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【勝ち組?】キヤノンの就職偏差値と平均年収・待遇【企業研究レポート】

企業概要

キヤノンは、カメラ・レンズ・プリンタ・半導体製造装置などを主力とする光学・精密機械メーカー。1933年に吉田五郎などが設立した精機光学研究所を源流とし、1934年に日本初の国産小型カメラを完成させた名門企業。特にカメラ分野で高いブランド力を誇るが、事業の多角化にも積極的でプリンタ・複合機・医療機器・半導体製造装置でも高い技術力がある。特に複合機分野では新技術による複写機を完成させ、米ゼロックスの市場独占を解体へ追い込んだ実績を持つ。

POINT

・カメラ・複合機で世界的大手、他にも競争力が高い事業を多数有する優良企業
・売上高は横這い推移、ただし利益体質と財務体質は強靭
・平均年収800万円程度、ただし福利厚生は希薄である点に注意

就職偏差値

69(中堅上位)

かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

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業績動向

✔売上高と経常利益

キヤノンの売上高は4兆円前後の水準での横ばい推移となっており、成長性は希薄*1。営業利益は年度ごとに好不調が分かれるが、営業損失を計上することは滅多にない点が強み。2020年の4~6月期を除けば00年代以降は営業黒字を維持し続けている頑強な利益基盤を持つ。
*1:売上高の成長が希薄となっているのは、他事業の成長をカメラ事業の地盤沈下が相殺している形。スマートフォンの爆発的な普及でコンパクトデジタルカメラ市場が急激に衰退した他、安泰と思われた一眼レフカメラもミラーレス一眼レフの急成長に追随できずシェアを落としている。

✔セグメント別の状況

キヤノンはコンスーマ事業(個人向けデジタルカメラ・プリンタなど)、エンタープライズ事業(キヤノンITソリューションズなど)、エリア事業(海外向けの入出力機器販売・サポートなど)、プロフェッショナル事業(印刷業向け高速プリンタ、ヘルスケア、半導体製造装置など)その他事業の5事業を有する。
かつてカメラで市場を席巻したが、現在ではカメラ市場の衰退によって精機事業が主力事業となっている。精機事業が利益の約94%を占めており、カメラ事業の苦戦が伺える。

✔最終利益と利益率

キヤノンの純利益は好調時は3,000億レベル、不調時は1,000億レベルで推移している。なお、2020年のみCOVID-19の感染拡大による急激な販売低迷が災いして833億円に留まった。
*2:COVID-19の感染拡大は、①外出規制の巣ごもりによるカメラ需要の急減、②リモートワークによるオフィス機器の販売低迷、などを複数事業に痛烈な打撃を及ぼした。

✔自己資本比率と純資産

キヤノンの自己資本比率は直近で61.9%と高めの水準。過去20年以上に渡って純利益を安定確保してきた過去の蓄積が幸いして財務健全性は優良。純資産は2020年頃から増加傾向が続いており、直近では3.61兆円ほど。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

キヤノンの平均年収は直近で832万円と大手メーカーなりの水準だが、年功序列色が強い給与制度。大卒総合職の場合は、30歳で650万円~700万円ほど、課長職レベルで年収1,050万~1,200万円ほど。平均年齢は40歳を上回っており、社員の年齢構成はかなり高め。

✔従業員数と勤続年数

キヤノンの単体従業員数は微減傾向が長期的に続いており、直近では2.39万人規模。子会社・関連会社を含めた連結従業員は18万人レベルであり、かなりの大所帯。平均勤続年数は20年前後とかなり長め。

総合評価

企業格付け:A

■業界ポジション
ニコンと並んで日本のカメラ産業を長年に渡って支えてきた著名企業としてブランドイメージは上々。カメラ市場はスマートフォンの普及で市場縮小が著しいが、事業多角化が進んだ企業であった為に売上高が衰退する事態には陥っていない(同業のニコンの著しい売上高の縮小とは対照的)。プリンタ・複合機・半導体製造装置など、高い競争力を有する優良事業を多数擁している点は強み。

■業績動向
横ばい。主力事業のカメラ・複合機がいずれも斜陽産業であり成長性はあまりない。COVID-19で業績低落した2020年から比べれば業績回復しているが、所詮は2018年頃の水準まで回復したに過ぎない。医療分野・半導体分野でも健闘するが、業績成長を大きく牽引するほどの存在感はまだない。

■財務体質
極めて良好。自己資本比率は直近で60%以上にも達しており、大手電機メーカーでは最上位級。過去20年以上に渡って純利益を安定確保してきた過去の蓄積はやはり大きい。かつては無借金経営で知られたが、最近は大型M&Aで負債も活用する方針に転換。しかしそれでも財務基盤は今なお揺るぎない。

就職格付け:BB

■給与水準
直近の平均年収は832万円と電機メーカー上位級。大卒総合職の場合は、30歳で650万円~700万円ほど、課長職レベルで年収1,050万~1,200万円ほど。30代でG2昇格試験に合格できずに停滞すると、給与上昇は頭打ちになりやすい。また、福利厚生がかなり希薄であるため(後述)、他企業と平均年収だけで比較するのはリスクがある点に注意。

■福利厚生
希薄。大手電機メーカーには珍しく、家賃補助制度・独身寮などかないため、住宅コストは全額の自己負担が基本。家族手当・扶養手当・食事補助などもない。採用FAQには「処遇の基軸を仕事基準としているため、個々人の状況によって処遇に差が出る寮・社宅の提供はありません」との一文がある。家族構成や居住地による待遇変更をしない平等主義にも見えるが、独身貴族と子沢山・都内出身と地方出身…など個々人の差に応じたサポートは期待できない。

■キャリア
事務系総合職・技術系総合職の2職種制。技術系総合職は研究開発・生産技術・IT・品質保証・フィールドエンジニアなどに配属され、事務系総合職は事業企画・マーケティング・経理・法務・生産管理・調達・人事などに配属される。入社時の職種で専門性を高める道もあるが、適性によっては職種間を跨ぐローテーションで多種多様な経験を積むことも。特許法務部の存在感が強い珍しい企業でもある。

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出典:キヤノン株式会社(有価証券報告書)