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日本政策金融公庫の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

日本政策金融公庫は、長期資金供給を主力事業とする政府系金融機関。2008年に国民生活金融公庫・農林漁業金融公庫・中小企業金融公庫が合併して誕生。民間銀行からの融資を受けにくい中小企業・ベンチャー企業への資金供給を担っており、融資先の約90%が従業員9人以下の中小企業。自然災害や金融危機におけるセーフティネット機能も責務としており、財務基盤の弱い中小企業への迅速な資金供給を担う。

POINT

1.政府系金融機関の一角、中小企業・個人事業主向けの融資が主力
2.業績はCOVID-19対応で急悪化、財務体質は大いに健全な水準
3.平均年収846万円と民間銀行と同等、ノルマ営業なく福利厚生も充実

業績動向

✔経常収益と経常利益

日本政策金融公庫の経常収益は過去8年間に渡って緩やかな減少傾向が続いている。経常利益は2019年から赤字転落しており、2020年には経常損失が1兆円を上回る大規模な経常損失を計上*1。
*1:2020年は政府方針をうけてCOVID-19感染拡大に苦しむ中小企業に多額の資金供給を担ったことで大幅損失へ転落。業績悪化企業への無利子・無担保融資が増えたことで保険契約準備金・一般貸倒引当金が急増したことが赤字要因。

✔セグメント別の状況

日本政策金融公庫は、国民一般向け業務(資金貸付など)、農林水産業者向け業務(農林漁業者への長期資金供給など)、中小企業向け融資業務(貸付・社債取得・売掛金債権証券化など)、中小企業向け証券化支援買取業務(中小企業向けCDS契約など)、信用保険業務(債務保証の保険引き受け・信用保証協会への貸付など)、危機対応円滑化業務(危機発生時の指定金融機関への信用供与)、特定事業等促進円滑化業務(認定事業者への貸付をおこなう指定金融機関への貸付)、の7事業を有する。
日本政策金融公庫は設立目的をまっとうする為に幅広い業務を遂行しているが、経常収益においては信用保険業務が占める割合が最も高い。直近では全事業が赤字転落しているため、経常利益については評価不能である。

✔最終利益と利益率

日本政策金融公庫の純利益は2019年から赤字で推移しており、2020年には純損失1兆円以上を記録。直近の2022年においても純損失2,687億円で推移している。自己資本利益率も、赤字が続いている為にマイナス圏で推移し続けている。

✔自己資本比率と純資産

日本政策金融公庫の自己資本比率は2020年を境に増加傾向にあり、直近では41.6%に到達。日本国政府による新株取得がされたことで、銀行業界においては極めて高めの水準に到達している*2。純資産は長期的に増加傾向が続いており、直近の2022年は3.96兆円ほどの水準。
*2:COVID-19対応の結果を踏まえ、2021年6月に日本国政府向けの新株発行により自己資本を大幅増強。国策金融機関であるが故に、大幅損失を計上した場合にも日本国政府の支援があることが強み。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

日本政策金融公庫の平均年収は840万円前後の水準で安定的。地方銀行や信用金庫は優に上回る給与水準であり、大幅赤字に転落しても給与水準は変わらない。総合職であれば30歳で650万円~750万円ほど、課長職レベルで年収900万~1,050万円レベル。平均年齢は42歳前後であり、大企業同様の年齢構成。

✔従業員数と勤続年数

日本政策金融公庫の単体従業員数は7,200人ほどの水準で極めて安定的。政府予算によって定員が決まるため、良くも悪くも一定の推移が続きやすい。平均勤続年数は直近で18.9年にも及び、金融業界ではトップクラスの長さを誇る。

総合評価

企業格付け:A

日本政策金融公庫法に基づき設立された政府系金融機関であり、民間銀行からの資金調達が難しい個人事業主や中小企業への資金供給を担う。業績度外視で機動的な資金供給ができる唯一無二の存在でもあり、金融危機などの危機的局面において幾多の中小企業を救ってきた。直近ではCOVID-19感染拡大の局面において、無利子・無担保の緊急融資を実行することで民間銀行に見限られた幾多の飲食店・ホテルなどを救った。こうした事業内容ゆえに2020年にはCOVID-19対応で純損失1兆円を超える赤字を計上したものの、翌年には日本国政府に新株発行して悠々と財務体質を回復させている。国策金融機関ゆえに倒産リスクとは無縁であり、少なくとも日本国政府が倒れない限りは存続可能であることも強み。総じて、民間銀行では果たし得ない金融機能を担うことで日本国の経済安定に大いに貢献している重要な金融機関である。

就職格付け:A

平均年収は850万円前後で極めて安定しており、上位地銀•信用金庫を優に上回る水準。そのうえ業績と給与はまったくリンクしないため、どれだけ赤字をだしても平均年収には影響がない(業績が給与に反映されると危機的局面での資金供給という使命を果たせなくなるため)。そのうえ、民間銀行にありがちなクレジットカードや投資信託のドサ回り営業の必要がなく、ノルマに精神を擦り減らす必要もない点は大きな魅力である。その甲斐もあって平均勤続年数は18年を上回っており、従業員の定着は銀行業としてトップクラス。唯一のデメリットは数年おきの全国転勤であり、北は北海道・北見市から南は鹿児島県・薩摩川内市まで全国152支店での転勤に覚悟は必要。ただ、独身・既婚者いずれも家賃補助・社宅でカバーされるため、民間大手企業でも家賃補助が手薄で全国転勤ありの企業がザラにあることを思えば幸せな方だろう。入行を希望するならば日本政策金融公庫法をしっかり読み解き、社会的使命と制度設計への理解を深めておきたい。

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