企業概要
ロート製薬は、胃腸薬・目薬・健康食品・スキンケア製品などを製造販売する製薬・化粧品メーカー。1899年に信天堂山田安民薬房として創業、戦後の1949年にロート製薬に社名変更。1975年に米企業からメンソレータムの製造・販売権を取得したことで、スキンケア製品での事業展開を加速。現在では売上高の約60%を皮膚薬・日焼け止め・ニキビケアなどのスキンケア分野で稼いでいる。目薬・洗顔薬などのアイケア分野にも強く、近年は高級目薬シリーズ『Vロートプレミアム』などを積極展開。
・スキンケア・目薬に強い中堅製薬メーカー、一般用医薬品に特化
・売上高・利益は成長基調、財務体質も自己資本比率60%以上で無借金経営
・平均年収817万円に増加、社員の禁煙率99.9%で入社時には禁煙必須
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:65(中堅上位)
2021年から業績が急成長しており、財務体質も大いに良好。かつては給与水準が微妙だったが、2023年に平均年収800万円を突破。一般知名度も極めて高く、総合力は高い。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間25人~40人ほど。一般知名度が高いうえに就職人気ランキングでも上位に食い込むため、選考倍率は例年100倍を超えるほどに高くなる。
採用大学:【国公立】大阪大学・名古屋大学・北海道大学・千葉大学・広島大学・富山大学・大阪公立大学・京都工芸繊維大学・奈良先端科学技術大学など、【私立】同志社大学・中央大学・立教大学・立命館大学・名城大学・順天堂大学・京都薬科大学など(出典:就職四季報)
業績動向
✔売上高と営業利益
ロート製薬の売上高は2020年まで1,500億~1,800億円レベルで推移していたが、2021年以降は成長ペースが加速*1。2023年には過去最高となる売上高2,708億円に到達。営業利益も右肩上がりで増加しており、2023年には過去最高となる400億円に到達*2。
*1:2021年からの業績好調の理由は、①主力商品『ロートV5』『肌ラボ』『メラノCC』の販売好調、②北米・欧州・中国市場における大幅増収、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:近年の当社は高単価なヒット商品の連発により利益率が向上。2020年以降には高額目薬の販売も好調で利益率を押し上げ。2022年は世界的な原材料・物流費の高騰に見舞われたが増益幅が勝った。
✔セグメント別の状況
ロート製薬は、日本事業(日本国内における目薬・スキンケア製品・サプリメント・胃腸薬の製造・販売)、アメリカ事業(米国における事業展開)、ヨーロッパ事業(欧州における事業展開)、アジア事業(アジアにおける事業展開)その他事業、の5事業を有する。
当社は売上高の約58%を日本国内で稼いでおり、残り40%を海外で稼ぐ。海外市場ではアジア圏を得意としており、アメリカ事業やヨーロッパ事業は補完的な存在に留まる。分野別の売上高ではスキンケア製品が約66%を占め、最主力製品となっている。
✔最終利益と利益率
ロート製薬の純利益は2019年から増加傾向が続いており、2023年には過去最高となる309億円に到達*3。営業利益率は緩やかな増加傾向が続いており、2021年からは14%ほどの高水準で安定している。
*3:当社は2019年頃から高額目薬・スキンケア製品の販売が拡大。高利益率商品の拡販による利益増加が続いている。
✔自己資本比率と純資産
ロート製薬の自己資本比率は長期的に60%~70%レベルの高水準で推移しており、大いに健全な水準を維持できている。有利子負債は非常に少なく、実質無借金経営を達成している*4。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2022年には2,470億円に到達。
*4:当社は当社の有利子負債は104億円(2023年)だが、手元の現預金は866億円(2023年)と大いに潤沢。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ロート製薬の平均年収は長期的な増加傾向にあり、2023年には817万円に到達。総合職の場合、30歳で年収730万~790万円、課長職レベルで1,050万~1,150万円ほど。平均年齢は直近で42.4歳と大企業の標準的な水準。
*5:2022年には年収ベースで全社員の給与を7%引き上げると宣言しており、平均年収800万円に迫る(参考リンク)。
✔従業員数と勤続年数
ロート製薬の単体従業員数は2017年から増加傾向にあり、2023年には1,687人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7,250人ほど。平均勤続年数は緩やかな増加傾向が続いているが、直近の2022年でも14.1年と普通ないしやや短めの水準に留まる。
総合評価
企業格付け:BB
医療用医薬品には意図的に進出せず、一般用医薬品に焦点を絞っている製薬メーカー。高付加価値な一般用医薬品の展開に注力しており、アイケア・スキンケア分野に強みがある。代表的な製品には『ロートV5』『肌ラボ』『メラノCC』などがある。業績においては2021年からハイペースな成長基調が続いており、営業利益・純利益いずれも右肩上がりで増加している。高付加価値製品のブランド戦略に長けており、高価格帯のスキンケア商品や高級目薬が販売好調ゆえに利益率が拡大している状況(参考リンク)。財務体質においても、自己資本比率65%以上かつ実質無借金経営と健全そのもの。将来性としても、アジア圏においてブランドを確立しているためインバウンド需要が追い風となる公算が大。そのため、COVID-19終息に伴う外国人観光客の増加が更なる業績拡大の追い風となるか期待される。
就職格付け:BB
目薬や皮膚薬で著名な一般用医薬品メーカーであり、在阪中堅製薬メーカーの1社。ドラッグストアなどの量販店において多数の当社製品が流通していることもあって一般知名度もすこぶる高い。給与水準においては2015年頃までは製薬メーカー下位であったが、最近は賃上げに積極的に。2023年には平均年収817万円に到達したが、これは2022年には全社員の給与を7%引き上げる賃上げを実施したことに起因する。総合職の場合、30歳で年収730万~790万円、課長職レベルで1,050万~1,150万円ほどに到達する。福利厚生においては企業規模なりだが、若手社員は独身寮(月額1.8万円)に入居できるため生活コストを節約しやすい。健康経営にも熱心な企業であり、50年以上に渡って社員の健康を重視した取り組みを展開(参考リンク)。長年に渡る禁煙活動によって社員の非喫煙家率を99.9%に到達させている他、入社時には卒煙宣言が必須となっている(参考リンク)。