企業概要
三菱食品は、加工食品・冷凍食品・酒類・菓子類などの卸売を主力とする三菱商事グループの大手食品商社。2011年に菱食・明治屋商事・サンエス・フードサービスネットワークの4社が合併して設立。食品卸売業界において国内首位となる事業規模を誇り、国内外の食品メーカー約6,500社と日本全国の小売店とをつなぐサプライチェーンを構築。食品メーカー・小売店向けにマーケティング・商品開発・製造支援も展開する他、海外食品ブランド『ハリボー』『リンツ』などの流通も手掛ける。
・三菱商事の連結子会社の大手食品商社、食品卸売業界で首位
・売上高・利益いずれも安定的だが利益率が低い、財務体質は問題なし
・平均年収730万円台で年功序列色が強い、住宅補助はかなり手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:62(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用数は年間80名~100名ほど。三菱商事グループの商社だけあって人気度は高く、食品専門商社としてはトップクラスの難易度。選考倍率は50倍を超える。
採用大学:【国公立】京都大学・北海道大学・神戸大学・筑波大学・広島大学・金沢大学・岡山大学・和歌山大学・大阪公立大学・長崎県立大学・小樽商科大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・明治大学・立教大学・関西学院大学・立命館大学・日本大学・南山大学・成蹊大学・駒澤大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
三菱食品の売上高は2020年まで2.5兆〜2.6兆円レベルで推移していたが、2021年に急落*1。同年以降は売上高2.0兆円レベルでの推移が続いている。営業利益は2020年まで150億円前後で推移していたが、同年以降は増加傾向。2024年には過去最高となる営業利益315億円に到達している。
*1:2021年に売上高が急落した理由は、会計基準の変更が主要因。2020年3月31日から収益認識に関する会計基準が新たに適用され、同基準に従ったことが変化点となっている(参考リンク)。
*2:2024年に営業利益が増加した理由は、①コンビニ・ディスカウントストア向け取引の増加による粗利増加、②新規取り扱いブランドの増加による取引拡大、など。
✔セグメント別の状況
三菱食品は、卸売事業(加工食品・低温食品・酒類・菓子などの卸売)、ブランド開発事業(自社オリジナル商品の開発・販売、輸入食品の販売など)、物流事業(物流センターの運営受託など)、機能開発事業(データ分析・デジタルマーケティング機能提供、メーカー向け原材料取引・営業代行・代理店機能提供、海外事業など)、の4事業を有する。
当社は食品商社として卸売事業を主力としており、食品メーカーなど約6,500社に及ぶ仕入先から小売店など約9,000社に及ぶ販売先へのサプライチェーンを支えている。食品メーカーに対しては需給調整・原材料取引などを提供する他、小売店には販売・営業戦略の策定も支援。食品流通の効率化に向けた多様な施策を展開している。
✔最終利益と利益率
三菱食品の純利益は2021年から増加傾向にあり、2024年には過去最高となる231億円に到達している。景気後退局面にも純利益を確保できる安定性に強みがあり、リーマンショック直後やCOVID-19感染拡大期も含めて安定的に利益を確保できている*2。営業利益率は1%前後での推移が続いており、利益率は低め。
*2:どのような経済不況・景気後退局面であっても人間には必ず食事が必要である為、食品卸売のニーズは底堅いと言える。
✔自己資本比率と純資産
三菱食品の自己資本比率は概ね25%〜28%ほどの低水準で推移しているが、これは商社特有の事情による*3。純資産は2021年に一時的に下落したが、安定した利益確保によって長期的には増加傾向。2024年には純資産2,188億円に到達している。
*3:メーカーと小売店の間に介在する商社は、商品の出荷~着荷までの期間において商品を一時的に保有する。巨額の買掛金を負債として背負うために自己資本比率が表面上は低く見える。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
三菱食品の平均年収は2021年まで640万〜660万円ほどで安定していたが、2024年には730万円に上振れしている。大卒総合職の場合、30代で年収500万〜650万円ほど、課長職レベルで年収880万〜1,050万円ほど。平均年齢は44.6歳(2024年)と、大手企業の標準的な水準を上回る。
✔従業員数と勤続年数
三菱食品の単体従業員数は2018年に一時増加したが、同年以降は減少傾向がみられる。2024年は3,860人規模の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は5,020人ほど。平均勤続年数は19.4年(2024年)とかなり長く、従業員の定着は良い。
総合評価
企業格付け:B
食品卸売業界におけるトップ企業であり、業界3強とされる日本アクセス・国分グループ本社と比べても規模感は頭一つ抜けている。同じく三菱商事グループに属するローソンが最大手の顧客であるが、イオングループ・イトーヨーカドー・Amazonとの取引シェアも大きい。業績においては大いに安定的であり、売上高・利益いずれも急変動を起こしにくい。COVID-19感染拡大期には外出自粛の影響でやや売上高を落としたが、それでも前年比2.9%の減少幅に留まった。さすがに人間の生存に不可欠となる食品流通を主力としているだけあって、事業の安定性は卓越しているといえよう。財務体質においては自己資本比率28.1%(2024年)と一見すると低いが、これは商品を仕入れ~販売するまでの買掛金に由来するものであるため内実に不安はない。強いて言えば、利益率が低い点がネックではあり、営業利益率は長年に渡って1%前後の低水準で停滞。こうした状況を打開するため2021年に策定した『中期経営計画2023』においては、①デジタル活用による需要予測・生産の流通最適化、②出荷データを活用したデジタルマーケティング、③小売店向け広告販促効果の最適化、などを掲げている。
就職格付け:CCC
食品メーカーが製造した食品が店頭に並ぶまでを支えている食品商社であり、三菱商事グループにおける中核企業の1社。。当社が流通を手掛ける商品としては、①大手・中堅の食品メーカーが製造する食品、②自社ブランド『かむかむレモン』『からだシフト』『ララキット』など、③海外食品『リンツ』『ハリボー』『バリラ』『へングステンベルグ』など、がある。給与水準においては平均年収730万円(2024年)と、”三菱商事グループの食品商社”というイメージと比べれば普通レベル(2021年までは平均年収640万~660万円台ほどに留まっていた)。大卒総合職の場合、30代で年収500万〜650万円ほど、課長職レベルで年収880万〜1,050万円ほどが目安。年功序列色が強いために若手社員の昇給スピードは緩慢であり、給与水準は勤続10年目まで微妙な昇給幅が続く。福利厚生においてはかなり充実しており、家賃補助制度では最大7万円/月が支給される他、借上げ社宅制度では自己負担額は月額家賃の30%に留まる。名目上は34歳までが住宅補助の期限であるが、一度でも転勤すれば10年間の補助が追加される恩恵もある。総じて、「基本給の安さを福利厚生で補う」制度設計である。平均勤続年数が19.4年(2024年)と長く、給与水準について従業員はそれなりに納得している模様。