企業概要
島津製作所は、計測機器・医療機器・産業機器などを手掛ける電機メーカー。1875年に島津源蔵が理化学機器の製造を目的に創業、1909年には日本初の医療用X線装置を開発。技術先導型の企業として創業当時から数々の世界初・日本初となる製品を投入してきた。現在においては計測機器をコア事業としつつ、医療・産業・航空分野へと事業を拡大。X線診断装置で世界シェア4位、ターボ分子ポンプで世界シェア首位級。2002年には従業員の田中耕一がノーベル賞を受賞。
・産業・医療向けに強い京都の計測機器メーカー、世界的シェア製品多数
・売上高・利益いずれも好調で成長基調、財務体質も大いに優良
・平均年収892万円と高めで福利厚生も良好、不祥事発覚が痛い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間70人~120人と企業規模の割にかなり多め。京都の優良企業として世間に広く知られた企業であるため、選考倍率は高い。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・名古屋大学・神戸大学・筑波大学・横浜国立大学・金沢大学・大阪公立大学・京都工芸繊維大学・九州工業大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・関西大学・関西学院大学・立命館大学・東京理科大学など(出典:逆引き大学辞典WEB)
業績動向
✔売上高と営業利益
島津製作所の売上高は2020年まで3,900億円レベルでの横ばいが続いていたが、同年以降は増加傾向に転換。2024年には過去最高となる売上高5,390億円に到達している*1。営業利益は2021年から緩やかな増加傾向にあり、2024年には過去最高となる727億円に到達している。
*1:当社の売上高・利益が増加している理由は、①半導体業界向け分析計測機器・ターボ分子ポンプの需要拡大、②医療・製薬業界向けX線TVシステム・アフターマーケットでの販売好調、が主要因。
✔セグメント別の状況
島津製作所は、計測機器事業(高速液体クロマトグラフ質量分析装置・精密万能試験機・X線分析装置・水質計測装置・耐久試験機・など)、医用機器事業(X線撮影装置・血管撮影装置・PET装置など)、産業機器事業(ターボ分子ポンプ・油圧機器など)、航空機器事業(フライトシステム・コックピットシステム・磁気計測機器など)、その他事業(不動産賃貸・管理など)、の5事業を有する。
当社は多種多様な業界に向けた製品群を有しているが、事業の柱は計測機器事業。同事業が売上高の約64%・利益の約71%を稼いでおり、業績拡大を支えてきた。最近では産業機器事業における半導体製造装置向け真空ポンプ・産業用ターボ分子ポンプも利益拡大に貢献している(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
島津製作所の純利益は2021年から増加傾向にあり、2023年には過去最高となる570億円に到達している。営業利益率は10%~14%で長期的に推移しており、計測機器・医療機器メーカーとしては優良な利益率を安定的に確保できている。
✔自己資本比率と純資産
島津製作所の自己資本比率は長期的に62%~68%前後の水準で推移していたが、2024年には74.1%まで上振れ。高利益率だけではなく、財務健全性も高水準で維持しており優良。純資産は右肩上がりで増加しており、2024年には4,980億円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
島津製作所の平均年収は800万~860万円ほどで長期的に推移していたが、2023年には892万円まで上振れしている。従業員の待遇は大手メーカーにも引けを取らないが、年功序列色が強い給与制度となっている。大卒総合職は30歳で年収600万~700万円ほど、課長職レベルで年収1,000万~1,200万円レベル。
✔従業員数と勤続年数
島津製作所の単体従業員数は微増傾向が長期的に続いており、2024年には3,587人に到達している。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.42万人ほど。平均勤続年数は18.0年(2023年)とかなり長めであり、従業員の定着は良好である。
総合評価
企業格付け:BBB
数多くの計測機器・医療機器において世界的シェアを誇る企業であり、半導体製造装置向け真空ポンプや産業用ターボ分子ポンプでは世界トップシェアを獲得している。自由闊達な研究開発体制に強みがあり、創業以来100年以上に渡る歴史の中で数々の世界初・日本初となる製品を投入してきた名門。業績においては好調そのものであり、売上高・利益いずれも右肩上がりで増加。これまで半導体・医療分野向けに優れた製品を投入してシェアを拡大してきたが、昨今における半導体・医療分野の需要拡大が更なる追い風となっている状況。利益率は大いに良好であり、営業利益率10%以上を景気動向に関わらずしっかり確保。財務体質においても優良であり、自己資本比率60%以上を長期的に維持することで財務健全性もバッチリ。業績・財務いずれも問題といえる問題がなく、優良企業として成長を続けている状況である。が、2022年には医療機関向けX線装置のメンテナンスにあたり、意図的にエラーを発生させるタイマーを装着することで有償修理費用を請求していた事件が判明(参考リンク)。10年以上に渡って不正が続けられていたうえ、内部通報も揉み消されていたという極めて悪質な事例であり、企業イメージを大きく失墜させた。
就職格付け:BBB
計測機器などのBtoB製品を主力とする京都の計測機器メーカー。本来であれば一般知名度が皆無であってもおかしくない事業内容だが、2002年に従業員の田中耕一がノーベル賞を受賞したことで一気に有名企業へと躍進。受賞から20年が経過した現在においても一般知名度は高く、世間には優良企業として認知されている。給与水準においても平均年収892万円(2023年)と、高い利益率を従業員へとしっかり還元している。年功序列色が強い給与制度であるため若手社員のうちは昇給ペースが緩やかであるが、しっかり待てば年功序列でかなりの給与を得られるのは魅力。福利厚生においても充実しており、入社5年目までは独身寮が提供される他、家賃補助制度では3万円/月が支給される。大手メーカーと比較すれば物足りなさもなくはないが、京都企業の中ではトップクラスの待遇であることは間違いない。従業員の定着が良いホワイト企業としても知られ、平均勤続年数は18年以上・入社3年以内離職率は2%未満。総じて、関西圏における優良企業であることに疑いの余地はない。