企業概要
モスフードサービスは、世界9ヵ国で「モスバーガー」「モスバーガー&カフェ」「マザーリーフ」などを展開するフランチャイズチェーン。日本にマクドナルドが進出した翌年の1972年に櫻田慧が東京都板橋区で創業。創業当時からマクドナルドとの差別化のため、高価格・高品質路線を徹底。現在では国内2位のハンバーガーチェーンとして国内1,287店舗を展開するほか、海外でも457店舗を展開。とりわけ台湾ではマクドナルドと互角級のブランド力を構築しており、大きな存在感を放っている。
・世界9ヵ国に展開する日本発祥のハンバーガーチェーン、台湾で大成功
・売上高は成長基調だが利益は浮き沈みが大きい、財務体質は優良
・平均年収635万円と外食業界トップ級、福利厚生も業界屈指の充実ぶり
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:56(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
フランチャイズ経営に特化した企業ゆえに、総合職の採用人数は年間20人~25人と少ない。外食業界ではトップクラスの待遇の割には中堅大学からも積極採用しており、かなりの狙い目。
採用大学:【国公立】埼玉大学・鳥取大学・東京都立大学・都留文科大学など、【私立】青山学院大学・立命館大学・近畿大学・東洋大学・駒澤大学・大東文化大学・国士舘大学・亜細亜大学・東京経済大学・桃山学院大学・大阪経済法科大学・大妻女子大学・鎌倉女子大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
モスフードサービスの売上高は2018年に減少*1したが、同年以降は緩やかな成長基調が継続。2024年には過去最高となる売上高961億円に到達している*2。営業利益は2022年に0.41億円に急減したが、同年を除けば増加傾向がみられる。
*1:2018年の売上高の減少は長野県のモスバーガー店舗での集団食中毒事故が主要因。高品質なブランドイメージが大きく既存したことで客離れを起こした経緯がある。
*2:当社の売上高が増加している理由は、①原材料・人件費高騰を受けた値上げ対応(参考リンク)、②単価が高いセットメニューや夜モスの強化、③高付加価値な季節メニューの強化、など。
✔セグメント別の状況
モスフードサービスは、国内モスバーガー事業(日本国内におけるモスバーガー直営店運営・フランチャイジーなど)、海外事業(台湾・シンガポール・香港・タイ・中国・オーストラリア・韓国・フィリピンなど)、その他飲食事業(マザーリーフ・山と海と太陽・ミアクッチーナなど)、その他事業(食品衛生検査・保険代理店・グループ内アウトソーシングなど)、の4事業を有する。
当社は日本国内に1,317店舗を展開するが、うち直営店は46店舗に過ぎない。そのため、当社の売上高はフランチャイズ店1,271店舗への卸売とロイヤルティ収入が主である。海外売上高比率は約18%であるが、海外417店舗のうち台湾が301店舗を占める。台湾においてはマクドナルドに次ぐファストフードチェーンとして著名であり、大きな存在感を発揮している(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
モスフードサービスの純利益は年度による浮き沈みが激しく、2018年・2022年には赤字圏に転落している。が、2024年には純利益31.5億円まで回復。営業利益率は2022年に0.05%まで低下*3していたが、2024年には5.43%まで上昇している。
*3:2022年に利益低迷した理由は、①世界的な原材料価格・エネルギー価格の高騰によるコスト上昇、②急速なコスト上昇に対する値上げ対応の遅れ、など(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
モスフードサービスの自己資本比率はやや低下傾向にあるものの、2024年においても67.1%と大いに良好な水準にある。負債に依存しない事業運営ができており、財務体質は大いに健全。純資産は2022年まで横ばいが続いていたが、2024年には543億円まで上振れしている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
モスフードサービスの平均年収は610万~650万円ほどの水準で長期的に安定している。当社は直営店舗が46店舗と極めて少なく、正社員のほとんどが総合職であるため平均年収は高くなりやすい。総合職であれば30歳で年収470万円~550万円ほど、課長職レベルであれば年収750万~900万円が目安となる。
✔従業員数と勤続年数
モスフードサービスの単体従業員数は529人(2023年)と、有名企業の割には少数精鋭の組織体制。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1,410人ほど。平均勤続年数は15.0年(2023年)と外食業界としてはトップクラスに従業員の定着が良好である。
総合評価
企業格付け:DD
■業績動向
可もなく不可もなく。売上高は増加傾向が続いているが、利益は年度による浮き沈みがあり安定感には欠ける。売上高の増加も値上げ効果によるものが大きく、本業好調とは言い難い。高品質を重んじる当社のビジネスモデルは昨今の人件費・原材料費の高騰に弱く、利益拡大が難しい状況が当面は続くだろうか。
■財務体質
外食業界では上位級の一角。自己資本比率は67.1%(2024年)と高水準を維持しており極めて優良。手元の現預金は253億円(2024年)がある一方で有利子負債は25億円(2024年)に過ぎないため、財務安定性は数字以上。直営店舗を絞り込むことで、固定資産・設備投資も少なく済ませている。
■ビジネス動向
2022年に新たな中期経営計画を策定。2024年度に売上高1,000億円・営業利益50億円を目標として掲げ、国内モスバーガー事業への積極投資を宣言した。が、急ピッチで進展する人件費・原材料費の高騰などの逆風に苦戦。2024年5月に至って目標値を「2024年度に売上高940億円・営業利益42.5億円」に下方修正。結果的には2024年通期で売上高961億円・営業利益52.2億円を達成したが、最終年度に至って目標修正するのは如何なものか。
就職格付け:C
■給与水準
平均年収635万円と外食業界においては最上位級の待遇。総合職・30歳で年収470万円~550万円ほど、課長職レベルになれば年収700万円は超える。すなわち給与水準においては日本マクドナルドをも凌駕しており、実際の給与水準は外食業界トップ5社に入るだろう。
■福利厚生
外食業界トップ級に手厚い。借上げ社宅制度では家賃の半分が支給されるほか、家賃補助制度もあり(日本マクドナルドはいずれもない)。育児のための休業・時短勤務も整備されており、通勤ラッシュを避けるためだけに30分の勤務時間短縮が可能という制度も。
■キャリア
入社後は直営店に配属されるが、数年後には本社部門へ異動して商品開発・マーケティング・フランチャイズ店舗支援・新規事業開発などに携わるのがロールモデル。店舗オペレーションだけではなく潰しが効く幅広い経験を積めるため、外食業界でありながら転職もしやすい。
■日本マクドナルドとの比較
世間一般では日本マクドナルドに圧倒されて影が薄い存在と認知されがち。が、総合職の給与水準・福利厚生では同社を上回る制度が完成されているのが実態。平均勤続年数でも当社が上回っており、世間体抜きの従業員の待遇の良さは当社が回ると推定される。