企業概要
名古屋鉄道は、愛知県・岐阜県を中心とする在来線網を運営している大手鉄道会社。1894年に馬車鉄道を運行する愛知馬車鉄道として創業したが、1896年に名古屋電気鉄道へ社名変更して鉄道運行へと事業転換を果たした。戦後には百貨店・スーパー・バス・不動産など事業多角化を追求、現代における名鉄グループを形成するに至る。東海三県に本社を置く唯一の大手私鉄であり、愛知県・岐阜県を網羅する長大な路線網は444km・275駅と国内私鉄3位の規模を誇る。
・愛知県・岐阜県が地盤の大手私鉄、名鉄グループとして事業多角化を推進
・売上高・利益いずれも停滞気味、財務体質も自己資本比率30%台で普通
・大卒総合職は30歳で年収450万~550万円、将来の経営幹部を目指せる
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:66(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。給与・待遇は大手企業の中でも上位クラス、満足度の高い人生を安定して歩むことができる可能性が高い。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:総合職=難関上位級、鉄道運輸職=難関
総合職の採用数は年間30人~40人ほどと、企業規模の割には少ない。名古屋圏においてはトップクラスの高い人気を誇る。鉄道会社の例に漏れず、難易度は相当に高い。
採用大学:【国公立】東京大学・一橋大学・名古屋大学・東北大学・神戸大学・名古屋工業大学・岐阜大学・三重大学・東京外国語大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・同志社大学・名城大学・愛知大学・金城学院大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
名古屋鉄道の売上高は長年に渡って6,000億円前後で推移してきたが、2020年に売上高4,816億円まで激減して現在は回復途上*1。営業利益は400億円台で安定していたが、こちらも2020年に赤字転落。同年以降は緩やかな回復傾向が続いている。
*1:2020年に業績悪化した理由は、COVID-19感染拡大による外出自粛が主要因。外出自粛とリモートワークの普及により鉄道需要が激減したうえ、グループ会社のタクシー・バス・ホテルなども軒並み大打撃を受けた経緯がある。
✔セグメント別の状況
名古屋鉄道は交通事業(鉄道・乗合バス・観光バス・タクシーなど)、運送事業(トラック輸送・太平洋フェリーなど)、不動産事業(不動産の分譲・賃貸・管理など)、レジャー事業(ホテル・レストラン・観光施設・旅行業・広告代理店など)、流通事業(百貨店・石油販売・商品販売)、その他事業(ヘリコプター事業・機内食の調製)の4事業を有する。
当社は名鉄グループとして事業多角化を推進しており、事業領域は極めて広範。鉄道・バス・タクシーなどの交通事業が売上高に占める割合は約23%に過ぎず、鉄道会社のイメージの割に鉄道事業が占める割合は高くない。とりわけ不動産事業は全社利益の約42%を支えており、最大の稼ぎ頭。
✔最終利益と利益率
名古屋鉄道の純利益は2019年まで230億~300億円で安定していたが、2020年にCOVID-19影響で赤字転落。同年以降は回復基調が続くが、直近の2023年も純利益244億円に留まる*2。営業利益率はCOVID-19以前は7%前後であったが、直近では5.56%に留まる。
*2:2021年以降はCOVID-19の影響が緩和したが、①リモートワークやオンライン会議の普及による鉄道需要の縮小、②原材料価格・人件費の上昇によるコスト上昇、などが課題。
✔自己資本比率と純資産
名古屋鉄道の自己資本比率は30%台で長期的に推移している。自己資本比率はやや低めの印象だが、これは鉄道会社に特有の事情による*3。純資産は2019年~2022年まで横ばいが続いてたが、2023年には4,640億円に増加している。
*3:鉄道会社は鉄道車輛や線路の維持管理に膨大な設備投資資金を要する特性があり、自己資本比率は他業界と比べて低めとなる特徴がある。ただし、安定したキャッシュフローが得られる業態であるため自己資本比率がやや低めであったとしても大きな問題とはならない。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
名古屋鉄道の平均年収は600万円前後で推移しているが、2020年にはCOVID-19による業績悪化の影響で580万円台に後退。大卒総合職なら30歳で年収450万~550万円*4、課長職レベルで750万~800万円ほど*5。平均年齢は44.7歳とかなり高め。
*4:2025年から大卒初任給を23万円から30万円に引き上げることを発表(参考リンク)。大きく収入が伸びるようにも思えるが、同時に賞与が廃止されている点に注意が必要。見込みの初年度の年収は360万円と大きく変化していない。
*5:当社の職種には、総合職・運輸技術職の2種類がある。各職種ごとに昇進・待遇にも大きな違いがあり、総合職は昇進・昇給のスペースが特に早い。
✔従業員数と勤続年数
名古屋鉄道の従業員数は5,000人規模で安定的に推移、COVID-19以降の業績悪化を経ても従業員数の削減は実施されていない。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.8万人ほど。平均勤続年数は24年以上であり、従業員の定着は極めて良好。
総合評価
企業格付け:B
東海地方に地盤を持つ大手私鉄。名古屋鉄道を中核会社として、バス・タクシー・ホテル・広告代理店・不動産など多種多様な事業をグループとして展開。大名古屋圏においては生活に密着した企業として親しまれる存在でもある。業績においては2019年のCOVID-19による打撃が大きく、売上高・利益いずれも急減する事態に見舞われた。名鉄グループは事業多角化が進んでいたが、鉄道・バス・タクシー・ホテルいずれも感染防止の為の外出自粛で軒並み打撃を受けた点は予想外であった。同年以降は緩やかな回復傾向が続いているが、COVID-19影響が解消した2023年においても尚、2019年以前の水準までは回復していない。当社の業績は、当社が名古屋圏に保有する優良な不動産によって支えられている側面が強く、全社の約40%が不動産事業に支えられている点は覚えておきたい。
就職格付け:BB
愛知県・岐阜県において絶大なブランド力を発揮する大手私鉄。中部地方は大手鉄道会社が少なく、ライバルとなるのはJR東海と近畿日本鉄道くらいである。企業規模・鉄道事業ではJR東海に及ぶべくもないが、当社は名鉄グループとして運輸・観光・不動産などあらゆる事業に事業多角化を進めている点において差別化は図れている。給与水準は平均年収600万円前後であり、JR東海の平均年収700万円前後と比べると差はあるか。具体的には、大卒総合職なら30で年収450万~550万円、課長職レベルで750万~800万円ほどが目安となる。しかし、当社の総合職採用の真髄は、名鉄グループにおける「将来の経営幹部層」としての採用である点。採用サイトにも「総合職は、名古屋鉄道及び名鉄グループの幹部候補として採用され、約120社にも及ぶ名鉄グループにおいて、経営を担うことを目指していただきます。」との明言がある。名鉄グループは120社以上もの組織である為、経営層ポストも多い。将来的に経営者になりたいと強く志すのであれば戦略的に狙う価値は高い。