企業概要
ロームは、LSI・トランジスタ・ダイオード・LED・抵抗器などを製造販売する電子部品メーカー。1954年に佐藤研一郎が炭素被膜固定抵抗器の製造を目的に創業した東洋電具製作所を源流とし、1979年に現社名のロームへと社名変更。カスタムLSIと呼ばれる大規模集積回路においては日系最大手の一角であり、パワー半導体でも世界上位10社に数えられる。消費者に行き渡る最終製品は手掛けておらず、製品内部へと組み込まれる電子部品に特化。回路設計から製造に至るまでをすべて自社内で完結させる垂直統合型生産体制に強みを有し、シリコンインゴットから最終製品の出荷までの全プロセスに知見。
・カスタムLSIに強い大手半導体・電子部品メーカー、東芝買収にも出資
・売上高・利益は2022年をピークに後退、財務体質はかなり優良
・平均年収879万円だが業績による浮き沈みがある、福利厚生もかなり手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用人数は年間160人~190人と多めだが、電子メーカー業界上位企業だけあって倍率は低くない。伝統的な京都企業だけあって関西圏の出身者が多い。歴史的経緯から同志社大学と親密な関係。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・神戸大学・広島大学・金沢大学・静岡大学・岡山大学・京都工芸繊維大学・奈良先端科学技術大学院大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・同志社大学・明治大学・関西学院大学・立命館大学・名城大学・関西外国語大学・神戸女学院大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
ロームの売上高は年度による増減が大きい推移となっている。2022年には過去最高となる売上高5,078億円に到達*1したが、同年以降は売上高の微減傾向が続いている。営業利益も2022年に過去最高となる923億円まで上振れたが、2024年には▲400億円に赤字転落。
*1:2022年に売上高・利益が急伸した理由は、①世界的な景気回復と半導体不足による市況高騰、②電気自動車・産業機器向けの半導体需要の増加、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:2024年に営業赤字に転落した理由は、①世界的な景気減速による自動車・産業機器向けの半導体需要の減退、②生産量の急減速を受けた稼働率低下によるコスト増加、③研究開発費の増加、など。
✔セグメント別の状況
ロームは、LSI事業(アナログ・ロジック・メモリの製造販売)、半導体素子事業(トランジスタ・ダイオード・パワーデバイス・発光ダイオード・半導体レーザーの製造販売)、モジュール事業(プリントヘッド・オプティカルモジュールの製造販売)、その他事業(抵抗器の製造販売)、の4事業を有する。
当社はLSI事業と半導体素子事業が売上高の大半を占める構造となっている。LSI事業では電気自動車向け・データセンター向けが主力であり、半導体素子事業では電気自動車インバータ・省エネ家電向けパワーデバイスが主力である。売上高の約62%が電気自動車・産業機器分野であるため、同分野の市場拡大が業績を左右する。2024年はLSI事業・半導体素子事業いずれも赤字転落しており、利益がでていない。
✔最終利益と利益率
ロームの純利益は2022年に過去最高となる803億円に到達したが、同年以降は減少傾向。2024年には純利益▲500億円に赤字転落している。営業利益率は好調時こそ18%まで増加する一方、不調期には▲8%まで低下するなど浮き沈みが激しい推移となっている。
✔自己資本比率と純資産
ロームの自己資本比率は2022年までは80%以上の超高水準が続いていたが、2023年・2024年は低下傾向。2024年は自己資本比率61.7%となっているが、依然として財務体質は極めて健全といえよう*3。純資産は2023年に9,681億円に到達したが、2024年には8,896億円にやや後退。
*3:2023年から自己資本比率が低下した理由は、日本産業パートナーズによる東芝買収に際して総額3,000億円を出資するために、有利子負債による資金調達を進めた点にある(参考リンク)。かつての当社は無借金経営で知られたが、東芝買収に際しては方針を転換している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ロームの平均年収は平均年収879万円(2023年)と電子部品メーカーとしては上位クラスの待遇。2020年までは平均年収700万円前後で安定していたが、2021年から業績好調によって平均年収が上昇傾向。大卒総合職の場合、30歳で年収650万~750万円ほど、課長職レベルで年収980万~1,200万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
ロームの単体従業員数は2019年から増加傾向にあり、2023年には3,902人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.33万人ほど。平均勤続年数は14.8年(2023年)と大手メーカー同格ないし僅かに短い程度。
総合評価
企業格付け:BBB
日系半導体メーカーとしては業界5位の位置づけであるが、カスタムLSI(大規模集積回路)においては最大手の一角。自動車メーカーや家電メーカー。業績においては2022年まで売上高・利益いずれも絶好調であったが、同年以降は減少傾向に苦しむ。世界的な電気自動車シフトを発端とする車載向け電子部品の需要急拡大を追い風に業績を伸したが、2023年・2024年には自動車業界の拡大一服によって需要減退に直面。2024年には営業赤字▲400億円・純損失▲500億円と、かなりの痛手を被っている。財務体質においても、かつては自己資本比率80%以上&無借金経営として知られたが、現在では自己資本比率61.7%(2024年)かつ有利子負債4,000億円(2024年)を抱えている。これは日本産業パートナーズによる東芝買収に際して3,000億円の出資をするために、有利子負債による資金調達を進めたことに原因がある。
就職格付け:BB
消費者向けの最終製品を手掛けないBtoB企業でありながら、京都所在の大手企業として著名。2011年には京都府左京区のコンサートホール京都会館に対して50年契約のネーミングライツを取得。ロームシアター京都と命名して改修費用を支援するなど社会的影響力も。給与水準においては平均年収879万円と、半導体・電子部品業界としては上位級の待遇。実際には、総合職・30歳で年収650万~750万円ほど、課長職レベルで年収980万~1,200万円が目安となるだろう。ただし、最近における平均年収の上昇は業績好調によるものであるため、業績悪化が進んでいる2024年以降については未知数。福利厚生においては大手メーカーなりであり、家賃補助制度では4万円/月ほどが支援される。独身寮・社宅を保有していないが、家賃補助制度は自分で物件を自由に選べるメリットもあるため好みは分かれる。本社には福利厚生の専用棟が用意されており、食堂には企業内出店のマクドナルドが入居する他、フィットネスルームなども充実。主力拠点は京都・宮城・静岡・岡山・福岡・宮崎など全国に分散している為、転勤には注意しておきたい。