企業概要
鹿島建設はトンネル・ダム・橋梁・高層ビル・商業施設などの大規模土木・建設工事を主力とする大手総合建設会社。1840年に鹿島岩吉が創業した大工店を源流とし、明治維新を経た1880年には鹿島組として企業化。戦前から高難易度の複雑工事をこなし、1934年には全長7.8kmに及ぶ丹那トンネルを開通。近年では都心部の再開発プロジェクトに多数参画、東京駅再開発や東京ミッドタウン日比谷などの実績を有する。現在では建設業界における大手スーパーゼネコン5社においてトップの売上高を誇る。
・大手スーパーゼネコン5社のうち売上高・利益トップの業界最大手
・売上高は成長基調で利益は横這いを維持、財務体質も良好
・平均年収1,177万円と業界トップの給与水準、福利厚生もかなり手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:72(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間240人~300人とかなり多め。理系採用では必ずしも特定大学に偏らない幅広い採用活動を展開するが、文系採用枠は少ないため競争は激しい。
採用大学:【国公立】東京大学・一橋大学・大阪大学・東北大学・名古屋大学・広島大学・和歌山大学・熊本大学・岡山大学・岐阜大学・鳥取大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・国際基督教大学・明治大学・立教大学・関西大学・立命館大学・東洋大学・東京都市大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
鹿島建設の売上高は2021年から増加傾向が続いており、2024年には過去最高となる売上高2.39兆円に到達している*1。営業利益は2017年に1,583億円を記録した後は停滞気味だが、他の大手スーパーゼネコンが利益縮小に直面している昨今においては大いに健闘していると評価できよう*2。
*1:当社の売上高の成長が続いている理由は、①国内における旺盛な建設需要を追い風とした大型案件の受注獲得、②海外における大型受注の増加、③不動産開発などの非建設領域の成長、など。。
*2:同業他社の利益低迷が続いた中で当社が業績好調を維持できた理由は、①低採算工事を受注しない方針の堅持、②不動産開発など非建設分野での利益拡大、など。
✔セグメント別の状況
鹿島建設は、土木事業(トンネル・橋梁・道路・沿岸構造物などの土木工作物の建設工事全般)、建築事業(ビル・商業施設・物流施設工場・ホテルなどの建設工事全般)、開発事業(不動産開発全般に関する事業、意匠・構造設計、エンジニアリングなど)、国内その他事業(建設資材販売・専門工事・総合リース・ビル賃貸など)、海外その他事業(海外における建設事業・開発事業など)の5事業を有する。
当社は建築・土木工事を世界各地で遂行するスーパーゼネコンであり、建築事業で売上高の約44%・利益の約37%を稼いでいる。北米・欧州・アジアにおいても事業展開を進めており、海外売上高比率は30%以上に達している。なお、海外売上高比率が20%を上回る大手スーパーゼネコンは当社と大林組のみである。
✔最終利益と利益率
鹿島建設の純利益は過去8年間に渡って980億~1,260億円レベルで極めて安定しており、昨今の労務費・原材料価格の高騰による減益を回避できている。営業利益率においても5%~8%ほどの水準を安定的に確保しており、景気後退局面においても底堅い。
✔自己資本比率と純資産
鹿島建設の自己資本比率は2020年まで上昇傾向が続ていたが、同年以降は横這い傾向へと転換している。2024年の自己資本比率は36.4%となっており、まずまずの水準となっている。純資産は2021年まで右肩上がりの推移が続き、純資産1.27兆円(2024年)に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
鹿島建設の平均年収は2016年を除けば1,100万円前後で安定的に推移しており、スーパーゼネコン5社においてトップの給与水準を誇る。大卒総合職なら30歳で年収750万~850万円ほど、課長職レベルで年収1,250万~1,450万円ほど。長時間勤務・単身赴任が多い業界であるため、手当による年収底上げが大きい。
✔従業員数と勤続年数
鹿島建設の単体従業員数は長年に渡って微増傾向が続いており、2023年は8,200人規模の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.98万人ほど。平均勤続年数は17.9年(2024年)とかなり長めであり、建築事業のイメージに反して従業員の定着は良い。
総合評価
企業格付け:AA
超高層ビル・公共工事などの大規模プロジェクトの設計から施工までを遂行する能力を有する業界大手。最近ではスーパーゼネコン5社においてトップとなる業績好調ぶりを維持しており、建設業界のリーディングカンパニーである。最近では東京駅八重洲口開発プロジェクト・品川シーサイドフォレストなど大規模開発プロジェクトにも主導的地位で参画しており、まさしく建築・土木を通して国土を作り上げてきた企業である。業績においては売上高は成長基調かつ利益水準は安定的であり、大手スーパーゼネコンが業績を落としていた2020年~2023年においても好調を維持できている。東京オリンピック特需後に無理な安値受注をせず、自社の強みを発揮できる領域に特化していたことが幸いしている。財務体質においては自己資本比率36.4%(2024年)と問題ない水準を確保しており、利益体質の安定性を加味すれば大いに健全な水準。純資産は直近8年間でほぼ倍増しており、財務健全性は過去10年間で大いに高まっている。
就職格付け:AA
1840年に鹿島岩吉が創業した同族企業であり、現在においても創業家である鹿島家が発行済み株式数の約2.99%を保有。創業家の分家には渥美家・石川家・平泉家がある。とはいえ、1990年に鹿島昭一(8代目社長)が現役を退いてからは創業家以外のサラリーマン社長が続いており、非創業家であっても実力がある人間を社長へと抜擢する懐の広さも持ち合わせる。給与水準においては平均年収1,177万円(2023年)と、大手スーパーゼネコン5社において最高峰となる水準。大卒総合職なら30歳で年収750万~850万円ほど、課長職レベルで年収1,250万~1,450万円ほどが目安となるだろう。福利厚生においても恵まれており、独身寮は3万円/月レベルで住むことができるうえ、建設業界トップ企業の矜持なのか建屋設備も美麗である。既婚者向けの住宅手当も手厚く、家賃の最大70%までが会社負担となるため自己負担が少なく済む。単身赴任が多い業界であるため、月3回分の帰宅補助も支給される。建設業界特有の長時間労働・単身赴任は覚悟して入社する必要があるが、国家的ビッグプロジェクトに参画できる誇りと確固たる給与水準はやはり魅力的である。