企業概要
三井倉庫ホールディングスは、三井グループに属する倉庫業・物流業・不動産業を主力とする大手物流会社。1909年に三井銀行倉庫部が分離独立して設立、1942年に現社名の三井倉庫へ社名変更。あらゆる物品を輸送・保管・荷役するトータルサプライチェーンサービスを提供する他、不動産事業ではオフィスビル・物流倉庫などを多数展開。かつて業界中位級であったが、積極的M&Aによる規模拡大で業界首位級まで急拡大。三洋電機ロジスティクスやソニーサプライチェーンソリューションズを買収している。
・三井銀行から分離独立した財閥系倉庫、積極M&Aで業界首位級へ躍進
・売上高・利益は過去最高圏、財務体質も自己資本比率41.7%まで回復
・総合職は30歳で年収580万円〜が目安、福利厚生はそこそこ
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用数は年間30名~60名ほど、うち10名ほどは地域職としての採用となっている。不人気傾向が強い物流業界の企業であるが、三井グループのブランド力もあって選考倍率は高め。
採用大学:【国公立】神戸大学・筑波大学・千葉大学・信州大学・静岡大学・岡山大学・福島大学・東京都立大学・兵庫県立大学など、【私立】関西大学・日本大学・近畿大学・獨協大学・國學院大學・東京女子大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
三井倉庫ホールディングスの売上高は2021年に過去最高となる3,010億円に到達して業界首位級に躍進*1したが、2023年は2,605億円に後退*2。営業利益も2021年・2022年に過去最高となる259億円に到達したが、2023年は207億円に後退。
*1:当社は2010年頃まで売上高1,000億円規模に過ぎなかったが、2010年代に積極的M&Aで事業規模を拡大。三洋電機やソニーの物流子会社を取り込み、業界首位の三菱倉庫に並ぶ規模に拡大を遂げた。
*2:2021年・2022年はCOVID-19影響による世界的なサプライチェーン混乱により製品貯蔵の需要が急増した他、海上運賃・航空運賃の高騰により増収増益。2023年は混乱一服によって特需が剥落した。
✔セグメント別の状況
三井倉庫ホールディングスは、物流事業(倉庫保管・荷役、港湾運送、国際運送、複合一貫輸送、サプライチェーンマネジメント支援など)、不動産事業(オフィスビル賃貸など)、の2事業を有する。
当社は売上高の約96%を物流事業で稼ぐが、利益においては不動産事業が約23%を支えている。不動産事業は三井倉庫ホールディングス直轄事業であり、物流事業は三井倉庫・三井倉庫エクスプレス・三井倉庫ロジスティクスなどの中核子会社が担う組織構造となっている。
✔最終利益と利益率
三井倉庫ホールディングスの純利益は2016年に純損失234億円に転落*3したが、同年以降は成長基調へと回帰。営業利益率も増加傾向にあり、直近3年間は7%~8%台と物流業としては高めの水準に到達。
*3:当社は2010年代に積極的M&Aを展開したが、過度な拡大戦略が失速。2016年に買収子会社の減損処理で209億円、物流倉庫資産で46億円の減損損失を計上(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
三井倉庫ホールディングスの自己資本比率は2018年まで20%以下の低水準にあったが、同年からは急速な増加傾向。2023年には41.7%と良好な水準に到達。純資産は2020年から急速な増加傾向、2023年には1,208億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
三井倉庫ホールディングスの平均年収は直近で790万円となっているが、これは持株会社の245名のみの平均年収。総合職の場合は30歳で年収580万~680万円ほど、課長職レベルで年収930万~1,030万円が目安。物流業・倉庫業としては、かなりの高水準。
✔従業員数と勤続年数
三井倉庫ホールディングスの単体従業員数は2021年から増加傾向が続いており、2023年には245人に到達。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7,880人であり、従業員の殆どは事業会社に属している。平均勤続年数は直近でも11.9年と、大企業の標準的な水準を下回る。
総合評価
企業格付け:BB
三菱倉庫・住友倉庫と共に倉庫業界のリーディングカンパニーとして知られ、2010年代以降の積極的M&Aにより僅か10年で業界首位の三菱倉庫に匹敵する企業規模まで拡大を遂げた企業。業績は売上高・利益いずれも増加傾向にあり、2021年・2022年にはCOVID-19影響によるサプライチェーン混乱で過去最高となる売上高・利益を記録した。2023年は混乱一服によって業績はやや後退したが、これは一過性の特需が剥落しただけであり中長期的な成長は維持できているとみられる。財務体質においては、過去数年間の業績好調を追い風に自己資本比率41.7%(2023年)と良好な水準に到達。過去の積極M&Aでの資金調達と2016年の減損処理によって低迷していた財務体質の健全化に成功している。当社は物流事業で利益の大半を稼いでいるため、不動産事業で大きく稼いでいる三菱倉庫よりも物流事業の利益創出力が大きい。しかしながら、景気後退局面では三菱倉庫の不動産事業の"安定的に稼ぐ力"に大きく差を付けられるリスクもあるだろう。
就職格付け:BB
三井グループの物流会社にして財閥系倉庫会社の一角。完全子会社の三井倉庫エクスプレスをトヨタ自動車との合弁会社として設立した歴史的経緯もあり、現社長はトヨタ自動車の出身。ソニーの物流子会社を買収した経緯からソニーグループとも縁が深い。給与水準は平均年収790万円(2023年)と、三菱倉庫の平均年収800万円弱に近いようにも思われるが、こちらは持株会社の従業員245名のみの平均年収である点には注意が必要。とはいえ物流業界としてはトップクラスの給与水準には変わりなく、持株会社で採用された総合職の場合は30歳で年収580万~680万円ほど、課長職レベルで年収930万~1,030万円が目安となるだろう。福利厚生は独身寮・家賃補助制度などは一通り整備されている。三井倉庫ホールディングスで採用された場合には事業会社に出向という形がとられ、再び持株会社に戻る場合には出向解除という形で人事配置が行われる。