企業概要
日本取引所は、東京証券取引所・大阪取引所・東京商品取引所などを運営する金融取引所グループ。1878年に渋沢栄一などが発起人となり設立された東京株式取引所が前身。現在では日本の株式売買の99.9%が東京証券取引所で成立しており、名実ともに日本の証券市場を支える存在。ニューヨーク証券取引所・ロンドン証券取引所と並んで世界三大証券取引所とも呼ばれる。株式売買システムサーバーは0.2ミリ秒での注文応答が可能、人間の反応速度の限界を超える高速株式取引を支える。
1.世界三大証券取引所の一角、ライバル不在の独占企業
2.売上高・利益は成極めて安定的、営業利益率50%以上の超高収益体質
3.平均年収1,034万円かつ平均勤続年数19.9年の超ホワイト企業
業績動向
✔営業収益と営業利益
日本取引所グループの営業収益は緩やかな成長基調にあり、2021年に過去最高となる1,354億円に到達*1。営業利益も概ね営業収益と連動した推移となっているが、こちらは2020年の745億円がピーク*2。
*1:日本取引所グループの収入源は、①取引参加者から支払われる取引参加料金・清算手数料、②上場企業から支払われる上場料金、③情報ベンダーから支払われる情報料金(株価情報の配信)。株式市場が活況を呈すると収入が増える構造であり、2021年はCOVID-19感染拡大後の株式投資ブームで増収。
*2:2021年は株式投資ブームで増収となったが、新たな取引システムの稼働によりシステム運営費が増加。これにより営業費用が増加してやや減益となった。
✔セグメント別の状況
日本取引所グループは金融取引所事業(有価証券・デリバティブ取引場、清算・決済サービス、指数・情報サービスなど)のみの単一事業会社である。
日本取引所グループには東京証券取引所・大阪取引所・東京商品取引所を中核として、日本取引所自主規制法人(上場審査・上場管理)、日本証券クリアリング機構(清算)、東証システムサービスなどが所属。証券取引に関わる周辺領域までをもカバーできる体制。
✔最終利益と利益率
日本取引所グループの純利益は400~500億円ほどのレンジで横ばい推移*2。営業利益率は50%以上の水準で安定推移しており、全業界においてもトップレベルの利益率を誇る*3。
*3:日本取引所グループは日本の株式売買の99.9%を司る事実上の独占企業、資本主義経済の根幹部で独占的ビジネスモデルを確立したことで極めて高い利益率を誇る。かつては立会取引など人件費が必要な取引方法が主流であったが、現在ではシステムによる取引ばかりのため利益率も良い。
✔自己資本比率と純資産
日本取引所グループの自己資本比率は1%未満、全業界全企業においても最低クラスの自己資本比率*4。純資産は緩やかな増加傾向が続いていたが、2020年以降は伸び悩みが続く。
*4:日本取引所グループは取引参加者から担保として預託された清算引受負債64兆円が計上されているため通常ではあり得ない自己資本比率となっている。ビジネスモデルに起因した特殊事例である為、特段の問題はない。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日本取引所グループの平均年収は増加傾向にあり、直近の2022年には1,034万円に到達。大卒総合職なら30歳前後の調査役級で年収800~950万円ほど、課長級に昇進すれば年収1,100万円を超える。
✔従業員数と勤続年数
日本取引所グループの従業員数は1,000人~1,200人規模で推移しており、少数精鋭の組織となっている。平均勤続年数は金融業界では異例の長さを誇り、直近の2021年には19.9年に到達。従業員の定着がよいホワイト企業である。
総合評価
企業格付け:SS
日本の証券取引所において断トツ首位、というよりライバル皆無の独占企業。ニューヨーク証券取引所・ロンドン証券取引所と並び、世界三大市場として資本主義社会の中枢を支える企業でもある。株式市場の活況・不況に左右されやすいビジネスモデルとはいえ、業績は極めて安定的。営業収益は緩やかな成長基調が続いており、営業利益は400億~500億円を毎年着実に稼ぎ出す。驚くべきは営業利益率50%を優に上回る利益率であり、事実上の独占企業として圧巻の利益率を確保し続けている。強いて言えば、現代では金融取引のほぼすべてがシステムに依存しているため、システム障害を発生させると甚大な被害が及ぶ。2020年には株式売買システムarrowheadの障害発生で丸1日に渡って取引停止に陥る事態が発生、世間を騒がせた。
就職格付け:SS
日本の金融取引を根幹から支える金融業界におけるインフラ企業だが、超優良企業として知られる。給与水準は平均年収1,000万円を優に上回り、30代で1,000万円に手が届く給与体系。家賃補助制度はないが給与水準を考えれば文句はなく、若手の独身社員には格安で入居できる独身寮を提供。給与水準だけなら金融業界のベンチマーク的存在であるメガバンクに勝るとも劣らない程度だが、就職格付けはメガバンクを圧倒。その理由は、①東京エリアに拠点が限られており転勤リスクが著しく低い点(海外赴任はある)、②一般顧客を相手としたドサ周り営業とは無縁である点、③平均勤続年数20年にも迫る社員の定着率の良さ、④実質的に競合不在の圧倒的な安定性、など枚挙に暇がない。