企業概要
浜松ホトニクスは、光電子倍増管・フォトダイオード・半導体レーザーなどの光関連機器を製造する電子部品メーカー。1948年に電子管の製造を目指して創業。光電子倍増管で世界シェア90%以上を占有する事実上の独占企業であり、主力の光電子増倍管にレーザーなどの光源を組み合わせた計測技術を確立。研究開発を重視する企業として知られ、静岡県浜松市の中央研究所では光関連の基礎研究から応用研究に至るまで幅広く深掘。スーパーカミオカンデやCERN大型ハドロン衝突型加速器にも技術貢献。
・光関連でニッチトップを疾走する世界的な電子部品メーカー、静岡地盤
・売上高・利益は過去最高圏だが2024年はやや後退、実質無借金経営
・平均年収744万円と静岡県内トップクラス、静岡県外への転勤リスクは小
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:63(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
昨今の業績好調により総合職の採用数は年間100人前後まで増加中、企業規模の割に門戸が広い。浜松企業だけあって他県出身者の応募比率は下がるため、待遇を考えれば穴場感はある。
採用大学:【国公立】名古屋大学・名古屋工業大学・金沢大学・静岡大学・岐阜大学・豊橋技術科学大学、【私立】東京理科大学・同志社大学・明治大学・立教大学・関西大学・日本大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
浜松ホトニクスの売上高は2021年から急激な成長基調にあり、2023年には過去最高となる2,214億円に到達*1。ただし2024年には2,039億円にやや後退。営業利益も2022年に過去最高となる569億円に増加したが、2024年には321億円まで縮小*2。
*1:当社の売上高が成長している理由は、①世界的な電気自動車・5G通信機器の生産拡大による需要増加、②医療分野におけるX線CT用など高機能製品の需要拡大、③為替レートの円安推移による為替効果、など。2009年の売上高719億円から、15年間で売上高が3倍近く増加している。
*2:2023年に業績後退した理由は、①COVID-19以降の世界的な半導体特需の一服、②客先における過剰在庫の在庫調整、③新たに立ち上げた工場棟の減価償却費の負担増加、など。
✔セグメント別の状況
浜松ホトニクスは、電子管事業(光電子倍増管・イメージ機器・光源など)、光半導体事業(フォトダイオード・イメージセンサ・赤外線検出素子などの光半導体素子)、画像計測機器事業(CMMOSカメラ・CCDカメラ・TDIカメラなどの画像処理・計測装置)、レーザ事業(半導体レーザ・固体レーザなど)、その他事業(磐田グランドホテルなど)、の5事業を有する。
当社の主力事業は世界シェア90%以上を占有する光電子倍増管を擁する電子管事業と、医療・分析・科学計測・光通信・民生機器まで幅広い用途に使用されるフォトダイオードを擁する光半導体事業。最近では新たなる成長の柱としてレーザ事業に注力しており、2024年に工場棟を新設すると共に事業部に格上げ(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
浜松ホトニクスの純利益は2023年に過去最高となる純利益428億円に到達して過去最高を更新*2したが、2024年には251億円まで後退。営業利益率は15%~27%ほどで推移しており、大手メーカーを凌駕する高利益率を誇る。
✔自己資本比率と純資産
浜松ホトニクスの自己資本比率は75%以上の高水準で推移し続けており、大いに良好な水準。財務体質は手元資金が有利子負債を圧倒的に上回っており、実質無借金経営である。純資産は2021年から増加傾向が続いており、2024年には3,330億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
浜松ホトニクスの平均年収は670万~770万円で推移しており、静岡県内ではトップクラスの給与水準。総合職の場合、30歳で年収550~630万円程度、課長職レベルで年収900万~1,050万円ほど。年功序列が強めの給与・昇進制度となっている他、業績に応じた賞与増減による給与変動が大きめ。
✔従業員数と勤続年数
浜松ホトニクスの単体従業員数は業績好調に比例して増加傾向が続いており、2024年には4,227人に到達している。平均勤続年数は15年~16年での横ばいが続いており、大企業の標準的な水準に留まる。
総合評価
企業格付け:CCC
「光」分野でグローバルニッチトップを疾走する電子部品メーカー。企業理念「人類未知未踏の追求」を掲げ、創業から長きに渡って卓越した研究開発を継続してきた(参考リンク)。光電子増倍管分野では世界シェア90%という実質競合不在の状況にあり、他の追随を許さない。主要顧客は医療・バイオ・産業機器・半導体業界であるが、電気自動車・5G通信機器といった分野においても当社の技術は必要とされている。業績においては2023年まで売上高・利益いずれも過去最高圏で推移していたが、2024年はやや後退。これはCOVID-19以降の半導体需要の急増が腰折れした影響であり、顧客企業における在庫調整の余波でもある。純利益は428億円(2023年)から251億円(2024年)まで急減したが、それでも企業規模からすれば相当以上の利益率であるとは評価できよう。財務体質においても自己資本比率75%以上で実質無借金経営と極めて堅実。良好な利益率をも加味すれば、倒産リスクとはまず無縁であろう。
就職格付け:B
静岡県が誇る優良企業の1社。一般知名度はかなり低いが、地盤の浜松市周辺では優良企業として名の知れた企業。業績・財務いずれも堅実な優等生企業であることに加えて、世界最先端の研究開発に基づく製品開発力は競合他社を突き放す。給与水準においては平均年収は670万~770万円で推移しており、静岡県内ではトップクラスの給与水準である。総合職の場合、30歳で年収550万~630万円程度、課長職レベルで年収900万~1,050万円が目安となる。福利厚生においては県外出身者向けの独身寮はあるが、家賃補助手当は月額1万円ほどに留まる。とはいえ、当社の国内拠点は静岡県浜松市の周辺に集中しており、同地域に根を下ろして生活できる点が絶大なメリットであろう。同地での生活コストは都心勤務に比べると圧倒的に安価であるうえ、転勤リスクとも無縁であるが故に共働きもしやすい。転勤リスクを抱えた都心勤務で平均年収800万~900万程度を貰うよりも、実質的なコストパフォーマンスでは上回るポテンシャルは十二分にある。静岡県の出身者・居住者であれば是非検討してみたい1社。