企業概要
マブチモーターは、自動車・家電・事務用機器向け小型直流モータの製造・販売を主力とする電機メーカー。1954年に馬渕健一がマグネットモータの量産化を目指して東京都・葛飾区で創業。創業直後は模型飛行機用モータが中心であったが、1960年代には家電向けモータにも進出して成長。1980年代には自動車・工具・映像機器向けモータへと事業領域を拡大。現在では小型モータにおける世界大手の一角であり、自動車のドアミラー・ドアロック用モータでは世界シェア70%以上。
・自動車向けに強い小型直流モータメーカー、海外売上高比率90%
・売上高・利益いずれも回復傾向へと転換、財務体質は極端なほどに健全
・平均年収721万円で休日日数が多い、平均勤続年数は18.0年と良好
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:62(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間15名~30名ほど、企業規模の割にはかなり少ない。一般知名度は極めて低い企業であるが、採用枠そのものが少ないために入社難易度は高い。
採用大学:【国公立】北海道大学・横浜国立大学・千葉大学・金沢大学・埼玉大学・大阪公立大学・電気通信大学・長岡技術科学大学など、【私立】早稲田大学・上智大学・明治大学・立教大学・日本大学・成城大学・東京電機大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
マブチモーターの売上高は2020年まで減少傾向が続いていたが、同年以降は増加傾向へと転換*1。2024年には過去最高となる売上高1,962億円に到達している*2。営業利益は2022年まで減少傾向が続いているが、2024年には216億円まで回復。
*1:2017年から業績不振に陥っていた理由は、①米中貿易摩擦・COVID-19による販売数量の減少、②原材料価格上昇・操業度低下によるコスト増加、③メキシコ・ポーランドでの新工場稼働開始に伴う費用増加、など。
*2:2021年から業績回復した理由は、①主要顧客の自動車メーカーの増産、②理美容向け・医療向け製品のプロダクトミックス変化、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
マブチモーターは、日本事業(日本国内における小型モータの製造販売)、アジア事業(中国・香港・韓国・台湾・シンガポール・ベトナム・タイなど)、アメリカ事業(アメリカ・メキシコ)、欧州事業(ドイツ・ポーランド・スイスなど)、の4事業を有する。
当社は海外売上高比率が約90%にも達する超グローバル企業であり、海外における事業規模が非常に大きいことが特徴。自動車用途向け小型モータが売上高に占める割合が約77%にも達しており、自動車業界の好不調に業績を左右されやすい事情もある。
✔最終利益と利益率
マブチモーターの純利益は2020年まで減少傾向であったが、同年以降は増益傾向に転換。2023年には純利益194億円まで回復を遂げた。営業利益率は2016年頃には17%と高水準であったが同年以降は減少、2024年は11%となっている*3。
*3:当社は1954年の創立から連続70年間に渡って営業利益を確保し続けている。事業環境によって利益率は変動するものの、黒字体質を長年に渡って堅実に維持してきた歴史がある。
✔自己資本比率と純資産
マブチモーターの自己資本比率は長期的に90%前後の超高水準で安定しており、財務基盤は極端なまでに健全な無借金経営を貫いている*4。純資産は2020年まで2,400億円レベルで横ばいであったが、同年以降は増加傾向にある。
*4:当社は社是として無借金経営を志向しており、負債拡大を極端なほど回避する傾向がある。いかなる事業環境であっても従業員の雇用・顧客への供給・株主への配当を維持するための財務基盤を構築することを最優先としている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
マブチモーターの平均年収は2020年から2023年は680万円前後に後退したが、2024年には721万円まで上振れしている。総合職の場合、30歳で年収520万〜590万円、課長職レベルで年収850万~920万円ほどが目安となる。平均年齢は44.6歳と大手企業の標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
マブチモーターの単体従業員数は2023年まで820人~840人ほどで推移していたが、2024年は896人にやや増加。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.80万人ほど。平均勤続年数は17年~19年ほどの高水準で安定しており、従業員の定着は良い。
総合評価
企業格付け:B
■業績動向
減益傾向から脱出に成功。米中貿易摩擦・COVID-19の逆風によって2017年頃から減収・減益が続いていたが、2021年に至って反転に成功。主要顧客である自動車メーカーは今なおサプライチェーン混乱に苦心しているが、為替レートの円安推移によって当社の業績は追い風を享受。生産全盛期の売上高・利益には今なお届かないが、まずは業績好転を祝するフェーズか。
■財務体質
最高峰。社是として無借金経営に強くこだわっているだけあり、自己資本比率は90%以上という圧巻の水準。ここまで健全でなくとも「従業員の雇用・顧客への供給・株主への配当を維持」することは可能ではあるのだが、もはや手段と目的が逆転している程の健全ぶりである。創業以来70年に渡って営業黒字を確保し続けてきた安定性も考えれば、倒産リスクとはまったく無縁レベルである。
■ビジネス動向
経営理念「国際社会への貢献とその継続的拡大」を固守。海外展開の目的が「事業成長」ではなく「進出国との共存共栄・社会貢献」という珍しい企業であり、1960年代から社是として海外展開を推進してきた。2016年にメキシコ工場、2020年にポーランド工場を稼働開始させており、国際分業体制の確立による競争力拡大を更に推進。
就職格付け:B
■給与水準
平均年収721万円(2024年)と中堅メーカーとしては恵まれた水準。2018年頃までは730万円前後であったが、業績後退によって給与水準もやや減。とはいえ、総合職ならば30歳で520万〜590万円となり、課長職レベルで年収850万~920万円ほどには達する。平均年齢44.9歳と年齢構成もやや高めであるため、そこも割り引いてみておく必要があろう。
■福利厚生
まずまず。家賃補助制度はないが、若手社員のうちは独身寮に格安で入居できる。また、本社が千葉県松戸市で家賃相場も安いため不満も少ない。社員食堂は300円~500円の格安価格で提供されており昼食代負担も重くない。年間休日127日と休みが多いうえ、リフレッシュウィーク休暇によって5日連続の有休取得が年1回可能。副業可。
■キャリア
事務職・技術職の2職種制。国内拠点は本社のみであるため、転勤リスクとは無縁。海外売上高比率90%かつ生産拠点はすべて海外に集中しているため、海外赴任・海外出張のチャンスは豊富。年功序列とは無縁であり、最速出世組は20代で管理職・30代で部長級・40代で役員にまで昇格する。