企業概要
日本政策投資銀行は、長期資金供給を主力事業とする政府系金融機関。1951年に日本開発銀行として設立され、戦後復興に向けた電力・海運・鉄鉱分野への政策投資を開始。1999年には北海道東北開発公庫と合併し、2008年には特殊法人から株式会社へと移行した。現在においても政府系金融機関として公共性・中立性が求められる分野への長期資金の供給に取り組む。7年以上固定金利での融資比率が約75%にも達しており、投資回収に長期間を要する開発プロジェクトを資金繰りから支えている。
・政府系金融機関の一角、営利目的でない中長期政策投資に強み
・業績はCOVID-19緊急融資の一服で回復傾向、財務体質は大いに健全
・平均年収1,110万円と政府系金融機関トップクラス、福利厚生も充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:総合職=80(頂点)
サラリーマン社会の頂点。数々の国難において機動的な企業支援により日本経済を支えてきた社会的使命は絶大。類稀なキャリア価値に加えて、国策企業ゆえの安定性も強み。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:最難関級
著名な政府系金融機関であるが、総合職の採用数は年間40人~70人ほどに留まる。金融業界のなかでもトップクラス企業の一角であるため入行希望者は絶えない。入社倍率・難易度は例年極めて高くなる。
採用大学:非公開(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔経常収益と経常利益
日本政策投資銀行の経常収益は2021年まで2,600億~3,100億円ほどで安定的に推移していたが、2023年には4,108億円まで増加*1している。経常利益は2019年~2021年まで低下傾向がみられたが、同時期を除けば1,130億~1,470億円ほどで推移している。
*1:2022年から業績好調となった理由は、①国内景気の回復による投資利益の拡大、②COVID-19緊急融資の一服による与信関連費用減少、など(参考リンク)。
✔セグメント別の状況
日本政策投資銀行は、長期資金供給事業(中長期融資・メザニンファイナンス・エクイティファイナンス・アドバイザリー・コンサルティング・不動産アセットマネジメント・グローバルファンド投資など)、のみの単一事業組織である。
当行は日本政策投資銀行法に基づく政府系金融機関であり、公共性・中立性が求められるプロジェクトに長期資金を供給することを使命とする。最近では「インフラ再構築・産業創造・地域活性化」を重点課題としており、①北海道北部への送電網配備、②宮崎カーフェリーの事業再生、などに取り組む(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
日本政策投資銀行の純利益は2019年~2021年まで低下傾向*2がみられたが、2022年からは増加傾向に転換。2024年は純利益837億円となっている。自己資本利益率は1%~2%ほどで低迷するが、これは純資産が潤沢かつ純然たる営利企業ではないため、やむを得ない事情がある。
*2:2019年~2021年に純利益が低迷した要因は、①COVID-19感染拡大に対応した緊急対応・融資の遂行コストが増加、②投資業務における株式等償却損失の増加、など。
✔自己資本比率と純資産
日本政策投資銀行の自己資本比率は19.3%(2024年)と低めだが、銀行業としては高めの水準。銀行業は顧客から預金・有価証券を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。純資産は長期的に増加傾向が続いており、2024年は4.16兆円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日本政策投資銀行の平均年収は1,000万円をやや上回る水準で安定的だが、2023年には1,110万円まで上振れている。総合職であれば30歳で750万円~900万円ほど、課長職レベルで年収1,300万~1,500万円レベル。平均年齢は37.2歳(2023年)と、大手企業としてはやや若め。
✔従業員数と勤続年数
日本政策投資銀行の単体従業員数は増加傾向が続いており、2023年は1,261人ほどの組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数も1,850人ほど。平均勤続年数は13.3年(2023年)に留まっており、安定・高給のイメージの割にはそれほど長くはない。
総合評価
企業格付け:SSS
日本政策投資銀行法に基づき、公益性が高いプロジェクトへの戦略投資を遂行する政府系金融機関。特殊法人から株式会社へ移行したとはいえ、今なお政府出資比率100%であることには変わりなく、民間銀行では取り組めない領域への資金供給を担う。将来的な完全民営化が名目上は掲げられているものの、国難において機動的に対応できる唯一無二の金融機関であるから完全民営化論は何度も立ち消えている。業績においては2019年~2021年ごろまでCOVID-19緊急融資の影響で停滞感がみられたが、2022年からは増益傾向へと転換。営利企業ではないとはいえ、事業運営における堅実性は高く、景気後退局面も含めて安定的に利益を確保できている。財務体質においても健全性は高く、銀行業の国際規制であるバーゼルⅢベースの総自己資本比率は15%以上と大いに良好。
就職格付け:SSS
政府系金融機関5行の一角として公益性を重視した政策投資を担ってきた名門金融機関。単なるプロジェクト投資だけではなく、リーマンショックやCOVID-19などの国難クラスの危機的局面でも機動的な資金供給を果たしてきた。給与水準は政府系金融機関としてはトップクラスであり、総合職の平均年収は1,000万円を上回り続けている。特殊法人としての歴史が長かったが故に給与制度も年功序列色が強く、個人の成績次第で大きく待遇が変わる民間金融機関とは大きく異なる。最大の魅力は高度な金融業務に確実に携われる点であり、民間銀行の如くクレジットカードや投資信託のノルマに追われるドサ周り営業の日々を送る必要がないことは特筆に値する。財務省キャリア官僚からの天下り役員も少なくはないが、主要ポストの半分以上はプロパー入行組が抑えている。総じて、高い給与を得ながら高度な金融業務に確実に携われるうえ、崇高な社会的使命とステイタス性もある優良金融機関である。