企業概要
ヒューリックは、東京都心部のオフィスビル開発・賃借を得意とする不動産会社。1957年に当時国内首位級のメガバンクであった富士銀行が不動産部門を分離した日本橋興業として設立され、2007年に現社名のヒューリックに社名変更。独自色が強い不動産会社であり、①保有物件の殆どが東京都内の一等地に集中、②主要テナントはみずほフィナンシャルグループ、③中規模オフィスビルを機動的に運用、などの戦略で成長。主要株主には旧芙蓉グループの大手企業が多数。
・旧芙蓉グループ系の不動産デベロッパー、中規模オフィスビルが得意
・営業収益・経常利益は過去8年で約3倍に増加、独自戦略が成功
・平均年収は2,035万円以上の超高待遇、ただしプロパー入社での出世は鬼門
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:77(最高峰)
日本企業における最高峰クラスのキャリアであり、誰もが勝ち組として認めるレベルの待遇・名声が得られる。入社するためには人並み外れた能力・努力は当然、運も必要である。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:至難
総合職の採用数は年間7名~12名ほどに過ぎず、高年収企業として著名であるため選考倍率は極めて高い。大卒総合職の出身大学もトップレベルの大学が大多数であり、極めて狭き門。
採用大学:【国公立】東京大学・一橋大学・京都大学・大阪大学・東北大学・東京外国語大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・国際基督教大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔営業収益と営業利益
ヒューリックの営業収益は過去8年間に渡って成長基調を維持、2024年には過去最高となる5,916億円に到達している*1。営業利益も長年に渡って右肩上がりの成長を続けており、2024年には過去最高となる1,633億円に到達している。
*1:当社は『不動産バリューアッド戦略』を掲げて積極攻勢を展開。時代ニーズに応じた改装・改築によって物件価値を向上。価値向上後の出口戦略としての長期保有・売却を巧みに組み合わせて事業規模を急拡大させることに成功(参考リンク)。
✔セグメント別の状況
ヒューリックは、不動産事業(不動産賃貸・不動産開発・アセットマネジメントなど)、保険事業(保険代理店業務など)、ホテル旅館事業(ホテル・旅館の運営)、その他事業の4事業を有する。
当社のコア事業は都心部の中規模ビルを主力とする不動産事業だが、他事業も展開している。保険事業を扱う子会社のヒューリック保険サービスが旧芙蓉グループ企業に保険サービスを提供する他、ホテル事業では”ゲートホテル”や”ふふ旅館”などを展開。2019年には日本ビューホテルを完全子会社化。
✔最終利益と利益率
ヒューリックの純利益は営業利益の成長に連動する形で右肩上がりで増加。2024年には過去最高となる純利益1,023億円に到達している。COVID-19の感染拡大を経ても尚、純利益の増加は鈍化することなく2023年には過去最高益を更新*2。
*2:当社の主力事業である中規模オフィスビルはCOVID-19感染拡大を経ても賃料にほぼ打撃を受けなかった。解約予告があった場合にも都心部の好立地ゆえ早々に次テナントが入居。2020年もCOVID-19関連の特別損失は15億円に留めた。
✔自己資本比率と純資産
ヒューリックの自己資本比率は27.3%(2024年)とやや少なめだが、これは大手不動産デベロッパーとしては標準的な水準*3。純資産も右肩上がりで増加しており、2024年には8,563億円に到達。2021年に純資産が約1,500億円ほど増加したが、これは新株発行による影響*4。
*3:不動産デベロッパーは投資額が巨額に及び、投資期間も長期に渡るためため長期借入金などの資金調達で賄うことが多く、自己資本比率は高まりにくい傾向がある。
*4:当社は2020年に開発・建替資金の調達を目的とした新株発行で約1,158億円を調達(参考リンク)。これにより純資産が急増している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ヒューリックの平均年収は緩やかな増加傾向が続いており、2024年には2,035万円に到達。財閥系の総合不動産デベロッパーにも負けずとも劣らない待遇を確立。大卒総合職であれば、30歳で920万~1,000万円ほど、課長職レベルで2,300万~2,500万円ほど。平均年齢は39歳ほどで横ばい。
✔従業員数と勤続年数
ヒューリックの単体従業員数は233名(2024年)に過ぎず、かなり小規模な組織体制である。平均勤続年数は6.8年(2024年)と短いが、これはグループ間の出向・転籍者が多い事情もある*5。
*5:当社は単体従業員数が230名に過ぎない一方で、母体のみずほフィナンシャルグループとの人材交換が多いために平均勤続年数が短くなりやすい事情がある。
総合評価
企業格付け:AA
都心部の中規模オフィスビルに注力することで急成長を果たし、不動産業界上位へ食い込んでいる新興勢力。当社のコアビジネスは築古・経年劣化したビルのポテンシャルを引き出す『バリューアッド戦略』にあり、改装・増築・用途変更・耐震補強などの手法を駆使して不動産価値を引き出す手腕に卓越している(参考リンク)。業績においては、過去8年間で営業収益を約3倍に拡大させるなど絶好調、2024年には営業収益7,347億円までの拡大を果たしている。財務体質においては自己資本比率27.3%(2024年)とまずまずだが、不動産会社であれば問題はない水準であろう。社員数200人規模であるが故に意思決定のスピード感は卓越しており、2017年4月に120億円で取得したGINZA SIXの区分所有権を僅か2か月後には米投資ファンドに200億円以上で売却する荒業を披露したこともある。
就職格付け:SS
日系企業最高峰の給与水準で知られる企業。今なお平均年収は増加傾向にあり、2024年には平均年収2,035万円に到達。財閥系の総合不動産デベロッパーに勝るとも劣らない超高待遇が実現できるのは、事業規模に対する社員数の少なさ故。2024年の従業員1人あたり売上高は25.3億円・1人あたり営業利益は7億円にも達している。不動産業界における超優良企業の三菱地所でさえ、1人あたり売上高は12.7億円・1人あたり営業利益は2.35万円であるから、まさに少数精鋭で圧巻の利益率を叩き出している。ただし、旧芙蓉グループ、特にみずほフィナンシャルグループの影響力の強さには注意。現在の代表取締役・代表取締役副社長・副社長・非業務執行取締役会議長はすべてみずほ系の出身者。プロパー入社での出世する難易度は極めて高いと考えられるだろう。