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【勝ち組?】日本板硝子の就職偏差値と平均年収・待遇【企業研究レポート】

企業概要

日本板硝子は、住友グループに属する大手ガラスメーカー。1918年に杉田与三郎が米リビー・オーエンス・フォードから板ガラス製造法のライセンスを受けて日米板ガラスを創業、1931年に日本板硝子に社名変更。建築用ガラスと自動車用ガラスに強く、ガラスメーカーとしては世界3位の売上高を誇る。世界100ヵ国以上でグローバルに板ガラスを販売する他、高機能ガラスとして超薄板ガラスや電池用セパレーターなども手掛ける。2006年に企業規模で勝る英ピルキントンを約6,000億円で買収、小が大を飲む買収として世間を驚かせた。英ピルキントンを傘下に加えた歴史的経緯からヨーロッパ市場においてメジャープレイヤーとなっている他、日本板硝子が長らく得意としてきたアジア市場においても存在感が大きい。

POINT

・住友Gの大手ガラスメーカー、板ガラスでは世界首位級の一角
・売上高・利益いずれも低迷、財務体質も自己資本比率10%台どまり
・平均年収は720~790万円ほど、福利厚生は意外と手厚い

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:63(中堅上位)

サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関

世界的ガラスメーカーだが一般知名度は低いため、選考倍率は低そうに見える。が、直近数年は業績不振もあって総合職の採用数が年間5人~20人と門戸が狭まっており、難易度は却って高まっている。
採用大学:【国公立】大阪大学・横浜国立大学・三重大学・岡山大学・大阪公立大学・電気通信大学、【私立】早稲田大学・東京理科大学・関西大学・立命館大学・国際基督教大学(出典:マイナビ2026

業績動向

✔売上高と営業利益

日本板硝子の売上高は長年に渡って4,900億~6,000億円のレンジで推移してきたが、2022年には売上高7,635億円に到達*1。営業利益は2020年に一時的な減少を経たが、2021年以降は再び回復*2。
*1:日本板硝子は海外売上高比率が80%以上を占めるグローバル企業であり、2022年は為替レートの円安推移による為替効果で大幅増益。エネルギー価格の高騰による販売価格の値上げ措置も奏功。
*2:2020年の大幅減益はCOVID-19の感染拡大による建築市場・自動車市場の縮小が主要因。日本板硝子は英ピルキントンの地盤である欧州市場が得意ゆえ、欧州地域でのCOVID-19感染拡大が打撃に。

✔セグメント別の状況

日本板硝子は建築用ガラス事業(建築材料市場向け板ガラス・内外装用ガラス製品・太陽光電池パネル用ガラスなど)、自動車用ガラス事業(新車向け・補修市場向け自動車用ガラス)、高機能ガラス事業(薄板ガラス・プリンターレンズ・光ガイド・エンジン用タイミングベルト向けガラス繊維など)、その他事業(小規模事業、ピルキントン買収に伴う無形資産償却費)の4事業を有する。
日本板硝子の事業ポートフォリオはガラス関係が95%以上を占めており、ガラス製品への依存度が高い。建築用ガラス・自動車用ガラスに売上高を依存する為、建築市場・自動車市場の需要動向に業績を左右されやすい。高機能ガラス事業は利益率は高いものの、全社利益を支える程の存在感はない。

✔最終利益と利益率

日本板硝子の純利益は過去8年間のうち4年間で純損失を計上、純利益の確保に難航している。本業では着実に営業利益を稼いでいるが、過去の買収に関わる特別損失や構造改革費用が重荷*4。営業利益率は3~5%前後で推移しており、大手メーカーとしては標準的な水準。
*4:日本板硝子の純利益が低迷する理由は、英ピルキントンを巨額の借入金で買収したことが原因。借入金の金利負担が年間100億円を超える他、買収に伴う無形資産の償却が毎年発生。

✔自己資本比率と純資産

日本板硝子の自己資本比率は10%台での低空飛行が続いており、大手メーカーとしては低水準。2005年頃までは自己資本比率40%台で推移していたが、英ピルキントンの巨額買収を経て財務体質が急速に悪化した。純資産は長年に渡って横這いが続いている。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

日本板硝子の平均年収は720~790万円ほどで安定的に推移している。給与水準はそれなりに高いが、従業員の平均年齢が45歳以上であるため平均年収が上振れやすい点には注意。大卒総合職であれば30代で年収500~600万円ほど、課長級に昇給すると年収900~1,100万円ほどが目安。

✔従業員数と勤続年数

日本板硝子の従業員数は1,900人ほどで推移してきたが、2021年以降は1,700人規模へ減少。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.48万人ほど。平均勤続年数は22.9年前後であり、非常に長めの水準。

総合評価

企業格付け:CC

社名からは想像しにくいが住友グループに属する大手ガラスメーカー。日系ガラスメーカーとしてはAGCに続く企業規模を誇り、板ガラスでは世界シェア首位を争っている企業。2006年の英ピルキントン買収により世界上位にまで一気に躍進したが、企業規模に見合わない無理な巨額買収劇の残した爪痕は大きく、未だに業績に影を落とし続けている。業績は低空飛行が続いており、2007年に記録した売上高8,655億円と比べると見劣る状況が継続。利益体質は芳しくなく、特別損失・金利負担・償却費の計上によって純損失への転落が頻発。財務体質も自己資本比率10%台と大手メーカーとしては相当に低い水準が定着している。金利負担や償却費については、時間を追うごとに徐々に負担が緩和されるため長期的にみればいずれかのタイミングで業績好転が期待されるが、現状の財務体質でそれまで耐え抜けるかが課題であろう。

就職格付け:B

建築用ガラス・自動車用ガラスを主力とする大手ガラスメーカー。同業のAGCは事業多角化によって板ガラスへの依存度は売上高の50%程度に過ぎないが、日本板硝子は売上高の95%を板ガラスに依存。そのため、①建築市場・自動車市場の景況感に業績が左右される、中国系ガラスメーカーなどの薄利多売な攻勢に弱い、などの特徴がある。給与水準は平均年収720~790万円と業績の割には高めではあるが、従業員の平均年齢が45歳前後という高齢化が進んだ企業であるため、平均年収は高く算出されやすい点には留意が必要。大卒総合職であれば30代で年収500~600万円ほどが目安。福利厚生は意外と充実しており、住宅手当は45歳まで支給されるうえ、最大6万円/月と額もそこそこ大きい。長年に渡って業績低迷が続いていながら、平均勤続年数20年以上という高水準を保っているのも、そうした背景事情があるのだろう。

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出典:日本板硝子株式会社(有価証券報告書)