企業概要
リコーは、複合機・スキャナ・レーザープリンタ・デジタルカメラなど事務機器・光学機器を製造する電機メーカー。1936年に市村清が理化学研究所から複写機用感光紙の権利を譲り受けて創業。終戦後はカメラを主力製品としたが、1955年には複写機リコピーを発売して事務機器へ進出。1970年代からはOA(オフィスオートメーション)を提唱、オフィス向けソリューションへと注力。現在では、複合機ではキヤノンに並んで世界シェア2位、ソフトウェア・エッジデバイスも展開。
・リコー三愛グループの中核企業、複合機の世界シェアはトップクラス
・売上高は2007年のピークから停滞気味で成長性は薄い、財務体質は良好
・平均年収860万円だが平均年齢はやや高め、20代での管理職登用も
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:66(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用数は年間60名~80名ほど。過去にブラック企業大賞を受賞したことで人気を落としたが、同受賞を機に企業文化改革に取り組んだことで現在は回復傾向。
採用大学:【国公立】大阪大学・筑波大学・千葉大学・香川大学・鹿児島大学・東京都立大学・電気通信大学など、【私立】慶応義塾大学・上智大学・明治大学・中央大学・青山学院大学・東京理科大学・芝浦工業大学・日本体育大学など(出典:大学通信ONLINE)
業績動向
✔売上高と営業利益
リコーの売上高は2兆レベルで長期的に横ばいで推移している。2020年・2021年のみ売上高1兆円台に後退したが、これは一過性の要因*1。営業利益は年度により好不調が分かれており、営業利益▲1,100億~870億円のレンジで推移している*2。
*1:2020年・2021年は世界的なCOVID-19感染拡大とリモートワークの普及により、主力のオフィス向け事務機器の販売が低迷。2022年以降にはオフィス回帰が進んだことで再び業績が回復した経緯。
*2:2017年・2021年に営業損失に転落。2017年の営業損失は米子会社・アイコンの業績低迷による減損損失、2021年の営業損失はCOVID-19影響による業績悪化。いずれも一過性の要因である。
✔セグメント別の状況
リコーは、デジタルサービス事業(複合機・プリンタ・スキャナ・ネットワーク機器の販売、消耗品・ソフトウェア・ドキュメントサービスなど)、デジタルプロダクツ事業(複合機・プリンタなどの開発・生産)、グラフィックコミュニケーションズ事業(インクジェットヘッド・産業プリンタなどの製造・販売、消耗品・関連サービスなど)、インダストリアルソリューションズ事業(サーマルペーパー・産業用光学部品・モジュール・精密機器部品の製造販売)、その他事業(デジタルカメラ・ヘルスケアなど)、の5事業を有する。
当社はデジタルサービス事業が売上高の約78%・利益の約55%を占めており、複合機・プリンタ・スキャナなどが最大の収益源となっている。デジタルソリューションへの事業転換を目指しているものの、利益の柱は依然として事務機器などである。
✔最終利益と利益率
リコーの純利益は2017年・2020年のみ赤字転落したが、同年を除けば300億~540億円レベルで概ね推移している。営業利益率は▲5%~4%ほどで長期的に推移しており、大手メーカーとしては利益率はそれほど高くはない。
✔自己資本比率と純資産
リコーの自己資本比率は2019年まで微減傾向がみられたが、2020年に自己資本比率44.5%まで急回復*3。同年以降は自己資本比率40%台での推移が続いている。純資産も2021年までは減少傾向がみられたが、2023年には1.06兆円にやや回復。
*3:2020年4月に当社が保有していたリコーリースの株式を一部をみずほリースに売却。これによりリコーリースが非連結化されたことで自己資本比率が向上した経緯がある(参考リンク)。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
リコーの平均年収は780~840万円前後で安定的に推移していたが、2023年には860万円にやや上振れ。大卒総合職なら30歳前後で年収500万~650万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,100万円が目安となる。2022年には人事制度を刷新、ジョブ型の賃金体系へと転換した他、若手人材の抜擢登用などを推進。
✔従業員数と勤続年数
リコーの単体従業員数は2020年までは8,000人規模で推移していたが、2021年以降は減少傾向。2023年の単体従業員数は7,282人規模となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は8.1万人規模と大所帯である。平均勤続年数は20.5年(2023年)に及び、従業員の定着は良い。
総合評価
企業格付け:BB
複合機・プリンタ・スキャナなどの事務機器を主力とする電機メーカーであり、複合機においては業界首位のキヤノンに匹敵する世界シェアを掌握。ほぼ全世界において販売・サポート体制を整備しており、事務機器を中核としてソフトウェア・デジタルサービス・エッジサービスなどOA(オフィスオートメーション)に焦点を当てたサービスを多角的に展開。業績においては2007年頃がピークであり、当時の売上高2.2兆円・営業利益1,815億円と比べると低空飛行が続く状況にある。というのも、最近のペーパーレス化の潮流によって事務機器の需要が頭打ちとなっており、業績拡大の向かい風は強い。現在では事務機器の領域に拘らず、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを支援すべく事業構造を変革を急ぐ状況。財務体質においては過去の蓄積もあって良好であり、自己資本比率は45.4%(2023年)と安心できる水準を維持している。
就職格付け:B
リコー三愛グループの中核企業。当社の創業者にあたる市村清は200社以上もの企業を創業しており、同氏が携わった企業群は現在でもリコー三愛グループとして緩やかな企業グループを形成している。中核企業にはリコー・三愛オブリ・キグナス石油・リコーエレメックスなどがあり、現在でも三愛会を通した活動を継続している(参考リンク)。給与水準においては平均年収780万~840万円と大手電機メーカーに近い水準を確保しており、2023年には860万円に上振れしている。ただし、平均年齢45.7歳(2023年)とやや高齢化が進んだ企業であるため、若手層の平均年収はやや割り引いて見る必要があるだろう。福利厚生においては特筆すべき内容に乏しく、家賃補助制度はない(転勤者のみ住宅手当を支給)。ただし、OA(オフィスオートメーション)を社是とするだけあって、リモートワーク・ショートワーク制度・副業解禁など先進的な試みには意欲的であり。2022年には人事制度改革で20代でも管理職へと抜擢される制度を導入するなど、新しい取り組みを試行錯誤している様子。