企業概要
東海旅客鉄道(JR東海)は、東海地方を中心とする在来線網ならびに東海道新幹線を運営している大手鉄道会社。1949年に設立された日本国有鉄道を源流とし、1987年に国鉄分割民営化により発足。東名阪を繋ぐ最重要路線である東海道新幹線を保有、輸送能力47万人/日という世界屈指の高速鉄道路線を運営。東海地方を中心に12線区の在来線を担う他、百貨店・ホテル・駅ビル事業も展開。近年は新たな超高速鉄道であるリニア中央新幹線の工事も推進、2027年の先行開業に向けて準備中。
・東海道新幹線・リニア中央新幹線を擁する国内最大級の鉄道会社
・売上高・利益は安定的だがCOVID-19による打撃から回復途上
・平均年収709万円ほどだが、総合職のみ30代で1,000万円台に達する
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:74(最上位)
サラリーマンとしては最上位クラスの勝ち組。給与・待遇は鉄道業界トップ、社会的名声も卓越。東海道新幹線を掌握するがゆえに業績の安定性も盤石であり、死角がない。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
採用人数は年間400人以上だが、その大半はプロフェッショナル職採用。総合職の採用数は事務系20人・技術系40人ほどに過ぎず、出身大学は旧帝大・早慶がボリューム層。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・一橋大学・大阪大学・名古屋大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学など(出典:ダイヤモンドオンライン)
業績動向
✔売上高と営業利益
JR東海の売上高は1.5兆円~1.8兆円で安定していたが、2020年に0.82兆円まで激減*1。同年以降は回復傾向にあり、2023年には売上高1.7兆円に回復。営業利益も2020年・2021年の低迷を経て、回復傾向。
*1:JR東海はCOVID-19感染拡大により大打撃を被った1社。外出自粛により行楽需要が激減したうえ、企業の出張自粛により東海道新幹線の乗客数も激減。COVID-19感染を恐れて公共交通機関の利用が忌避された為に業績への打撃甚大。
✔セグメント別の状況
JR東海は運輸事業(東海道新幹線・在来線)、流通事業(JRセントラルタワーズ・JR東海高島屋・東海キヨスクなど)、不動産事業(駅ビル賃貸事業など)、その他事業(JR東海ホテルズ・JR東海ツアーズ・日本車両製造など)の4事業を有する。
JR東海は流通・不動産・ホテルなどの事業多角化が進んだ企業であるが、売上高・利益いずれも運輸事業が最大の稼ぎ頭。COVID-19感染拡大期には外出自粛の機運によって鉄道乗客数が激減したが、2023年には運輸事業が売上高・利益のコアへと再び返り咲いている。
✔最終利益と利益率
JR東海の純利益は5,000億~6,000億円で安定していたが、2020年を境に下落。直近では純利益3,844億円まで回復したが、COVID-19以前の水準には未だ回復せず。営業利益率はCOVID-19感染拡大期を除けば、30%以上で安定*2。
*2:JR東海の在来線は殆どが赤字路線であり収益貢献は果たせておらず、東海道新幹線で稼いだ資金を在来線維持に投じている。とはいえ、在来線を維持費を差し引いても尚、営業利益率30%以上であるから東海道新幹線の高収益ぶりは際立つ。
✔自己資本比率と純資産
JR東海の自己資本比率は直近で41.0%であり、高い収益性に対して意外と凡庸な水準*3。純資産は2019年頃に横ばいに陥ったものの、2022年以降は再び増加傾向。
*3:鉄道会社は鉄道車輛や線路の維持管理に膨大な設備投資資金を要する特性があり、自己資本比率は他業界と比べて低めとなる特徴がある。ただし、安定したキャッシュフローが得られる業態であるため自己資本比率がやや低めであったとしても大きな問題とはならない。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
JR東海の平均年収は700万円前後で安定、2021年にはCOVID-19による業績悪化の影響で600万円台に後退したが、2023年には700万円台を回復。大卒総合職ならば30歳頃に年収650~850万円、35歳頃に1,000万円を越える*3。平均年齢は36.3歳と大手企業としては若め。
*3:JR東海の採用枠には、総合職・プロフェッショナル職・アソシエイト職の3種類がある。各職種ごとに職務領域が異なり、待遇にも大きな違いがある。
✔従業員数と勤続年数
JR東海の単体従業員数は1.8万人規模で安定的。平均勤続年数は15.4年と意外と短く、大手企業の標準的水準に留まる*4。しかしこれは、プロフェッショナル職やアソシエイト職も含めた平均勤続年数である点も影響している。
*4:例えば、同じくインフラ系企業として認知される電力会社は平均勤続年数20年前後が標準的水準。意外と鉄道会社は平均勤続年数が伸び悩む傾向がある。
総合評価
企業格付け:AA
■業界ポジション
鉄道業界における最高峰の1社。超高収益路線である東海道新幹線により、鉄道業界にありながら著しく高い営業利益率を誇り、東名阪3大都市圏が日本の中枢である限り利益基盤は揺らがない。純利益5,000億円レベルを安定確保できる類稀な会社であり、その企業体力はリニア中央新幹線への投資が総額7兆円にも及ぶことからも明らか。
■業績動向
回復傾向。2020年にはCOVID-19感染拡大期には外出自粛によって大打撃を受けたが、感染終息を経て売上高・利益いずれも回復基調。絶対安泰と言われた東海道新幹線すらCOVID-19により出張&行楽需要が蒸発すると無力であったが、感染終息後のリベンジ消費を追い風にCOVID-19以前の水準を回復。
■財務体質
良好。自己資本比率は40%前後と鉄道業界においては高めの水準。リニア中央新幹線への巨額投資は重荷であるが、そもそもの利益水準が非常に高いために有利子負債の返済能力も高い。
■リスク
最大のリスクは自然災害。JR東海は長大な路線網を中部エリアに保有するが、同地域が南海トラフ巨大地震や富士山噴火などの事態に見舞われれば復旧費用に莫大な投資を必要とすることになる。開業から50年以上が経過した東海道新幹線の老朽化も深刻であり、リニア中央新幹線を実現することで東海道新幹線の老朽化問題の解決も図りたい局面にある。
就職格付け:AA
■給与水準
直近の平均年収は709万円と世間のイメージよりも低いが、これは現業職も含めた給与水準。大卒総合職の給与テーブルは別枠であり、30歳頃に年収700万~850万円ほど、35歳頃に1,000万円を越える。傑出した高給ではまったくないため過度な期待は禁物だが、終身雇用の安定性と引き換えである。
■福利厚生
良い。家賃補助は最大4.5万円、かつて国営鉄道だった時代の名残で独身寮や社宅も充実している。当社直営の名古屋セントラル病院もある。大手メーカーや総合商社とは異なり、海外勤務は殆どないこともメリットであり、国内志向が強い場合には最高峰であろう。
■キャリア
総合職・プロフェッショナル職・アソシエイト職の3職種制。総合職は将来の幹部候補として相応の給与水準とキャリアパスが約束されるが、プロフェッショナル職・アソシエイト職はあくまでも現業職であり給与水準も大幅に低くなる。同じ企業とはいえ採用職種によって大幅に待遇が異なるため、就職格付は明確に分かれる。