企業概要
住友不動産は、住友グループに属する大手総合不動産デベロッパー。1949年に住友本社の不動産部門が財閥解体により分離独立。独立当初はビル3棟のみの所有であったが、1950年代以降に規模拡大に成功。現在ではマンション供給戸数で国内首位かつ、土地保有額では三井不動産・三菱地所に肉薄。昨今では都心部の構想タワーマンションの開発にも熱心。戸建分野にも強く、リフォームブランドの”新築そっくりさん”はリフォーム業界において首位級の存在。
1.マンション領域で国内首位級の財閥系の大手総合不動産デベロッパー
2.売上高は成長基調、マンションブームで過去最高益を更新
3.大卒総合職なら年収は1000~1300万円に到達、総合職採用は超高難易度
業績動向
✔売上高と営業利益
住友不動産の売上高は過去8年間に渡って9,000億円レベルで横這い*1。営業利益は堅調な成長基調、2020年に一時停滞するも直近では過去最高となる2,546億円に回復*2。
*1:住友不動産は売上高の拡大よりも経常利益の拡大を優先している。第九次中期経営計画において2022年~2024年で累計売上高3兆円を目標としており、売上高1兆円を更に引き延ばすことは目標とはしていない。
*2:近年ではマンション需要拡大による販売価格上昇・販管費削減により利益率が拡大している他、利益重視で販売ペースをコントロールしている。
✔セグメント別の状況
住友不動産は不動産賃貸事業(オフィスビル・マンション・ホテル・商業施設などの開発・賃貸・運営・管理など)、不動産販売事業(マンション・戸建住宅の開発・分譲などなど)、完成工事事業(戸建住宅・マンションなどの建築・改修工事の請負)、不動産流通事業(不動産売買の仲介・販売代理受託)、その他事業(フィットネスクラブ・飲食事業など)の5事業を有する。
住友不動産は三菱地所・三井不動産に並ぶ総合不動産デベロッパーであるが、①売上高における住宅・マンションの比率が高いこと、②注文住宅やリフォームを請け負う工事部門が強いこと、が特徴。
✔最終利益と利益率
住友不動産の純利益は営業利益の成長に連動する形で右肩上がりで増加。COVID-19の感染拡大を経ても尚、純利益の増加は鈍化することなく2023年には過去最高益を更新*3。
*3:COVID-19の感染拡大後にもマンション需要は早々の回復を遂げたことが、マンション領域を得意とする住友不動産にとっては追い風となった。
✔自己資本比率と純資産
住友不動産の自己資本比率は直近で30.7%とやや少なめだが、これは大手総合不動産デベロッパーとしては標準的な水準*4。純資産は堅調な増加基調を維持、直近では2.05兆円に到達。
*4:不動産デベロッパーは投資額が巨額に及び、投資期間も長期に渡るためため長期借入金などの資金調達で賄うことが多く、自己資本比率は高まりにくい傾向がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
住友不動産の平均年収は直近で713万円と、他の財閥系大手不動産デベロッパーと比較すると低め。ただしこれは他社と異なり、本体に総合職以外の従業員を数多く抱えている事情によるもの。大卒総合職の平均年収は1000~1400万円程度と推定され、35歳時点で1000万円を超える。
✔従業員数と勤続年数
住友不動産の単体従業員数は2019年まで増加基調が続いていたが、直近ではやや減少して5,700人レベル。平均勤続年数は8.44年と大手企業としては非常に短いが、これは総合職以外の社員も含めての平均勤続年数となっている事情による。
総合評価
企業格付け:AAA
三菱地所・三井不動産に次ぐ大手総合不動産デベロッパー。売上高では三菱地所と互角レベル、利益では三井不動産と互角レベルにあり、業界首位級の一角を争う立ち位置。得意分野のマンション分譲では国内首位級で他を突き放している反面、オフィスビルや商業施設など大手総合不動産デベロッパーならではの大規模プロジェクトでは他2社の後塵を拝する。昨今のマンションブームの追い風を享受、販売価格・利益率の向上に取り組んだ成果により業績も堅調。マンションブームが続く限りは当面安泰であるが、人件費や原材料費の高騰による建築コスト上昇によるマンション需要の腰折れには警戒したい。
就職格付け:SS
不動産業界では三菱地所・三井不動産に次ぐ三番手の就職偏差値に位置するとはいえ、全業界を俯瞰しても非常にハイレベルな就職先であることは確実。平均年収こそ600万円台にあるものの、これは一般職を含んだ数字であり、大卒総合職ならば1000万円を優に上回る給与水準。高層タワーマンションをはじめとするブランド不動産の開発実績による企業イメージも抜群。注目したいのは(不動産業界においてマーケット規模が特に大きい)マンション領域における強さであり、住友不動産で得られる経験は転職・独立する場合にも極めて有益。ただし、総合職採用は非常に狭き門であり、新卒採用は10~20名規模に留まり、総合職の中途採用は30年間なし(2022年に再開)。就職難易度は極めて高いため、他企業との併願必須。