も果たし、我が世の春を謳歌。直近では資源価格の一服で減益傾向もみられるが、依然として純利益ベースでは過去最高圏での推移が続いている。財務体質は自己資本比率43.6%(2024年)だが、資金調達と事業投資を繰り返す総合商社のビジネスモデルからすれば当然。そもそも純資産10.1兆円(2024年)を擁するうえ、事業投資で多くの資産を有していることからすれば財務基盤はまったく堅実。強いて言えば、資源価格に業績を左右されやすい点がネックであり、資源価格が急落した場合には業績への悪影響が痛烈なものとなりがち。実際、1990年代には資源価格下落とバブル崩壊の二重苦によって”商社冬の時代”と呼ばれる時期も過ごしたこともある。いかなるスーパー企業であっても常に順風満帆な事業運営ができるわけでもないのである。
就職格付け:SS
昨今の日系企業においては最難関中の最難関の企業のうちの1社であり、まさしく就職活動における東大理Ⅲのような立ち位置。かつてテレビ局などが就職戦線の頂点に君臨した時代もあったが、2020年代における大手日系企業の最高峰は当社であろう。給与水準は平均年収2,090万円(2023年)と日本企業トップクラス…だが、そもそも給与水準だけを目当てに目指す企業ではない(稼ぐだけなら更に高い平均年収の会社もあれば、サラリーマン以外での稼ぎ方もある)。当社は石油・ガス開発から資源・食料トレーディングなど、日本経済を根底から支える使命を担う企業であり、ゆえに「我こそは日本経済をビジネスの観点から牽引したい」と志す逸材こそに目指してほしい。入社後には海外駐在が発生する可能性が高いことは当然、入社からしばらくして三菱商事本体で出世の道から外れた場合であっても数多のグループ会社のどこかで経営の陣頭指揮に立つ可能性が高い。相応の責任を果たす覚悟を持って入社することが必要だろう。