企業概要
象印マホービンは、魔法瓶・調理家電・生活家電を主力とする家電・日用品メーカー。1918年に市川銀三郎・金三郎が魔法瓶メーカーとして創業。1920年代には『象印』ブランドで中国・東南アジア向けに魔法瓶の輸出を開始した。1970年代には電子ジャーを発明して爆発的なヒットを記録、魔法瓶・家電の2事業体制を確立。1990年代には中国・台湾・タイに現地法人を設立して海外展開を加速させた。現在では炊飯器・オーブンレンジなどの家電製品を主力としつつ、祖業である魔法瓶・水筒においても高いブランド力を誇る。
・大阪地盤の調理家電・生活家電メーカー、炊飯器では国内シェア1位
・売上高・利益は安定的だが2016年からピークアウト、財務体質は大いに健全
・平均年収779万円と業界上位クラス、福利厚生も恵まれる優良企業
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:65(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間20人~25人ほど。一般知名度が高い家電メーカーだが、小規模ゆえに意外と選考倍率は高まりにくい。関西圏の出身者からの人気が高め。
採用大学:【国公立】神戸大学・広島大学・岐阜大学・三重大学・山口大学・和歌山大学・大阪公立大学・滋賀県立大学・豊橋技術科学大学など、【私立】早稲田大学・上智大学・法政大学・関西学院大学・関西大学・成城大学・近畿大学・東洋大学・専修大学・武蔵野美術大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
象印マホービンの売上高は2020年まで減少傾向がみられた*1が、同年以降は増加傾向。2023年には売上高872億円に到達している*2。営業利益は45億〜78億円ほどで推移しているが、過去最高を記録した2016年の121億円には及ばない。
*1:2020年まで売上高が減少していた理由は、①中国からの訪日観光客による爆買い特需の消滅、②中国における景気後退による高価格帯製品の販売減速、③日本国内における家電市場の拡大停滞、など。
*2:2023年に売上高が増加した理由は、①圧力IH炊飯ジャー『炎舞炊き』シリーズの販売好調、②世界的な原材料価格の高騰による値上げ対応による増収効果、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
象印マホービンは、調理家電事業(炊飯器・電気ポット・オーブントースター・オーブンレンジ・ホームベーカリーなど)、リビング事業(ガラスマホービン・ステンレスマホービンなど)、生活家電事業(加湿器・空気清浄機・食器乾燥機・その他生活家電など)、その他事業(象印食堂・象印銀白弁当・象印銀白おにぎり・産業機器製品など)、の4事業を有する。
当社は魔法瓶メーカーとして発展した企業であるが、現在では調理家電・生活家電が売上高の約76%を占めるまでに成長している。地域別に売上高を分解すると、日本国内が約64%を占めているが、アジア地域における売上高も約21%を占めている。
✔最終利益と利益率
象印マホービンの純利益は35億~65億円ほどで安定的に推移している。営業利益率は長期的に5%~9%ほどで推移しており、家電メーカーとしてはやや高めの水準にある。景気後退局面にも安定的に利益を確保できているのは強み。
✔自己資本比率と純資産
象印マホービンの自己資本比率は長期的に70%以上の高水準で安定的に推移しており、負債に依存しすぎない事業運営ができている。純資産は緩やかな増加傾向にあり、2024年には873億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
象印マホービンの平均年収は2023年まで780万~840万円で安定的に推移していたが、2024年には779万円にやや後退。総合職の場合、30歳で年収550万~600万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,150万円が目安。企業規模の割には給与水準が高めに設定されており、業界上位クラスの待遇を得られる。
✔従業員数と勤続年数
象印マホービンの単体従業員数は500人~520人ほどの組織規模で安定的に推移しており、一般知名度の割には少数精鋭の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1,320人ほど。平均勤続年数は14.4年(2024年)と大企業の標準的水準をやや下回っている。
総合評価
企業格付け:CCC
戦前から魔法瓶メーカーとして発展した企業であるが、現在では炊飯器・オーブンレンジなどの家電製品を主力とする。特筆すべきは炊飯器市場において国内シェア1位を確立している点であり、日立製作所・三菱電機・パナソニックなど資金力で当社を圧倒する大手家電メーカーを凌駕している。業績においては売上高・利益いずれも2015年・2016年をピークに停滞が続くが、当時は中国人観光客による爆買い特需(参考リンク)に支えられていた側面が強く、平常時に戻っただけという評価が妥当。最近では『炎舞炊き』シリーズをはじめとする圧力IH炊飯ジャーが販売を牽引しており、販売価格10万円を超える高級ラインも好調である。財務体質においては自己資本比率70%以上で安定的に推移しており、多少の業績悪化は余裕で耐え凌げるだけの財務基盤が確立されている。
就職格付け:B
創業から現在まで大阪府に本社を置き続けており、関西圏における有名家電メーカーの1社。給与水準においては平均年収779万円(2024年)と、業界中堅ながら大手家電メーカーにも匹敵する待遇。2023年には平均年収840万円にも到達しており、関西圏の大手企業としては上位クラスそのもの。総合職の場合、30歳で年収550万~600万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,150万円には到達する。福利厚生も企業規模の割には相当に恵まれており、年間休日日数127日と休みが多いうえにリモートワークは週2回まで認められる。特筆すべきは住宅手当制度であり、東京勤務なら最大7万円/月・大阪勤務なら最大2.5万円/月が年齢不問かつ持家有無に関わらず支給される。家電メーカーらしく自社製品を割引価格で購入することもでき、生活家電・調理家電をお得に入手できるのも有難い。売上高1,000億円に満たない企業規模ながら、まさに世間が想像する以上の優良企業である。