企業概要
日産化学は、農業化学品・機能性材料・医薬品などを主力とする大手化学メーカー。1887年に渋沢栄一らが日本初の人工肥料会社として設立。1943年には日本鉱業(現・ENEOS)に吸収合併されるが、1945年には再び分離。1948年には油脂部門を日本油脂(現・日油)として分離独立させた。現在では化学肥料や農薬をはじめとする農業化学分野で国内首位に君臨。事業多角化を進めており、機能性材料・医薬品などにも進出。半導体・ディスプレイ向け材料開発にも熱心。
・農業化学・機能性材料が2大柱の化学メーカー、渋沢栄一が設立した名門
・売上高・利益は成長基調で利益率は業界トップクラス、財務健全性も傑出
・平均年収843万円で福利厚生は普通、一般知名度が低いため穴場感は強い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用数は年間30人~40人と企業規模なり。業績安定かつ高待遇な優良企業であるが、一般知名度は低いため選考倍率は上がりにくい。総合職の出身大学もハイレベル大学から中堅大学まで幅広い。
採用大学:【国公立】大阪大学・名古屋大学・神戸大学・千葉大学・金沢大学・岐阜大学・東京工業大学・東京外国語大学・京都工芸繊維大学・室蘭工業大学・兵庫県立大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・立教大学・関西大学・立命館大学・日本大学・近畿大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
日産化学の売上高は緩やかな増加傾向にあり、2022年には過去最高となる2,280億円に到達している*1。営業利益も増加傾向が続いており、2022年には過去最高となる522億円に到達している。
*1:売上高が2022年に増加した理由は、①世界的な作物価格の上昇による作付増加による除草剤・殺菌剤の販売好調、②半導体用反射防止コーティング剤・電子材料研磨材向け無機コロイドの販売増加、③為替レートの円安推移による為替効果など。
✔セグメント別の状況
日産化学は、化学品事業(硫酸・硝酸・アンモニア・封止材用特殊エポキシ・難燃剤・殺菌消毒材など)、機能性材料事業(ディスプレイ材料・半導体用反射防止コーティング剤・電子材料研磨材向け無機コロイド)、農業化学品事業(除草剤・殺菌剤・成長調整剤・動物用医薬品原薬)、ヘルスケア事業(高コレステロール血症治療薬原薬・ファインテック)、卸売事業(化学品の卸売)、その他事業(肥料・造園緑化・プラントエンジニアリングなど)、の6事業を有する。
当社は大手農業化学メーカーとして知られるが、現在では機能性材料事業が農業化学品事業に並ぶ利益貢献を果たしている。医薬品や農薬などで「不況に強い」領域に強いため、化学メーカーでありながら景気後退局面にも利益を確保しやすい事業構造を確立している。
✔最終利益と利益率
日産化学の純利益は緩やかな増加傾向が続いており、2022年には過去最高となる410億円に到達。営業利益率は2020年から20%を超える高水準で推移しており、大手化学メーカーとしては信越化学工業に続きトップクラスの利益水準を誇る。
✔自己資本比率と純資産
日産化学の自己資本比率は70%前後で長期的に安定して推移しており、財務健全性は化学業界トップクラスに良好である。純資産は右肩上がりでの増加が続いており、2023年には2,309億円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日産化学の平均年収は長期的な微増傾向が続いており、2023年には843万円に到達している。大卒総合職の場合、30歳で年収630万~730万円ほど、課長職へ昇格すると年収1,000万~1,200万円に到達する。化学業界においては財閥系化学メーカーに続く、業界上位クラスの待遇である。
✔従業員数と勤続年数
日産化学の単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いており、2023年には2,011人となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3,130人ほど。平均勤続年数は15.7年(2023年)と大手企業の標準的な水準である。
総合評価
企業格付け:BB
かつて渋沢栄一らが日本初の人工肥料会社として設立した名門企業。1980年代から「価値創造型企業」への転換を掲げて化学品・機能性材料・医薬品などに進出したことで、現在では農業化学分野に依存しない事業展開に成功している。とりわけ機能性材料事業は半導体・ディスプレイ向け材料では世界的シェアを確立するに至っている。業績においては、緩やかな増加傾向が長期的に続いており、2022年には過去最高となる売上高・営業利益・純利益に到達。特筆すべきは利益率の高さであり、2020年からは化学業界においてもトップクラスとなる営業利益率20%以上を安定的に確保できている。財務体質においても極めて優良であり、自己資本比率70.3%(2023年)かつ実質無借金経営。総じて、業績・財務いずれも模範的ポイントが多く、まさに化学業界の優良企業の1社と評価できよう。そのうえ、主力事業である農業化学品事業は景気後退局面にも安定性が強く、化学メーカー共通の弱点である「不況期の業績悪化」にも高耐性と隙がない。
就職格付け:B
旧日産コンツェルンにも属する化学メーカーであり、同門企業には日産自動車・日立製作所・ニッスイなどがある。BtoB事業が主であるが故に一般知名度は壊滅的に低いが、化学業界においては優良企業として広く知られた存在である。給与水準においては平均年収843万円(2023年)と業界上位クラスであり、大卒総合職であれば30歳で年収630万~730万円、課長職へ昇格すると年収1,000万~1,200万円に到達する。福利厚生においては特筆すべきポイントは少ないが、住宅補助制度として月額2万円ほどが年齢上限なく長期的に支給されるのは強み。各事業所には独身寮・社宅が整備されており、若手社員であれば利用することも可能。ただし、主力拠点は千葉県・埼玉県・富山県・愛知県・山口県に分散しているため、総合職の場合には長距離の転勤を覚悟する必要はあるだろう。