企業概要
大成建設は、トンネル・ダム・橋梁・超高層ビル・商業施設などの大規模土木・建設工事を主力とする大手総合建設会社。1887年に渋沢栄一・大倉喜八郎らが設立した日本土木会社を源流とし、1892年には大倉喜八郎が単独経営する大倉土木組として再編。新国立競技場や新阿蘇大橋などを始めとして、大型橋梁・ダム・トンネル・高層ビルなどの施工実績を多数保有。海外においてもボスポラス海峡横断鉄道トンネルやアルマスタワーなどの超大規模プロジェクトを完遂した。現在では建設業界における最大手企業群である大手スーパーゼネコン5社の一角であり、売上高では第3位の地位を占める。
・大手スーパーゼネコン5社の一角、売上高では鹿島・大林組に続く規模
・売上高は横這いで利益は低下傾向、財務体質はそこそこ良好
・平均年収1,024万円と業界上位級だが、残業代・単身赴任手当が底上げ要素
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:71(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間330人~430人とかなりの大量採用。文系は旧帝大・早慶がボリューム層だが、理系は幅広い大学から採用している。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・九州大学・北海道大学・神戸大学・香川大学・東京工業大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・明治大学・関西学院大学・法政大学・立命館大学・日本大学・東京理科大学・芝浦工業大学・東京電機大学・東京都市大学など(出典:大学通信オンライン)
業績動向
✔売上高と営業利益
大成建設の売上高は1.4兆~1.7兆円のレンジで推移していたが、2024年には売上高2.15兆円に急増*1。とはいえ、バブル期に記録した売上高2.35兆円(1993年)には届かない状況。営業利益は2023年まで右肩下がりの推移が続いていた*2が、2024年には1,201億円まで急回復。
*1:2024年に売上高が急増した理由は、①建築事業における大型工事の竣工ラッシュ、②労務費・原材料価格の高騰を受けた受注価格への転嫁、③コンクリート建設大手・ピーエス三菱の買収、など。
*2:当社の営業利益が縮小していた原因は、①東京オリンピック終了後の低採算大型工事の増加、②世界的な原材料価格の高騰による建設コスト高騰の価格転嫁の遅れ。東京オリンピック特需の収束直後の建設業界全体で受注を競う状況に陥り、採算の良い工事が減った状況での建設コスト上昇が打撃に。
✔セグメント別の状況
大成建設は、土木事業(トンネル・橋梁・道路・沿岸構造物などの土木工作物の建設工事全般)、建築事業(ビル・商業施設・物流施設工場・ホテルなどの建設工事全般)、開発事業(不動産の売買・賃貸・管理・斡旋など)、その他事業、の4事業を有する。
当社の主力事業は売上高の約63%を占める建築事業であるが、全社利益においては土木事業が約70%を占めるほどの稼ぎ頭となっている。2023年には建築事業が建築コスト上昇や工事遅延によって赤字転落する事態となったが、価格転嫁を進めたことで黒字転換を果たしている(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
大成建設の純利益は2019年から2023年まで縮小傾向が続いていたが、2024年には1,238億円まで急回復している*3。営業利益率は2023年まで右型下がりで推移していたが、2024年には営業利益率5.58%まで回復している。
*3:2024年に純利益が急増した理由は、①労務費・原材料価格の高騰を受けた受注価格への転嫁、②政策保有株の売却による特別利益の計上、など。
✔自己資本比率と純資産
大成建設の自己資本比率は2020年まで上昇傾向が続いたが、同年をピークにやや減少。2024年の自己資本比率は35.7%となっており、まずまずの水準となっている。純資産は緩やかな増加傾向にあり、2023年には9,610億円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
大成建設の平均年収は950万~1050万円ほどで安定的に推移しており、2023年の平均年収は1,024万円となっている。大卒総合職なら30歳前後で年収750万~800万円、課長職レベルで年収1,200~1,350万円が目安となる。長時間勤務・単身赴任が多い業界であるため、手当による年収底上げが大きい。
✔従業員数と勤続年数
大成建設の単体従業員数は長年に渡って8,400人~8,700人ほどで推移している。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.62万人ほど。平均勤続年数は直近で17.9年(2023年)とかなり長めであり、建築事業のイメージに反して従業員の定着は良い。
総合評価
企業格付け:A
超高層ビル・大規模プロジェクトの設計~施工までを遂行する能力を有する大手スーパーゼネコン5社のうちの1社。スーパーゼネコンとして建設・土木工事を中心としつつも、大成有楽不動産・大成建設ハウジングなどを通して、一般消費者向けの不動産ビジネスも展開している。業績においては2023年まで利益低迷が際立っていたが、2024年に営業利益・純利益いずれも急回復を果たしている。世界的な原材料価格・労務費の高騰を受けて受注価格へと転化したことで、工事採算性が大きく改善。政策保有株の売却による特別利益も計上したことで、前年比4倍となる純利益1,238億円にまで拡大することに成功している。財務体質においては自己資本比率35.7%(2024年)と特段の問題はない水準といえよう。2023年にはコンクリート建設大手・ピーエス三菱に対して株式公開買い付けを遂行、同社を連結子会社化することで高速道路・橋梁の更新・補修需要の取り込みを目指している(参考リンク)。
就職格付け:A
かつては大倉喜八郎が創業したオーナー企業であったが、現在においては非同族企業。大成建設以外の大手スーパーゼネコン4社はいずれも同族企業であるため、非同族企業という観点では唯一無二の存在である。社員の自主性を重んじる社風であり、現場独立採算制を採用。各現場・作業所が自ら工事計画・資材調達・施工管理までを一貫して進めていくため、各現場が自主独立して工事を進めていく特徴がある。給与水準は平均年収1,000万円前後と建設業界トップクラス、大卒総合職なら30歳前後で年収750万~800万円、課長職レベルで年収1,200~1,350万円が目安となる。ただし、建設業界特有の長時間労働・単身赴任による手当によって給与水準が底上げされている点は否めない。福利厚生においては大手企業なりの制度は整っており、独身寮・社宅などが整備されているため家賃は格安で抑えやすい。また、単身赴任手当として10万円/月を上限として帰省費用を補助される(単身赴任が多い業界ゆえの福利厚生であろう)。建設業界は将来的にも外資系企業と直接競合するリスクが低いうえに将来的にも必ず存在し続ける業界である点は心強いだろう。