企業概要
レゾナックホールディングスは、半導体材料・電子材料・石油化学品などを展開する大手化学メーカー。昭和電工が2019年に日立化成を買収、2023年に同社と経営統合して誕生。旧昭和電工は1926年に肥料メーカーとして創業。1931年に日本企業として初めて無機肥料量産化に成功して食糧供給改善に貢献。1950年代には石油化学・樹脂など事業多角化を推進、1980年代からは電子・半導体分野への進出を加速。現在では電子材料・樹脂・石油化学・自動車部品などを幅広く展開、半導体後工程材料で世界シェア1位。
・半導体・電子材料に強い化学メーカー、昭和電工と日立化成が合併して誕生
・売上高・利益いずれも不安定、財務体質も巨額買収で悪化
・総合職・30歳で年収650万円~で業界上位級、福利厚生は住宅補助が手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:65(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
かつては年間50人ほどしか総合職を採用していなかったが、最近は150名規模まで採用枠を拡大。数多くの大学から幅広く採用しているが、文系採用枠は30人ほどのため難易度はやや高い。
採用大学:【国公立】大阪大学・九州大学・北海道大学・神戸大学・筑波大学・金沢大学・東京外国語大学・東京農工大学・東京海洋大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・明治大学・立教大学・青山学院大学・学習院大学・関西学院大学・立命館アジア太平洋大学・東京理科大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
レゾナックホールディングスの売上高は2020年の日立化成との合併により急増、2021年には過去最高となる1.41兆円に到達した。2021年以降は売上高1.29~1.4兆円ほどで推移している。営業利益はあまり安定せず、2018年には1,800億円を記録*1した反面、2020年・2023年には営業赤字に転落*2。
*1:2018年の利益急増は、黒鉛電極の急激な価格高騰が主要因。同年の営業利益のうち黒鉛電極事業が約1,300億円を占める異常事態であった。あくまでも特殊要因による利益急増とみておきたい。
*2:2023年に営業赤字に転落した理由は、①半導体・電子材料の販売減少による減益、②HDメディアにおける棚卸資産の簿価切り下げ・廃棄損による損失、など(参考リンク)。
✔セグメント別の状況
レゾナックホールディングスは、半導体・電子材料事業(高純度ガス・エポキシ封止材・感光フィルム・SiCウエーハ・化合物半導体など)、モビリティ事業(自動車向け樹脂成型部品・リチウムイオン電池材料など)、イノベーション材料事業(機能性樹脂・コーティング材料・セラミックスなど)、ケミカル事業(石油化学品・基礎化学品・化学品など)、その他事業(蓄電デバイスシステムなど)、の4事業を有する。
当社は半導体・電子材料事業が全社利益の約71%を占めており、利益貢献が極めて大きいことが特徴。同事業では半導体後工程材料において世界シェア首位級であり、ダイアタッチフィルム・パッケージ基板用銅張積層板材料・封止材において世界的な存在感がある(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
レゾナックホールディングスの純利益は年度により好不調が別れる。2017年には純利益1,115億円を記録したが、2020年・2021年・2023年は最終赤字に転落している*3。営業利益率も乱高下しており、年度毎の市場環境に利益額を大きく左右される。
*3:当社の純利益が安定しない理由は、①当社が利益の大半を依存する半導体業界が好不況の浮き沈みが激しい点、②半導体分野以外においても黒鉛電極・研削材料・自動車部品など市況変動に左右されやすい事業が多い点、などに由来する。
✔自己資本比率と純資産
レゾナックホールディングスの自己資本比率は2020年に急落*4したが、同年以降は回復傾向。2024年は自己資本比率30.6%と大手メーカーとしては低めの水準に留まる。純資産も2021年までは右肩上がりで推移していたが、同年以降は5,660億~6,920億円ほどに後退。
*4:旧昭和電工は日立化成の買収に総額9,640億円を投入。巨額買収のために有利子負債を増やしており、買収後には1兆円以上の有利子負債を抱えるに至った。現在でも多くの負債が残っているため、自己資本比率が低迷している事情がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
レゾナックホールディングスの平均年収は2023年からは1,020万円前後に増加したが、これは同年に持株会社制に移行したことが主要因(同年以降は持株会社の従業員330名ほどの平均年収となっている)。事業会社の総合職の場合、30歳で年収650万~750万円、課長職レベルで年収950万~1,150万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
レゾナックホールディングスの単体従業員数は2023年に330人~340人まで急減したが、これは同年に持株会社制に移行したことが主要因*5。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.39万人ほど。平均勤続年数は16.4年(2024年)と大手企業の標準的な水準。
*5:日立化成の買収後にも従業員数に大きな変動がないが、これは同社の従業員は持株会社の傘下の事業会社に属しているため。
総合評価
企業格付け:CCC
■業績動向
不安定気味。主力事業がいずれも市況変動に左右されやすい弱点を抱えており、売上高・利益いずれも安定感はない。2018年には黒鉛電極の市況急騰によって大きな利益を稼いだが、2023年には半導体市場の景気悪化によって、稼ぎ頭の半導体・電子材料事業が赤字転落した。2024年には日立化成の買収後において最大となる純利益735億円まで回復したが、この利益水準を維持できるかは不透明。
■財務体質
弱め。日立化成の買収で多額の有利子負債を背負ったうえ、その後の業績も安定性を欠くために有利子負債の返済にも苦しさが見える。そもそも日立化成は昭和電工の約2倍もの時価総額・従業員数を抱えており、身の丈を超える巨額買収であった。経営陣は買収シナジーによる成長ストーリーを語るが、自己資本比率20%台まで後退した現実はなかなか重いものがある。
■ビジネス動向
2023年の業績低迷を受けて、構造改革を急ぐ。具体的には、①政策保有株式・土地資産の売却、②不採算事業の構造改革、③日立化成との統合シナジー追及、など。日立化成の巨額買収による有利子負債の利息額は年間100億円を優に上回っており、利払い負担も重い。資産のスリム化・売却によって効率化を急いでいる。
就職格付け:B
■給与水準
大手化学メーカーとして標準的な水準。総合職ならば30代で年収700万円には到達でき、課長職レベルで勤続を重ねれば年収1,000万円にも届く。業績不安定だが、多少の業績悪化ならば平均年収が大きく落ち込むこともない。2023年からは平均年収1,000万円を超えているが、これは持株会社の従業員300人強の平均年収であるため、事業会社の実態とは乖離している。
■福利厚生
良好。各事業所に30歳まで入居できる独身寮・借上げ社宅が整備されており、生活コストを節約できる。家賃補助制度では40歳まで家賃額の半額が支給されるため恩恵大。が、勤務地が国内25拠点に渡るうえ、福島県から大分県まで広く散在。遠距離転勤・僻地勤務リスクは心しておく必要がある。
■キャリア
事務系・技術系の2職種体制。事業領域が多岐に渡るため各領域のプロフェッショナルになることが期待されるが、社内公募制度により職種転換も可能。30代前半の主任昇格まで横並びだが、主任以降は実力次第。かつては年功序列色が強かったが、現経営体制下では成果主義の比率を高めつつある。
出典:株式会社レゾナック・ホールディングス(有価証券報告書)