企業概要
ルネサスエレクトロニクスは、車載半導体・車載センサリングシステム・車載情報機器などを展開とする半導体メーカー。2002年に日立製作所・三菱電機からシステムLSI部門が分離して設立、2010年にはNECエレクトロニクスと合併。車載半導体で世界3位のシェアを握る他、日系半導体メーカーではキオクシアに次ぐ売上規模。CPUやメモリなどが集積された半導体であるマイクロコントローラを得意とする。2010年代以降は車載以外の半導体製品を拡充、現在では非車載分野が売上・利益のコアにまで成長。
・マイコン分野に強い日系半導体メーカー、車載半導体では世界シェア3位の大手
・売上高・利益は2020年から急改善して業績好調、財務体質も改善
・平均年収889万円だがボーナス比率が高め、平均年齢48.2歳で中高年多い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:66(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
昨今の業績好転によって採用強化しており、総合職の採用数は年間100人~160人ほど。かつて業績悪化に苦しんだ時期のイメージは今なお強く、極端な高倍率にはなりにくい。
採用大学:【国公立】大阪大学・九州大学・神戸大学・広島大学・千葉大学・埼玉大学・愛媛大学・電気通信大学・豊橋技術科学大学など、【私立】早稲田大学・明治大学・中央大学・立命館大学・法政大学・東京理科大学・東京電機大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
ルネサスエレクトロニクスの売上高は2020年まで7,000億円レベルで推移してきたが、同年以降は急増傾向。2022年には過去最高となる売上高1.5兆円に到達*1。営業利益は年度により好不調が極端に分かれており、2019年には68億円に留まった一方で、2022年は4,241億円まで爆発的に増加。
*1:2022年に売上高が急増した理由は、①半導体不足の深刻化による車載半導体の価格上昇、②産業・インフラ・IoT用途の半導体需要の活況、③為替レートの円安推移による為替効果、④2021年に買収した英ダイアログ社の売上高の加算。
✔セグメント別の状況
ルネサスエレクトロニクスは、自動車事業(車載半導体・車載センサリングシステム・車載情報機器、車載向けSoC・アナログ半導体など)、産業・インフラ・IoT事業(業務用無線・業務用オーディオ機器・など)、メディアサービス事業(マイクロコントローラ・SoC・アナログ半導体など)、その他事業(半導体の受託開発・受託生産)、の3事業を有する。
当社は車載半導体分野で発展した企業であるが、2010年以降に非車載分野を開拓。現在では産業機器・家電・IT機器向けの半導体で成功を収めたことで、売上高・利益の約半分が非車載分野となった。かつての当社とは異なり、自動車業界に過度に依存しない事業ポートフォリオへと変貌している。
✔最終利益と利益率
ルネサスエレクトロニクスの純利益は年度により好不調が極端に分かれており、直近の2023年は過去最高となる純利益3,370億円に急増。営業利益率は極端なまでに不安定であるが、これは半導体業界においては珍しくはない。不調時は1%未満になるが、好調時には28%とかなりの高水準にまで到達する。
✔自己資本比率と純資産
ルネサスエレクトロニクスの自己資本比率は上下変動の波が激しいが、直近では63.2%とかなり高めの水準*2。純資産は2020年から劇的に増加しており、直近では2兆円を超えるまで到達。
*2:当社は経営不振期の2010年代前半には財務体質がかなり悪化しており、2012年は自己資本比率10%という危機的な水準にあった。10年間で財務体質は劇的に改善したと言える。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ルネサスエレクトロニクスは業績によるボーナス変動が激しく、平均年収は760万~880万円のレンジで推移している。総合職であれば30歳で年収600万~700万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,150万円に達する。ただし、従業員の平均年齢が48.2歳と高齢化が進んでいるため、社員の平均年収が高くでやすい点には注意。
✔従業員数と勤続年数
ルネサスエレクトロニクスの単体従業員数は2019年まで増加傾向にあったが、同年以降は横ばいが続いている。平均勤続年数は直近で23.2年と大手メーカーとしてもかなり長めの勤続年数にあるが、これは従業員の高齢化が進んでいる影響でもある。
総合評価
企業格付け:B
2010年代までは経営不振が続いており「失敗企業」の代表格であったが、2020年代においては見事な蘇生を遂げて生まれ変わった半導体メーカー。2000年代から2010年頃までは毎年1,000億円以上の赤字を計上。2013年には産業革新機構の傘下入りという体たらくであったが、車載向け半導体以外の分野への積極進出により事業ポートフォリオは激変。現在では脱・自動車業界依存を果たしており、産業機器・家電・IT機器向けの汎用半導体でも一定の存在感を放っている。業績は絶好調であり、直近では営業利益率26.5%とかなりの高収益体質へ激変。半導体は浮き沈みが激しい業界であるため目先の業績好調だけで浮かれることはできないが、最近の業績好調で財務体質は大きく改善。万が一、近い未来に半導体不況が到来しても一旦は耐え凌げる体制は整いつつあると評価できるだろう。
就職格付け:CCC
日本を代表する半導体メーカーの1社。かつて深刻な経営不振で世間に知られた企業であるため世間体は決して良くないが、当時と今では既に別企業と言ってよいほど業績は激変している。給与水準は平均年収889万円と大手電機メーカーに勝るとも劣らないが、ボーナス比率が高い為に業績悪化時には平均年収700万円台に後退する点には注意。また、従業員の平均年齢48.2歳(2023年)とかなり高齢化が進んでいるため、見た目の平均年収よりは若手社員の給与水準はそれほど高くはない点にも注意が必要。実際には、総合職の30歳で年収600万~700万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,150万円が目安となるだろう。福利厚生は業績不振期に廃止が相次いだままの状態であるため社宅・寮といった類の支援はなく、家賃補助が一定額ある程度。強いて言えば、半導体メーカーの歴史は業績好調と業績悪化の繰り返しである為、業界特有である業績の好不調の繰り返しには理解が必要。2012年ごろには業績不振が長期化した厳しい時代を経験しており、当時は工場閉鎖や従業員数削減など暗いニュースが世間に知られていた(参考リンク)。必ずしも半導体市況が右肩上がりで改善し続けるものでもないことは理解しておきたい。