企業概要
本田技研工業は、自動車・バイク・航空機・芝刈機などを製造販売する大手自動車メーカー。1948年に本田宗一郎が自転車用エンジンの製造を目指して創業、1958年にはスーパーカブを発売して大ヒット商品となった。その後、アメリカ・欧州など海外展開を進めてバイクメーカーとして躍進。1963年には四輪事業へと進出、S500・シビック・NSX・インテグラなど数々の名車を生みだした。2006年には小型ジェット機の量産へと進出し、2017年からは小型ジェット機で世界シェアNo1を継続。
・日系三大自動車メーカーの一角、バイク・航空機・芝刈機なども強い
・売上高・利益いずれも安定的で底堅い、財務体質は良好
・平均年収831万円と日系三大自動車メーカー最下位、家賃補助制度も薄め
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:73(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
採用人数は年間300人~400人と門戸はかなり広い。大卒総合職を中堅大学からも幅広く採用しており、大学別では芝浦工業大学が最多の採用実績を持っている。
採用大学:【国公立】東京大学・大阪大学・東北大学・九州大学・東京工業大学・横浜国立大学など、【私立】芝浦工業大学・東京理科大学・慶應義塾大学・早稲田大学など(出典:大学通信ONLINE)
業績動向
✔売上高と営業利益
本田技研工業の売上高は13億~15億円ほどの水準で安定していたが、2022年以降は上抜けして直近では20.4兆円に到達*1。また超長期的には成長企業である*2。営業利益は0.5兆~0.8兆円ほどで安定しているが、2023年には1兆円を突破。
*1:2022年以降の業績好調の要因は、①四輪事業における新車販売台数の回復、②新興国におけるバイク販売の急増、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:当社の売上高は2010年頃には8兆円規模に過ぎなかったため、過去13年で売上高を約2倍以上に増加させている。
✔セグメント別の状況
本田技研工業は二輪事業(バイク・バギー・サイドバイサイドなど)、四輪事業(乗用車・商用車・軽自動車など)、パワープロダクツ事業(航空機・航空エンジン・除雪機・耕うん機・発電機・草刈機・芝刈機など)、金融事業(クレジット商品・カーリース・融資など)、の4事業を有する。
本田技研工業は自動車メーカーとしてのイメージが強いが、売上高の約40%を自動車以外の分野(バイク・耕運機・発電機・芝刈機など)で稼いでいる。利益面では四輪事業(自動車)が赤字転落している年度もあり、最近では二輪事業(バイク)が利益を底支えしている側面がある。
✔最終利益と利益率
本田技研工業の純利益は長期的に6,000億円レベルで安定推移。2017年には初の純利益1兆円を達成*2した他、2023年にも1兆円以上に。営業利益率は3~5%程度の水準にあり、大手メーカーとしては凡庸な水準。
*2:2017年の大幅増益は、アメリカでの法人減税によって約3,400億円の増益を享受したことが理由。アメリカの販売金融における繰延税金負債が削減されたことで、最終利益が大幅に拡大。
✔自己資本比率と純資産
本田技研工業の自己資本比率は長年に渡って35~40%前後で推移。日系3大自動車メーカーとしては最も高い水準にある*4。純資産は長期的に増加しており、2023年には純資産12.6兆円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
本田技研工業の平均年収は770万円~830万円で安定的に推移している。日系三大自動車メーカーではトヨタ自動車・日産自動車よりも給与水準は低め。大卒総合職であれば30歳前後で600~680万円、課長クラスで1,100万~1,200万円ほど。平均年齢は44歳前後と従業員の高齢化が進んでいる。
✔従業員数と勤続年数
本田技研工業の単体従業員数は2020年に急増しており、直近では3.24万人ほど。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は21万人を超える。平均勤続年数は21.9年前後とかなり長めであり、従業員の定着が良い。
総合評価
企業格付け:AA
■業界ポジション
トヨタ自動車・日産自動車と並び、日系三大自動車メーカーとして世界的に著名。戦前から自動車メーカーとして知られた他2社とは異なり、1960年代に軽自動車から参入した後発組でありながら、現在では日本自動車工業会長をトヨタ自動車・日産自動車と輪番制で受け持つまでに躍進。事業多角化が進んだ珍しい自動車メーカーであり、バイク・航空機・芝刈機・耕うん機など多種多様な事業を積極展開する独自性も。
■業績動向
拡大。2019年・2020年にはCOVID-19影響で後退したが、同年以降は再び成長基調に回帰。業績の追い風となっているのは、①北米エリアにおける新車販売の好調、②新興国におけるバイク販売の急拡大、③為替レートの円安推移による為替効果、など。2022年には四輪事業が赤字転落していたが、2023年には黒字を回復。2017年以来となる純利益1兆円突破を果たした。
■財務体質
良い。直近の自己資本比率は45%と日系三大自動車メーカーではトップクラス。直近の有利子負債は1.01兆円(2023年)と大きいが、手元の現預金は4.95兆円(2023年)もあるため問題はない。財務規律にはかなり保守的であり、事業拡大を焦らず堅実な財務体質を構築してきた歴史がある。
■電動化シフト
トヨタ自動車・日産自動車よりも電動化シフトに前のめり。直近では「2040年までにEV・FCEV販売比率をグローバルで100%にする」目標を掲げており、他2社が必ずしもEVありきではないと明言するのに対して強気。しかし実際にはEV販売は振るわず、2020年に国内発売したホンダeは累計1,800台しか売れず(参考リンク)。電気自動車開発では米ゼネラル・モーターズと提携していたが、2023年には提携関係の決裂を宣言してしまった。電動化シフトの先行きが見通せない。
就職格付け:AA
■給与水準
直近の平均年収は831万円ほど。日系三大自動車メーカーでは最下位であるうえ、他2社よりも平均年齢がかなり高いため同世代間での給与水準ではかなり劣る。大卒総合職であれば30歳前後で600~680万円、課長クラスで1,100万~1,200万円ほど。年功序列色が強いために給与水準を伸ばすには勤続年数を重ねていく必要がある。
■福利厚生
まずまず。大手自動車メーカーだけあって独身寮こそ充実しているが、住宅手当は2万円弱ほど。他企業と比較するとトヨタ自動車(3.5万円or格安社宅)・日産自動車(家賃額の75%)と比べると弱め。が、それでも平均勤続年数は日系自動車メーカーでもトップ級と従業員の定着は大いに良好。従業員の満足度はそれなりに高い模様。
■キャリア
職種別採用とオープン採用を併存させている。募集職種は、研究開発・生産技術・マーケティング・生産管理・物流・購買・人事・法務・経理・ITなど。年功序列色が強いため、トヨタ自動車・日産自動車にみられるような抜擢人事は少ない。かつての取締役最高顧問・藤沢武夫の「社長は技術者出身であるべき」との教訓が今も受け継がれており、歴代社長は技術系が占めている。かつては中高年の部下なし管理職が低い生産性で居座る光景も見られたが、2023年以降は早期退職制度などを次々と導入して中高年層の淘汰に本腰を入れつつある(参考リンク)。