企業概要
名古屋鉄道は、愛知県・岐阜県を中心とする在来線網を運営している大手鉄道会社。1894年に馬車鉄道を運行する愛知馬車鉄道として創業したが、1896年に名古屋電気鉄道へ社名変更して鉄道運行へと事業転換を果たした。戦後には百貨店・スーパー・バス・不動産など事業多角化を追求、現代における名鉄グループを形成するに至る。東海三県に本社を置く唯一の大手私鉄であり、愛知県・岐阜県を網羅する長大な路線網は444km・275駅と国内私鉄3位の規模を誇る。
1.愛知県・岐阜県を地盤とする大手私鉄、名鉄グループを形成
2.売上高・利益いずれも停滞気味、財務体質も自己資本比率30%台で普通
3.大卒総合職は将来の経営層候補、35歳で年収600~750万円が目安
業績動向
✔売上高と営業利益
名古屋鉄道の売上高は長年に渡って6,000億円前後で推移してきたが、2020年に売上高4,816億円まで激減して現在は回復途上*1。営業利益は400億円台で安定していたが、こちらも2020年を境に急減。
*1:名古屋鉄道はCOVID-19感染拡大により大打撃を被った1社。外出自粛により鉄道需要が激減したうえ、グループ会社のタクシー・バス・ホテルなども大打撃を受けた。
✔セグメント別の状況
名古屋鉄道は交通事業(鉄道・乗合バス・観光バス・タクシーなど)、運送事業(トラック輸送・太平洋フェリーなど)、不動産事業(不動産の分譲・賃貸・管理など)、レジャー事業(ホテル・レストラン・観光施設・旅行業・広告代理店など)、流通事業(百貨店・石油販売・商品販売)、その他事業(ヘリコプター事業・機内食の調製)の4事業を有する。
名古屋鉄道は名鉄グループとして事業多角化を推進しており、事業領域は極めて広範に及ぶ。鉄道・バス・タクシーなどの交通事業が売上高に占める割合は約23%に過ぎず、鉄道会社のイメージの割に鉄道事業が業績に占める割合は高くない。最近はCOVID-19影響で本業が冴えない為、不動産事業が利益の屋台骨。
✔最終利益と利益率
名古屋鉄道の純利益は200億円レベルで安定していたが、2020年にCOVID-19の影響で急速悪化。同年以降は回復基調が続くが、依然として当時の水準には回復していない*2。営業利益率はCOVID-19以前は7%前後と大手私鉄としてはそこそこの水準。
*2:2021年以降はCOVID-19の影響が徐々に緩和したものの、リモートワークやオンライン会議の普及によって鉄道需要そのものが沈んだことで全盛期の水準に戻り切れていない状況。
✔自己資本比率と純資産
名古屋鉄道の自己資本比率は概ね30%台で推移。自己資本比率はやや低めの印象だが、これは鉄道会社に特有の事情による*3。純資産は2019年まで安定増加していたが、2020年以降は業績悪化で停滞。
*3:鉄道会社は鉄道車輛や線路の維持管理に膨大な設備投資資金を要する特性があり、自己資本比率は他業界と比べて低めとなる特徴がある。ただし、安定したキャッシュフローが得られる業態であるため自己資本比率がやや低めであったとしても大きな問題とはならない。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
名古屋鉄道の平均年収は600万円前後で推移しているが、2020年にはCOVID-19による業績悪化の影響で580万円台に後退。大卒総合職なら35歳頃に年収600~750万円、課長職レベルで800万円ほど*4。平均年齢は44.7歳とかなり高め。
*4:名古屋鉄道の採用枠には、総合職・運輸技術職の2種類がある。各職種ごとに職務領域が異なり、待遇にも大きな違いがある。
✔従業員数と勤続年数
名古屋鉄道の従業員数は5,000人規模で安定的に推移、COVID-19以降の業績悪化を経ても従業員数の削減は実施されていない。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.8万人ほど。平均勤続年数は24年以上であり、大手企業としても最高峰クラスの水準。
総合評価
企業格付け:BB
東海地方に地盤を持つ大手私鉄であり、大名古屋圏においては生活の足として親しまれる企業。名古屋鉄道を中核会社として、バス・タクシー・ホテル・広告代理店・不動産など多種多様な事業をグループとして展開。2019年まで業績は極めて安定的であったが2019年のCOVID-19により事業環境が一変。売上高・利益いずれも急減する事態に見舞われた。名鉄グループは事業多角化が進んでいたが、鉄道・バス・タクシー・ホテルいずれも感染防止の為の外出自粛で軒並み打撃を受けた点は予想外であった。最近の業績は名古屋圏に保有する優良な不動産によって支えられている側面が強く、利益の約半分は不動産事業による。時間の経過によりCOVID-19影響は徐々に薄れてはいるが、リモートワーク・オンライン会議の普及により全盛期の業績を回復するのは当面は難しそう。
就職格付け:BB
愛知県・岐阜県においては絶大なブランド力を発揮する大手私鉄。中部地方には他に大手私鉄がほぼ存在しておらず、ライバルとなるのはJR東海くらい。企業規模・鉄道事業ではJR東海に及ぶべくもないが、名鉄グループとして運輸・観光・不動産などあらゆる事業に事業多角化を進めている点において差別化は図れている。給与水準は平均年収600万円前後であり、JR東海の平均年収700万円前後と比べると差はある。大卒総合職なら35歳頃に年収600~750万円、課長職レベルで800万円ほどと給与面での魅力はそこまで高くない。しかし、名古屋鉄道の総合職採用の真髄は、名鉄グループにおける将来的な経営層としての採用である点。採用サイトにも「総合職は、名古屋鉄道及び名鉄グループの幹部候補として採用され、約120社にも及ぶ名鉄グループにおいて、経営を担うことを目指していただきます。」との明言がある。名鉄グループは120社以上もの組織である為、経営層ポストも多い。将来的に経営者を目指すことを志すのであれば戦略的に狙う価値は高い。