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トレンドマイクロの企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

トレンドマイクロは、サイバーセキュリティを専門とするソフトウェア会社。1988年に米・ロサンゼルスにてスティーブ・チャンが創業。IT黎明期からウイルス対策分野で有力企業へと躍進。創業直後にアメリカから台湾へと本社移転したが、1996年には日本へと本社移転。現在では個人向けウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」、法人向け統合サイバーセキュリティ「Trend Vision One」などを展開。海外売上高比率が約65%にも達するグローバル企業であり、エグゼクティブ11人のうち10人が外国人。

POINT

・米国発のサイバーセキュリティ世界大手、日本本社だが開発拠点は台湾
・売上高は増加傾向だが利益減少、無借金経営で手元資金潤沢
・平均年収885万円で営業職ならセールスコミッションあり、福利厚生は薄め

業績動向

✔売上高と営業利益

トレンドマイクロの売上高は右肩上がりで急成長しており、2022年には過去最高となる売上高2,487億円に到達*1。営業利益は2020年に436億円に達したが、同年以降は利益停滞。
*1:業績成長が続いている要因は、①世界的なデジタル投資の加速を受けたサイバーセキュリティ需要拡大による販売好調、②法人向け統合サイバーセキュリティ「Trend Vision One」の販路拡大、③スマートフォンの普及によるモバイル端末向けサイバーセキュリティ市場の誕生、がある。

✔セグメント別の状況

トレンドマイクロは、日本事業(日本国内)、アメリカズ事業(米国・カナダ・ブラジル・メキシコなど)、欧州事業(アイルランド・ドイツ・フランス・イギリスなど)、アジア事業(台湾・韓国・中国・フィリピン・オーストラリアなど)、の4事業を有する。
海外売上高比率が約64%を占めるグローバル企業であるが、日本市場は単独で売上高の約36%を占めるドル箱市場。分野別では法人向けソリューションが約76%を占めており、個人向けソリューションは約24%に過ぎない。日本では個人向けウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」が著名だが、当社のビジネス構造においては存在感は大きくはない。

✔最終利益と利益率

トレンドマイクロの純利益は2020年の384億円をピークに減少傾向にあり、2022年には107億円まで減少*2。営業利益率は20%台の高水準を維持してきたが、2021年以降は13%~14%まで低下している。
*2:2021年から利益急減している理由は、①法人向けサイバーセキュリティ市場において強力なライバル企業(米・マイクロソフト社、米・クラウドストライク社、米・サイバーリーズン社など)が出現した点、②競合対抗のために採用強化・積極投資を進めた点、が主要因。

✔自己資本比率と純資産

トレンドマイクロの自己資本比率は40%~50%前後で推移しているが、有利子負債ゼロの無借金経営を達成*3。純資産は2021年まで増加傾向にあったが、2022年は2,144億円にやや後退。
*3:当社は継続的利用を前提としたソフトウェア販売を主力とするため繰延負債が貸借対照表に多数計上されており、これが見た目の自己資本比率を低下させている事情がある。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

トレンドマイクロの平均年収は880万~940万円ほどの水準で推移。世界的IT企業の割に低めの水準だが、日本には開発エンジニアがほぼ在籍していないことが主要因*4。総合職の場合、30歳で年収600万〜700万円、課長職レベルで年収1,200万~1,500万円が目安。
*4:開発拠点は台湾に所在しているため、研究開発を担当するITエンジニアは台湾に所在。日本本社に所属するのは管理・営業・サポートエンジニアが主であるため、平均年収は上がりにくい。

✔従業員数と勤続年数

トレンドマイクロの単体従業員数は長年に渡って増加傾向が続いており、2022年には821人に到達。海外拠点や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7,600人以上。平均勤続年数は直近で8.2年となっており、人材の流動性が高いソフトウェア業界としては従業員の定着が良い方。

総合評価

企業格付け:AA

■業績動向
売上高は伸びるも減益傾向。2020年に純利益384億円を叩き出したが、同年以降の減益が激しい。2021年以降の為替レートの円安推移によって売上高は急激な増加したが、海外拠点に研究開発を担当するITエンジニアを多数確保しているために人件費・研究開発費は円安によって負担が増す特徴がある。同業他社の追い上げにより採用強化・研究開発費増も強いられており、利益はいったん踊り場を迎えるか。

■財務体質
極めて良好。無借金経営で有利子負債はゼロ、そのうえ手元の現預金は2,478億円にも達しておりキャッシュリッチ企業。直近では総資産4,926億円のうち現預金が2,478億円を占めており、驚くべきほどの"カネ余り"企業。現預金が増えすぎたが故に、2023年には「前年度の純利益の100%以上を株主還元」する方針を打ち出した。これ以上は現預金を増やす意味がないため、株主還元へすべて回してしまう驚異的な判断である。

■ビジネス動向
サイバーセキュリティ市場における世界的大手の一角であるが、最近では法人向けソリューション分野において強力な競合が多数出現。2020年には企業向けエンドポイントセキュリティで世界シェア首位から陥落しており、同業他社からの猛追が著しい。当面はセキュリティ人材の積極採用や研究開発費の積増を強いられると見られるが、同業他社との競争が激化する中で当社が競争力を維持できるかが注目される。

就職格付け:BBB

■給与水準
業界上位級。平均年収は880万~940万円ほどで安定的であり、高い利益水準を従業員へと還元している。当社は研究開発を担当するITエンジニアが台湾に所在しているため、高度なITエンジニアが平均年収の母数にいない点に注意が必要。当社より給与水準が高いソフトウェア会社は他にもあるが、当社に所属する社員のほとんどが管理・営業・サポートエンジニアであることを思えば十分すぎる給与水準だろう。

■福利厚生
薄め。家賃補助や借上げ社宅制度はない。技術資格報奨金制度があり、IT関連資格を取得すると難易度・重要性に応じて1万~10万円の報奨金が支給される。営業部門にはセールスコミッション制度があり、販売実績に応じて成果報酬が与えられる。

■キャリア
職種別採用。日本法人の場合は、営業・マーケティング・サポートエンジニアが主力職種となる。研究開発を担当するITエンジニアは台湾拠点での採用となるため、高度なサイバーセキュリティを経験したい場合には物足りない可能性がある。

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