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化学

【勝ち組?】DICの就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

DICは、インキ・有機顔料・液晶材料・樹脂製品・ヘルスケア食品などを幅広く展開する化学メーカー。1908年に川村喜十郎が印刷用インキの製造を目的に創業、戦前から総合インキメーカーとして君臨した。現在では総合化学メーカーとして事業領域を拡大しており、印刷インキ・有機顔料・PPSコンパウンドでは世界シェア首位級。戦前から海外展開に熱心であり海外売上高比率は67%にも達する、世界63ヵ国にグループ会社190社を擁する世界屈指の総合インキメーカーとなっている。

POINT

・印刷インキで世界トップの化学メーカー、脱インキ・事業多角化を推進
・売上高は増加するも利益は伸び悩む、財務体質は普通レベル
・平均年収759万円だが福利厚生は良好、残業が少ない社風

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:65(中堅上位)

大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:やや難関

総合職の採用数は年間60人~100人前後と採用数はそれなりに多い。大手化学メーカーと比べると知名度が低いこともあって、やや難易度が下がるため穴場感はある。
採用大学:【国公立】北海道大学・筑波大学・横浜国立大学・名古屋工業大学・広島大学・金沢大学・信州大学など、【私立】慶應義塾大学・上智大学・東京理科大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026

業績動向

✔売上高と営業利益

DICの売上高は長年に渡って7,000億~8,000億円レベルで安定していたが、2022年から売上高が増加。2024年には売上高1.07兆円を突破している*1。営業利益はやや伸び悩んでおり、2017年の565億円をピークに横ばいが続いている*2。
*1:2022年に売上高が急増した理由は、①世界的な原材料価格の高騰を受けた値上げ対応、②為替レートの円安推移による為替効果、など。当社は海外売上高比率が70%以上にも及ぶため為替レートに業績を左右されやすい。
*2:為替効果と値上げ対応によって売上高が増加しているに過ぎず、そもそもの販売数量や利益率が高まっているわけではない。それゆえ、営業利益は伸びずに売上高だけが伸びている。

✔セグメント別の状況

DICは、パッケージング&グラフィック事業(グラビアインキ・オフセットインキ・新聞インキなど)、カラー&ディスプレイ事業(有機顔料・液晶材料・ヘルスケア食品など)、プロフェッショナルプロダクツ事業(アクリル樹脂・ウレタン樹脂・エポキシ樹脂・工業用テープなど)、その他事業、の4事業を有する。
当社の主力事業のうち利益率が特に高いのはプロフェッショナルプロダクツ事業。売上高に占める割合は約26%に過ぎないが、全社利益では約40%を占めている。同事業にはカラーフィルタ向け顔料・低誘電樹脂・半導体向けエポキシ樹脂などが含まれる。カラー&ディスプレイ事業は2024年は赤字となっている。

✔最終利益と利益率

DICの純利益は2018年まで320億~380億円前後で推移していたが、2020年からは純利益が低下傾向。2023年には純損失▲398億円に転落している*2。営業利益率は長期的な低下傾向がみられ、2023年には1.73%まで低下。
*1:2023年に純損失に転落した理由は、2021年に買収した独・BASF社の顔料事業(参考リンク)において特別損失405億円を計上したことが主要因。欧州市場の景気減速・米国市場の物価上昇による逆風が仇となった経緯がある(参考リンク

✔自己資本比率と純資産

DICの自己資本比率は2020年までは37%前後で推移していたが、同年以降は有利子負債の増加により低下*4。2024年には自己資本比率32.7%(2024年)となっている。純資産は緩やかな増加傾向にあり、2024年には4,206億円となっている。
*4:当社は2021年に独・BASF社の顔料事業を買収したが、この買収費用として有利子負債を約1,100億円を調達したことで自己資本比率が低下した。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

DICの平均年収は長年に渡って740万~780万円で安定的に推移している。大手化学メーカーには敵わないが、中堅化学メーカー上位級。大卒総合職であれば、30歳で年収620万~690万円ほど、課長職レベルで年収900万~1,000万円が目安となる。

✔従業員数と勤続年数

DICの単体従業員数は緩やかな増加傾向にあり、2024には3,947人ほどの組織規模となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.11万人ほど。平均勤続年数は18.0年(2024年)と大手企業の標準的な水準をやや上回る。

総合評価

企業格付け:B

世界トップクラスの総合インキメーカーであり、印刷用インキでの世界シェアは首位。最近はでは印刷用インキの需要縮小を見越して事業多角化に熱心であり、顔料・合成樹脂・先端材料などを展開。既に売上高の半分を印刷用インキ以外で稼ぐまでに到達している。が、業績は必ずしも好調とは言えない状況。売上高こそ1兆円の大台を15年ぶりに突破したが、これは値上対応と為替効果が主要因。本質的な利益率向上には繋がっていないため、利益においては2017年をピークに停滞が続く。2021年には独・BASF社の顔料事業を買収したが、2023年には巨額の特別損失を計上するに至り、純損失▲398億円に転落したのも痛手。財務体質も健全性こそ問題はないが、巨額買収に伴う費用を有利子負債で調達したことで自己資本比率がやや減少。総じて、大きな問題はないが好調でもない業績・財務と言わざるを得ない。

就職格付け:BB

塗料業界における巨人企業であり、ライバル企業には日本ペイントや東洋インキなどがある。いわゆる川中化学メーカーの1社であり、原材料を加工して素材や化製品を生み出すことを主力事業とする。給与水準はそこそこ恵まれており、平均年収は740万円~780万円で安定的。大卒総合職であれば、30歳で年収620万~690万円ほど、課長職レベルで年収900万~1,000万円が目安となるだろう。原材料を製造している川上の大手総合化学メーカーには敵わないが、製造業としては中堅上位級である。福利厚生においては、住宅補助が充実しており、家賃補助(最大4万円/月)と借上げ社宅(家賃1.3万円/月)を選ぶことができる。月平均残業時間は9.8時間/月とやたら少なく、無駄な長時間残業はしない社風。育児休暇取得率・復帰率も極めて高いため、家庭と仕事の両立に対しての理解が深い。海外売上高比率が70%以上にも及ぶため、海外出張や海外赴任のチャンスもかなり多い。ホワイト企業で無理なく長く働きつつ、グローバルな環境で活躍したい求職者ならば候補に入れたいところ。

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出典:DIC株式会社(有価証券報告書)