企業概要
三井海洋開発(略称:MODEC)は、浮体式海洋石油・ガス生産設備(以下、FPSOと表記)を設計・据付・運用する洋上プラント開発会社。1968年に三井物産と三井造船が共同出資して設立、1991年には三井造船の子会社に。FPSO分野における唯一の日本企業であり、蘭SBMオフショアと世界シェアを二分する最大手。FPSOの建造実績は49基に及び、自社でもFPSO20基を操業してブラジル沖・ガーナ沖などで石油・ガスの採掘・生産を担う。2022年には親会社の三井E&Sが保有株を一部売却、同社の連結子会社から離脱。
・FPSOで唯一の日本企業にして世界2強の一角、海外売上高比率100%
・売上高・利益はCOVID-19影響で悪化するも2022年に黒字回復
・海外赴任者は20代で年収1,000万円を優に上回るが、危険地域も多い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:70(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:至難
総合職の採用人数は年間5名~10名と極めて少ない。マニアックな業界であるが、日本企業としては当社以外が存在しないのも難化を助長。総合職の出身大学もハイレベル大学が大半。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・東京工業大学・名古屋大学・広島大学・東京外国語大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・国際基督教大学・東京理科大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
三井海洋開発の売上高は年度による上下変動が大きいものの2017年から増加傾向がみられる*1。営業利益は2019年から2021年にかけては営業損失が続いた*2が、2023年には過去最高となる純利益273億円まで急回復。
*1:当社の売上高が安定しない理由は、①海外売上高比率がほぼ100%故に為替変動の影響が大きい点、②FPSO建造工事の進捗成否で業績が変動する点、など。ただし、中長期的には大水深海域での石油・ガス開発の需要は拡大しており、売上高は増加傾向にある。
*2:2019年以降の営業損失はCOVID-19の感染拡大による操業混乱が主要因。閉鎖空間であるFPSO内部で感染者が発生して乗員数を削減、機器故障に対応しきれず操業停止などが相次いだ(参考リンク)。
✔セグメント別の状況
三井海洋開発は、建造工事(FPSOの設計・据付・試運転および包括的プロジェクトマネジメントなど)、オペレーション(FPSOによる石油・ガスの採掘・生産など)、の2事業を有する。
当社はFPSO建造工事が売上高の約69%を占めているが、自社で生産工場を持たず、実工事は造船会社へ外注している。当社のコア領域はプロジェクトマネジメントであり、客先・外注先との調整・交渉を進めながらFPSOの稼働開始までを一気通貫して支えている(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
三井海洋開発の純利益は2019年から2021年まで純損失が続いたが、2023年には136億円まで急回復*3。営業利益率は好調時でも5%~7%前後で推移しているが、不調時には▲8%ほどに低下する。
*3:2023年に純利益が急回復した理由は、①新規FPSOの竣工・チャーター開始による持分法投資利益・受取利息の増加、②建造工事の順調な進捗による損失最小化、③世界的な資源価格の高騰によるFPSO需要の回復、など。
✔自己資本比率と純資産
三井海洋開発の自己資本比率は2018年の44.5%をピークに減少が続いたが、2023年には25.5%となっている。2019年以降の業績悪化で財務体質が悪化したが、2022年からの黒字回復によって底打ちした。純資産も2021年まで減少が続いていたが、2023年には1,468億円まで回復。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
三井海洋開発の平均年収は850~950万円レベルで推移しており、業績による給与変動が大きい。国内勤務の場合は30歳前後で年収600万~700万円ほど、課長職レベルで年収1,100万~1,300万円が目安。海外赴任した場合には20代でも年収1,000万円を超える水準まで跳ね上がる特徴がある。
✔従業員数と勤続年数
三井海洋開発の従業員数は150~200人レベルで推移しており、極めて少数精鋭の組織。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は5,790人ほど、グループ全体で日本人従業員は10%未満というグローバル組織。平均勤続年数は6年~8年で推移しており、大手企業の標準的な水準を大きく下回る。
総合評価
企業格付け:A
浮体式海洋石油・ガス生産設備(FPSO)という極めてマニアックな業界において世界2強の一角を占める業界最大手(FPSOの詳細はこちらを参照)。日本国内にはライバル不在、世界的にも4社ほどしか存在しない希少業界の企業である。FPSOは深海に眠る原油・ガスを採掘できる唯一無二の装置であり、深海資源の探索技術の発展に伴って需要が堅調に伸びている業界(参考リンク)。業績においてはCOVID-19影響で2019年~2021年まで連続赤字に陥ったが、2022年からは回復傾向。2023年には売上高・営業利益いずれも過去最高にまで急増。FPSOの建造工事の順調な進捗に加えて、新規FPSOの竣工・チャーター開始による利益上積みが業績を下支えしている。大局的には、世界的な資源価格が高騰すると資源開発への投資が活性化するために当社もまたFPSOの受注を獲得しやすい構図がある。現在の中期経営計画においては、受注済のFPSOチャーターによって向こう10年以上に渡って安定的な収益を確保しつつ、建造中のプロジェクトを着実に遂行することで利益を上積みする想定(参考リンク)。
就職格付け:AA
三井グループの洋上プラント開発企業であり、海外売上高比率100%・日本人比率10%未満という超グローバル企業。一般知名度は皆無に等しいためネームバリューはないが、新卒採用の採用実績には東京大学・京都大学・一橋大学・東京工業大学など国内最高峰の大学が並び、就職人気は決して低くない。給与水準においては平均年収は850~950万円レベルと大手メーカー並みの水準だが、海外赴任をした場合には20代でも年収1,000万円を超える水準にまで跳ね上げるのが特徴的。国内勤務の場合は30歳前後で年収600万~700万円ほど、課長職レベルで年収1,100万~1,300万円が目安となるだろう。福利厚生においては、35歳まで住宅手当として3.5万円/月が支給される程度(実家暮らしでも支給される)。海外赴任で発展途上国へ赴きダイナミックに働いて大きく稼ぎたいのであれば有力候補となる反面、海外赴任先にはブラジル・セネガル・ガイアナなどが並ぶ他、危険地域も数多く含まれるため、中途半端な海外への興味関心レベルで目指すべきではない。社内公用語が英語であるため、業務遂行にあたっては英語・第三外国語によるコミュニケーション能力は必須である。現経営陣に当社プロパー入社組はおらず、全員が三井物産・三井住友銀行・三井E&S・商船三井などの出身であり、プロパー入社での出世には限界がある。