企業概要
UBEは、化学品・樹脂・産業機械を主力とする化学メーカー。1897年に山口県宇部の住民らと渡辺祐策が出資して石炭採掘会社として設立。石炭枯渇に備え、戦前から炭鉱機械・セメント・化学など事業多角化を推進。1960年代には石炭需要の低下を受けて石炭事業から撤退、その後はセメント・機械・化学メーカーとして発展。2022年にセメント事業を三菱マテリアルと統合、化学メーカーへの転換を志向。現在ではポリカーボネートジオールやポリイミドフィルムにおいて世界シェア首位を誇る。
・セメント・機械・化学で発展した企業だが、現在は化学メーカーへ事業転換中
・売上高・利益は2018年をピークに減少、2022年にセメント事業を事業分割
・平均年収756万円かつ住宅手当が充実、山口県において卓越した名声
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:65(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用数は年間30名~60名ほど。理系重視の採用方針であり、事務系採用は毎年10名前後のみ。創業の経緯から山口県における名門企業として知られ、同県の出身者から高い人気がある。
採用大学:【国公立】大阪大学・九州大学・東北大学・広島大学・岡山大学・山口大学・名古屋工業大学・九州工業大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・国際基督教大学・関西学院大学・関西大学・東京理科大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
UBEの売上高は2018年に過去最高となる7,301億円に到達したが、同年からは減少傾向。2023年には売上高4,682億円となっている*1。営業利益は2018年に過去最高となる502億円に到達したが、同年からは減益傾向。
*1:2018年から売上高が減少した理由は、①2022年にセメント事業を事業分割して持分法適用会社化したことによる大幅減収(参考リンク)、②中国経済の減速による樹脂・化成品事業の販売減少、など。
*2:2021年から営業利益が減少傾向となっている理由は、①原燃料価格上昇によるコスト増加、②樹脂・化成品事業の販売数量減による効率低下、③アンモニア工場の定期修理による支出増、など。
✔セグメント別の状況
UBEは、機能品事業(ポリイミド・分離膜・セラミックス・セパレータなど)、樹脂・化成品事業(コンポジット・ナイロンポリマー・硫安・工業薬品・ファインケミカル・合成ゴムなど)、機械事業(ダイカストマシン・押出プレス・射出成型機・化学機械・破砕機・除塵機・橋梁など)その他事業(医薬品・電力供給・不動産賃貸など)、の4事業を有する。
かつての当社は化学とセメントが中核事業であったが、2022年のセメント事業の事業分割により、現在は化学を中核とする事業展開へとシフト。売上高においては樹脂・化成品事業が約51%を占めるが、全社利益に同事業が占める割合は約9%と少ない。他方で、機能事業が全社利益の約46%を占めており、同事業の高利益率が際立つ。
✔最終利益と利益率
UBEの純利益は2022年のみ純損失70億円と赤字転落*3しているが、同年を除けば230億~320億円レベルで安定的に推移している。営業利益率は3%~7%レベルで安定的に推移しており、景気後退局面においてもマイナス圏には転落していない。
*3:2022年に赤字転落した理由は、同年に事業分割して持分法適用会社としたセメント事業(UBE三菱セメント)において石炭価格の高騰による大幅赤字が発生したことが主要因(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
UBEの自己資本比率は長期的な増加傾向が続いており、2023年には自己資本比率51.8%に到達している。純資産も緩やかな増加傾向が続いており、2023年には4,293億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
UBEの平均年収は緩やかな増加傾向にあり、2023年には756万円となっている。総合職の場合、30歳で年収600万~650万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,050万円が目安となる。地盤である山口県においてはトップクラスの待遇である。
✔従業員数と勤続年数
UBEの単体従業員数は2020年まで3,300人~3,600人ほどで推移していたが、セメント事業の事業分割によって急減。2021年以降は2,000人~2,200人ほどで推移している。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7,880人ほど。平均勤続年数は直近で16.0年と、大手企業の標準的な水準。
総合評価
企業格付け:B
かつて石炭事業で発展した企業であるが、1960年代からの石炭需要の急落をうけてセメント・機械・化学メーカーへと転換。2022年にはセメント事業を事業分割して三菱マテリアルのセメント事業と合併させ、化学メーカーとして自社を再定義した。業績においては2017年・2018年をピークに売上高・利益いずれも後退傾向。売上高はセメント事業を分社化したことで7,301億円(2018年)から4,682億円(2023年)まで相当の縮小となっている。一見すると事業衰退の危機にも見えるが、これは中期経営計画における「スペシャリティ化学を中核とする化学グループ」への転換の過渡期であるがゆえ(参考リンク)。高利益かつ持続性あるビジネスモデルへの転換に向けて、旧態依然としたセメント・機械事業の分離を図りつつ、同時に機能品事業や樹脂・化成品事業へのテコ入れを急いでいる。実際、2023年には全社利益の約46%を機能品事業が稼いでおり、同事業に限った営業利益率は18%を上回るまでに至っている。とりわけ当社が期待を寄せるのが、ポリイミド・CO2分離膜・セラミックスなどの高利益率かつ高成長が見込める製品群であり、研究開発の投資を急ぐ。こうした事業転換の過渡期を乗り越えられるかが案じられる状況であるが、財務体質においても自己資本比率51.8%(2023年)と高水準であるため当面の心配はないだろう。
就職格付け:BB
1897年に山口県宇部市周辺の住民らが炭鉱開発のために共同出資して立ち上げた企業。今なお宇部市周辺においては絶大な影響力を誇る「地元の雄」であり、同市に所在する当社専用の私道である宇部興産専用道路(全長31.94km)は壮大なスケールから著名である(参考リンク)。給与水準においては平均年収756万円(2023年)と大手化学メーカーなりの水準。さすがに財閥系大手化学メーカーには及ばないが、総合職であれば30歳で年収600万~650万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,050万円には達する。福利厚生はかなり恵まれており、独身であれば月額5,000円で独身寮に入居できる(駐車場代や食費も格安)。既婚者であれば社宅に入居でき、こちらも自己負担は月額1万円~1.5万円で住む。これらの住宅補助を加味すれば、見た目の平均年収+50万~100万円ほどの待遇である。主力拠点は東京・山口・千葉・大阪・福岡に立地しているが、やはり最大規模の拠点集積がある山口県周辺への配属可能性が高い。生活コストが安価な山口県であれば当社の待遇で十二分にリッチな生活がおくれるうえ、同県において当社は「地元の名士企業」としてトクヤマと並ぶ抜群の社会的名声があるため満足度も高いだろう。総じて、化学メーカーとしては上位級の企業であることは疑いの余地はない。