企業概要
日本製紙は、洋紙・情報用紙・印刷用紙・板紙・特殊紙などを製造販売する三井グループの大手製紙メーカー。1949年にGHQによる財閥解体によって王子製紙から分社化された十條製紙を源流とし、1993年に山陽国策パルプと合併して現社名の日本製紙へ社名変更。製紙業界において王子ホールディングスと双璧を為す最大手の一角であり、あらゆる紙素材に対応できる広範な製品ラインナップが強み。最近は総合バイオマス企業を標榜しており、木材・化学製品・特殊紙・バイオマスなどにも積極進出。
・王子ホールディングスと双璧を為す、業界首位級の大手製紙メーカー
・売上高は安定的だが利益は不安定かつ薄利、財務体質は低下傾向
・平均年収645万円だが転勤リスクの高さには注意、福利厚生はそこそこ充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:61(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用実績は年間40名~60名ほどだが、うち約半数は大学院卒。製紙業界の志望者にはまず選択肢として挙がる企業であるが、製紙業界がマイナー寄りであるため極端な高倍率にはなりにくい。
採用大学:【国公立】名古屋大学・広島大学・新潟大学・山口大学・富山県立大学・長岡技術科学大学・室蘭工業大学など、【私立】同志社大学・立教大学・法政大学・成蹊大学・共立女子大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
日本製紙の売上高は長年に渡って1兆円前後の水準で安定的に推移している*1。営業利益は長年に渡って120億~350億円で安定しているが、2022年のみ営業損失296億円に転落*2。
*1:当社の売上高は2008年の1.21兆円をピークに横這いが続いている。これは新聞・雑誌類の発行数減少やデジタルシフトによる紙需要の衰退が挙げられる。
*2:2022年は世界的な原材料価格の高騰により、主力の紙・板紙事業が赤字転落。製紙に必要な原材料・燃料の価格高騰が進んだことで大幅な営業損失に沈んだ。
✔セグメント別の状況
日本製紙は、紙・板紙事業(洋紙・板紙・特殊紙・パルプなど)、生活関連事業(家庭紙・雑種紙・段ボール・化成品など)、エネルギー事業(石巻エネルギーセンターにおける発電・電力販売)、木材・建材・土木建設関連事業(木材・建材の製造販売、土木建設など)、その他事業(情報システム・情報機器販売・設備保全・船舶貸渡など)、の4事業を有する。
当社は紙・製紙事業と生活関連事業で売上高の約90%を稼いでいるが、2023年には生活関連事業は赤字転落している状況。そのため、現在の当社の全社利益を支えているのは紙・製紙事業と土木建設事業となっている。
✔最終利益と利益率
日本製紙の純利益は2018年・2022年に大幅純損失を計上*3したが、2023年には純利益227億円を確保。年度によって安定しない状況が続いている。営業利益率は平常時でも1~3%ほどに過ぎず、利益率が低いビジネスモデルとなっている。
*3:2022年の純損失は、①本業の大幅な営業損失、②秋田工場停止による減損損失、③希望退職実施による費用、④海外子会社の特別損失197億円、が原因。政策保有株式の売却で特別利益を計上するも、特別損失が巨額に上ったことでカバーしきれず。
✔自己資本比率と純資産
日本製紙の自己資本比率は2016年の31%から減少傾向が続いていたが、2023年には自己資本比率27.1%までやや回復。負債比率が高いうえに利益も安定しないため、財務体質への不安はある。純資産は4,000億円規模での横ばい推移が続いているが、2023年には4,956億円まで回復。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日本製紙の平均年収は650~680万円台での推移が続いており、伸び悩む状況が続いている。大卒総合職の場合、30歳で年収680~730万円ほど、課長職レベルで850~900万円ほどと推定。年功序列色が強い給与制度であり、給与を増やすには勤続年数を重ねる必要がある。平均年齢は緩やかな増加傾向にあり、2023年には43.5歳に到達。
✔従業員数と勤続年数
日本製紙の単体従業員数は2018年に5,600人規模に増加したが、同年以降は減少傾向にある。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.55万人ほど。平均勤続年数は20年を上回っており、従業員の定着は極めて良好である。
総合評価
企業格付け:CC
王子ホールディングスと双璧を為す日系製紙メーカー最大手の一角。王子ホールディングスのライバルではあるが、かつて王子製紙から分社化された同根企業であるだけに複雑な関係(王子製紙創業の地は日本製紙が継承している)。業績においては、売上高こそ安定的だが、利益が薄利・不安定なのが弱点。純利益100億円に満たない年度も多いうえ、不調時には純損失▲350億~▲500億円を計上する状況。そのため、財務体質においては長期的な悪化傾向がみられ、自己資本比率は27.1%(2023年)まで低下している。2020年頃にはプラスチック代替材料として紙素材が脚光を浴びたことで業績好転が期待されたが、今度は原材料価格の高騰によって再び業績悪化に直面。とはいえ、2023年にはコストダウンと価格改定によって純利益227億円まで久々に回復した状況である。余談であるが、かつて当社は四国コカ・コーラボトリングを完全子会社としてコカ・コーラ事業も展開していたが、2015年にコカ・コーラウエスト(現・コカ・コーラボトラーズジャパン)へ譲渡して撤退している(参考リンク)。
就職格付け:C
日本を代表する製紙メーカーの1社、社名からは想像もつかないが三井グループを構成する1社である。世界的にみても相当に巨大な製紙メーカーであり、製紙業界では世界上位10社に数えられる規模を誇る。給与水準においては平均年収650万~680万円台と企業規模なりだが、昨今の業績停滞によって伸び悩んでいるのは辛いところ。大卒総合職の場合、30歳で年収680~730万円ほど、課長職レベルで850~900万円ほどと推定。福利厚生はそこそこであり、主力工場の周辺には独身寮・社宅がしっかりと整備されており、月額1万円ほどの格安で居住できる。ただし、歴史の長い企業かつ近年は業績が振るわないことから築年数が古かったり風呂トイレ共同などの物件も多いとされる。とはいえ、独身寮・社宅がない拠点へ配属される場合には借上げ社宅が与えられるのは恵まれている方であろう。主力工場は日本全国に点在しており、北海道から熊本まで13工場を保有。転勤リスクが高めであるだけでなく、転勤範囲までもが広い点には覚悟が必要だろう。