企業概要
住友ゴム工業は、自動車用タイヤ・建機用タイヤ・スポーツ用品・産業ゴムなどを展開とする自動車部品メーカー。1909年に英・ダンロップ日本工場として設立。設立から50年以上に渡って外資企業であったが、1960年代に住友商事・住友電気工業が資本参加したことで現社名の住友ゴム工業へと改名。現在ではダンロップ・ファルケンの2ブランドで世界展開しており、自動車用タイヤにおいて世界シェア5位を確立。2015年に米グッドイヤーと提携解消したことで”ダンロップ”ブランドの商標使用権に制約。
・住友Gの大手タイヤメーカー、2ブランド体制で世界シェア5位を確立
・売上高は横ばいだが利益の減少が止まらない、財務体質は良好
・総合職は30代で年収620万~700万円、福利厚生はタイヤ業界首位レベル
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用数は年間10人~60人と知名度の割には少ない。2023年は採用数が急減した経緯があり、採用数自体が狭まったために入社難易度が上昇傾向にある。
採用大学:【国公立】大阪大学・名古屋大学・神戸大学・新潟大学・静岡大学・岡山大学・三重大学・名古屋工業大学・大阪公立大学・愛知県立大学・広島県立大学など、【私立】早稲田大学・同志社大学・明治大学・立命館大学・名城大学・豊田工業大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
住友ゴム工業の売上高は2021年まで0.79兆~0.93兆円レベルで推移してきたが、同年以降は増加傾向に転換。2024年には過去最高となる売上高1.21兆円に到達している。営業利益は2015年頃から減少傾向*1が続いているが、2023年のみ644億円まで急回復。
*1:2015年から営業利益が減少し続けているのは、同年に米・グッドイヤーとのアライアンス関係を解消したことが主要因。欧米市場において認知度が高い”ダンロップ”ブランドを一部を除いて使用できなくなり、収益性が大きく悪化。
*2:2023年に営業利益が急増した理由は、①COVID-19後に急騰した海上コンテナ輸送費の下落によるコスト良化、②高機能タイヤの販売増加、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
住友ゴム工業は、タイヤ事業(自動車用タイヤ・産業車両用タイヤ・建機用タイヤ・バンク修理材など)、スポーツ事業(ゴルフクラブ・ゴルフボール・テニス用品、ゴルフスクール・テニススクール・フィットネスクラブ運営など)、産業品他事業(制振ダンパー・医療用ゴム手袋・防舷材・床材など)、の3事業を有する。
当社は売上高・利益の大半をタイヤ事業が稼いでおり、事実上、自動車タイヤに大きく依存する事業構造となっている。大手タイヤメーカーでありながら、スポーツ事業にも熱心に取り組んでいる点が特徴的。スポーツ用品によってブランドイメージ・認知度を高め、タイヤ販売に繋げている。
✔最終利益と利益率
住友ゴム工業の純利益は2015年から下落傾向が続いており、あまり安定していない。全盛期の2015年には純利益720億円を稼いでいたが、2024年は98億円まで低下している。営業利益率は好調時には7%を超えるが、2024年は0.92%と低水準に留まる。
✔自己資本比率と純資産
住友ゴム工業の自己資本比率は44%~49%ほどで長期的に推移しており、大手メーカーとしては標準的な水準である。純資産は2021年まで4,600億~4,900億円で推移していたが、2021年からは増加傾向。2024年には純資産6,758億円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
住友ゴム工業の平均年収は640万~670万円レベルで安定的に推移している。大卒総合職の場合、30歳で年収550万~600万円ほど、課長職レベルで年収900万~1,050万円ほどに到達する。平均年齢は40歳前後で安定的に推移している。
✔従業員数と勤続年数
住友ゴム工業の単体従業員数は2022年まで緩やかな増加傾向が続いていたが、同年以降は横ばい傾向に転換。2024年は7,636人ほどの組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3.79万人ほど。平均勤続年数は14.6年(2024年)と大手企業の標準的な水準。
総合評価
企業格付け:CC
日系タイヤメーカーとしてはブリヂストンに続く業界2位の規模を誇る大手タイヤメーカー…だったのだが、最近では業界3位の横浜ゴムが利益において当社を圧倒しており、売上高においても猛追される苦しい状況。業績においては2015年から悪化トレンドが続いており、とりわけ利益率の低下が懸念されている。この原因は2015年に米・グッドイヤーとアライアンス契約を解消した点にあり、この解消時に住友ゴム工業は欧米市場における『ダンロップ』ブランドの使用権の殆どを喪失した。同年以降、欧州市場には『ファルケン』ブランドで攻勢をかけているが、欧米市場において認知度が高かった『ダンロップ』が使えなくなった痛手を埋めるには心細い。『ファルケン』の認知度向上に向けたマーケティングにも費用が必要であり、利益率も低迷せざるを得ない。他方で、欧米市場以外では引き続き『ダンロップ』ブランドが使用できるため、日本・アジア市場では『ダンロップ』へのテコ入れも必要。2018年にはダンロップスポーツを完全子会社化、”ダンロップ”スポーツ用品事業を通してブランドイメージを底上げする取り組みを開始。…要するに、世界各地で2ブランドを別々に用いるが故の非効率性が大いなる災厄となっており、歴史的経緯から発生したブランド戦略の迷走が業績の下押し圧力となっている。他方で、2023年には久々に営業利益・純利益が好転しており、長く続いていた低迷期からの脱出が期待されつつある状況。
就職格付け:CCC
兵庫県神戸市に本社を置く大手タイヤメーカー、同業のTOYO TIREと同じく兵庫県地盤の企業である。住友電気工業が発行済み株式数の約28%を保有する筆頭株主であり、同社の関連会社という立ち位置でもある。給与水準においては他の大手タイヤメーカー並みの水準であるが、総合職の給与水準はやや高め。総合職であれば30歳で550万~600万に到達するため、関西圏の最大手メーカーに続くレベルの給与を得られるポテンシャルはあるだろう。福利厚生もかなり充実しており、家賃補助制度では最大6万円/月が支給される。業界首位のブリヂストンの家賃補助制度が最大2万円/月であることを思うと、大盤振る舞いの感すらある。そのうえ扶養者には配偶者手当1.8万円/月・子ども手当6,000円/月も支給される。2023年には独身寮を廃止したが、なんと代替策として借上げ社宅制度を大幅拡充。余計な人間関係をカットした上で好きな住居を選べるので改善といって良いだろう。総じて社員思いの会社であるが、唯一の欠点は事業所・工場が日本全国に立地している点。北は北海道・南は宮崎県にまで拠点が散在しているため、転勤リスクだけは覚悟しておく必要があるだろう。