企業概要
バルミューダは、キッチン家電・空調機器・照明機器などを製造販売する電機メーカー。元シンガーソングライターの寺尾玄が2003年にデザイン会社として創業、2010年にはDCモーター扇風機がヒットしたことで業態を転換。2015年にはキッチン家電に進出してトースター・電子レンジを立て続けにヒットさせた。自社工場を持たないファブレスメーカーであり、マーケティング・デザインに特化した組織体制で他社との差別化を図る。2021年に京セラとの共同開発体制でスマートフォン事業に参入するも2023年に撤退。
・独特の世界観・優れたデザインで熱心なファンを抱える新興の家電メーカー
・売上高・利益は2021年まで急成長が続いたが、2022年以降は急失速
・平均年収770万円だが福利厚生は弱め、独自の世界観が魅力
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:59(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の新卒採用はなく、入社方法は中途採用のみ。前職で役立つスキルを習得したうえで応募する他ない。採用数も非公開(従業員数160名規模であるため門戸は狭いと推定される)。
採用大学:非公開(出典:バルミューダ採用情報)
業績動向
✔売上高と営業利益
バルミューダの売上高は2021年に過去最高となる183億円に到達したが、同年以降は減少傾向に転換。2024年には売上高124億円に縮小している*1。営業利益は2021年まで10億~16億円レベルで推移していたが、同年以降は急激な減少に見舞われている*2(2017年以前は非公開)。
*1:2021年から売上高が減少した理由は、①2021年に発売位下スマートフォン『バルミューダフォン』が短命に終了した点(参考リンク)、②主力製品である空調・キッチン製品の販売縮小、が主要因。
*2:2022年から営業利益が縮小した理由は、為替レートの記録的な円安推移が原因。当社の生産工場は海外のみであるため、為替レートが円安に振れると仕入れコストが急増する構造となっている。
✔セグメント別の状況
バルミューダは、空調関連事業(空気清浄機・扇風機・加湿器など)、キッチン関連事業(電子レンジ・トースター・炊飯器・コーヒーメーカーなど)、携帯端末関連事業(バルミューダフォン)、その他事業(掃除機・照明・スピーカーなど)、の4事業を有する。
当社は多種多様な家電製品を展開しているが、キッチン関連機器が売上高の約76%を占める稼ぎ頭となっている。新興メーカーでありながら海外進出も進んでおり、韓国市場は売上高の約18%を占める。かつては携帯端末関連事業も展開したが、2023年に事業撤退している(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
バルミューダの純利益は2021年には過去最高となる純利益10億円を記録したが、同年以降は低迷傾向。2023年には純損失▲20.7億円に転落している*3。営業利益率は好調時には10%~15%に達しており良好な水準だが、不調時には赤字圏まで低下する*4。
*3:2023年に純損失に転落した理由は、①携帯端末関連事業からの撤退に伴う特別損失の計上、②為替レートの円安推移による仕入れコストの上昇、③旧型製品の在庫処分に伴う値引き拡大、など。
*4:当社は自社工場を持たないファブレスメーカーであるため、固定費負担が軽く利益率を高めやすい。反面、海外工場に生産を依存するため、為替に業績を左右される。
✔自己資本比率と純資産
バルミューダの自己資本比率は右肩上がりで急増しており、2024年には70.4%と極めて健全な水準にある(2017年以前は非公開)。直近数年は業績不振であるが、余裕で耐え凌げるだけの財務基盤は確保されている。純資産は2022年に63.1億円まで到達したが、2024年には43.4億円まで後退している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
バルミューダの平均年収は2021年のみ922万円まで急増したが、同年を除けば720万~770万円ほどで推移している(2017年以前は非公開)。業績賞与によって年収が左右されやすい傾向がみられる。大卒総合職は30歳で年収550万~650万円、課長職レベルで年収800万~900万円ほどが目安となる。
✔従業員数と勤続年数
バルミューダの単体従業員数は2022年まで増加傾向にあったが、同年以降は縮小傾向。2024年は100名と極めて少数精鋭の組織規模となっている(2017年以前は非公開)。平均勤続年数は直近で4.1年と短いが、過去8年間で社員数を大幅に増やしているため低いのは仕方がない。
総合評価
企業格付け:CC
創業者である寺尾玄の世界観を色濃く表現した家電メーカーであり、過去10年間で急成長を遂げた企業としても著名。ビジネスモデルは洗練されており、①シンプルながら優れたデザインによる独特の価値観・価値を訴求、②自社工場を持たないファブレス化による高い利益率、③モデルチェンジ頻度を少なくして1製品を長く販売することでコストを抑える…など枚挙に暇がない。業績においては2021年まで右肩上がりの急成長が続いていたが、2022年以降は為替レートが円安に振れたことで利益率が低迷。また2021年に発売したバルミューダフォンの失敗によりブランドイメージを毀損したことも痛手となった。他方で、過去8年間で稼いだ利益によって財務基盤は大いに健全化しており、多少の業績悪化であれば耐え凌げるだけの財務基盤は確立されているのは安心感であろう。最近では韓国市場において勢いがあり、日本市場が失速した2022年においても韓国市場では増収が続いていた。今までも経営危機を乗り越えて成長してきた企業であるため、今回の逆風も乗り越えられるものと期待したい。強いて言えば、企業規模は知名度の割に極めて小さく、売上高100億円ほどに過ぎないのは意外である。
就職格付け:CC
大手家電メーカーとはまったく違う世界観の製品ラインナップを有しており、熱心なファンを多数抱えていることでも著名。2022年にはバルミューダフォンが市場に受け入れられず辛辣なレビューで溢れかえったことで悪い意味で知名度が上がってしまったが、元々はお洒落な家電メーカーとして唯一無二の業界ポジションを確立していた。給与水準においては平均年収720万~770万円ほどで推移しているが、業績好調だと920万円を超えることもある。大卒総合職は30歳で年収550万~650万円、課長職レベルで年収800万~900万円ほどが目安となるだろう。ただし、各職種にみなし残業44時間/月もしくは裁量労働制を採用しているため、残業を多く重ねても給与がこれ以上に増えることは期待しにくい。福利厚生においては、新興メーカーゆえ充実しておらず、独身寮・家賃補助制度・退職金制度はない。交通費は支給されるが最大5万円/月の制約がある。が、そもそも従業員数が100人規模のベンチャー企業であるため、高い給与や福利厚生を期待して目指す会社ではない。仕事を通して成し遂げたい夢・理想、そしてキャリアビジョンがしっかり合致する場合にこそ目指すべき会社であろう。