企業概要
ヤマハ発動機は、バイク・自動車用エンジン・船外機などを製造する輸送用機器メーカーである。戦時中に飛行機部品を製造していたヤマハが戦後に民生分野での技術転用を図り、1955年にバイクメーカーとして分離されて設立された。船外機では世界シェア首位を誇り、バイクでは世界シェア4位に位置する。かつてはヤマハの持分法適用会社であったが、2007年にヤマハが保有株の大半を売却。現在ではヤマハとヤマハ発動機が相互に約5%程度の株式を持ち合う対等関係へと移行している。
・バイク・船外機・エンジンなど幅広く製造する輸送用機器メーカー
・2021年から業績好調で売上高2兆円を突破、財務体質も良好
・平均年収812万円と中堅自動車メーカーを凌駕、静岡勤務の可能性大
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:66(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間200人前後とそこそこ多いが、うち事務系総合職は50名前後。日本全国の著名大学から採用を幅広く行っているが、地元の雄たる静岡大学から毎年20名以上の積極採用を継続。
採用大学:【国公立】静岡大学・名古屋大学・九州大学・筑波大学・名古屋工業大学・九州工業大学など、【私立】早稲田大学・立命館大学・関西学院大学など(出典:大学通信ONLINE)
業績動向
✔売上高と営業利益
ヤマハ発動機の売上高は1.5兆円規模で安定的に推移してきたが、2020年から売上高が急伸*1。2023年には過去最高となる売上高2.41兆円に到達。営業利益も売上高に連動して増加傾向にあり、2023年には過去最高となる2,506億円に到達。
*1:売上高が急増した理由は、①主力製品の二輪車がブラジル・中国・ベトナムなどで販売台数を拡大した点、②船外機・プレジャーボートの販売拡大・値上げ対応、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
ヤマハ発動機はランドモビリティ事業(バイク・バギー・自動車エンジン&部品、電動自転車など)、マリン事業(船外機・ボート・漁船など)、ロボティクス事業(半導体製造装置・産業用ロボット・無人ヘリなど)、金融サービス事業(自社製品の販売金融&リース)、その他事業(ゴルフカー・除雪機)、の5事業を有する。
当社は売上高の約65%・利益の約50%をランドモビリティ事業が占めており、二輪車・バギー・エンジンなどが事実上の主力事業となっている。マリン事業は利益率が特に高く、全社利益の約45%を占めるほどになっている。
✔最終利益と利益率
ヤマハ発動機の純利益は2021年から増加傾向にあり、直近では1,584億円ほど。営業利益率は2021年以降は10%以上で推移しており、自動車業界としてはかなり高めの水準を確保できている。
✔自己資本比率と純資産
ヤマハ発動機の自己資本比率は直近で42.0%とそこそこ高水準であり、安定的な利益体質もあわせて考えれば堅実な財務体質。純資産は過去10年以上に渡って増加基調を維持しており、直近では1.13兆円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ヤマハ発動機の平均年収は直近で812万円にまで到達しており、中堅自動車メーカーを上回るまでに至っている。大卒総合職であれば30歳で年収650万~700万円ほど、課長職レベルで1,050万~1,150万円になる。静岡県下ではトップクラスの給与水準である。
✔従業員数と勤続年数
ヤマハ発動機の単体従業員数は過去8年間に渡って横這いで推移しており、1万人規模で安定。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は5万人を超える。平均勤続年数は20年前後とかなり長めの水準にあり、従業員の定着の良さが伺える。
総合評価
企業格付け:BBB
■業界ポジション
静岡県を代表する優良メーカーの一社であり、バイクで世界シェア3位・船外機では世界的シェア1位。エンジンやダンパーなどの自動車部品を大手自動車メーカーに供給するサプライヤーでもあり、トヨタ・レクサスには当社製エンジンを搭載した車両もラインナップされている。売上高では中堅自動車メーカーにも劣るが、利益額においてはマツダ・三菱自動車工業などに匹敵する。
■業績動向
好調。2021年以降は右肩上がりで売上高・利益を伸ばしており、業績好調そのもの。新興国におけるバイク需要の拡大は勿論、為替レートの円安推移も追い風に。バイクに並ぶ稼ぎ頭であるマリン事業についても積極的値上げ措置により売上高・利益の拡大に成功している。
■財務体質
かなり良い。直近の自己資本比率は42%と自動車業界においては上位級。ただし、2016年頃から有利子負債の積極活用に方針を転換。これにより有利子負債は3,644億円(2016年)から8,438億円(2023年)まで倍増。依然として一定の余裕はあるものの財務規律の緩みが心配される。
就職格付け:BB
■給与水準
直近の平均年収は812万円と中堅自動車メーカーを凌ぐ水準を確立。静岡県下においては平均年収で第4位に位置しており、スズキ(平均年収686万円)を大きく上回る。大卒総合職であれば30歳で年収650万~700万円ほど、課長職レベルで1,050万~1,150万円になる。
■福利厚生
良い。若手社員には独身寮が用意されており、住宅コストを大きく節約可能。独身寮に屋根付きバイク駐車場や整備場が用意されているのは流石。ただし独身寮はいずれも共同風呂・共同食堂ゆえに人間関係はかなり濃密、家賃補助制度はないため退寮すると住宅コストが急増するのも辛い。主力拠点はすべて静岡県に集中しているため、地元出身者であれば都会並みの給与を地元で稼げる超優良企業であろう。
■キャリア
事務系総合職・技術系総合職の2職種制。事務系総合職は商品企画・営業・マーケティング・財務・人事・総務などに従事し、技術系総合職は研究開発・生産技術・品質保証・ITなどに従事する。かつては定期的なローテーションが多かったが、最近では職種別のキャリア構築にも重きを置いており、新卒採用でも内定時に採用職種までを確約するJOBマッチング制度を導入。