企業概要
オムロンは、制御機器・産業用ロボット・医療機器・電子部品などを主力とする大手電子部品・電機メーカー。1933年に立石一馬がレントゲン写真撮影用タイマーの製造を目的に創業。戦時中には日本企業として初めてマイクロスイッチの国産化に成功、制御機器の先駆者としての土台を築いた。1960年代には交通システム・医療機器・電子計算機など事業多角化を加速。1967年には世界初の定期券・普通券を両用できる無人改札システムの実用化に成功。1990年には立石電機から現社名へと社名変更。現在ではリレーで世界シェアの約20%を掌握する他、制御機器・駅システム・電子血圧計などでも国内シェア上位。
・制御機器を祖業とする電機メーカー、医療機器・電子部品も展開
・売上高・利益は2022年をピークにやや後退気味、財務体質はかなり良好
・平均年収873万円と電機メーカー上位級、福利厚生はそこそこ
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用人数は年間100人~180人と多めだが、電子メーカー業界上位企業だけあって倍率は決して低くはない。伝統的な京都企業だけあって関西圏の出身者が多い。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・神戸大学・九州大学・広島大学・熊本大学・岐阜大学・山形大学・東京都立大学・京都工芸繊維大学・神戸市外国語大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・関西学院大学・近畿大学・東洋大学・拓殖大学・玉川大学・京都産業大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
オムロンの売上高は2022年に過去最高となる8,760億円に到達*1したが、2024年には8,017億円に後退。営業利益は2019年までは550億~1,000億円で推移していたが、2023年には343億円に急減*2。
*1:2021年~2022年の業績好調は制御機器が主力のIAB事業の好調が理由。人手不足への投資好況を追い風にi-Automation!ブランドでの自動化・高度協調のソリューションがヒット(参考リンク)。
*2:2023年に営業利益が急減した理由は、世界的な製造業の設備投資の減速による制御機器の販売不振。主要顧客の設備投資の手控えによって急減益に見舞われた経緯がある(参考リンク)
✔セグメント別の状況
オムロンは、IAB事業(制御機器:プログラマブルコントローラ・モーション機器・センサ・産業用カメラ・産業用ロボットなど)、HCB事業(ヘルスケア:血圧計・心電計・酸素発生機・体組成計・血糖計など)、SSB事業(社会システム:駅務システム・道路管理システム・カード決済・IoT装置など)、DMB事業(電子部品:リレー・コネクタ・スイッチ・汎用センサなど)、DSB事業(データソリューション・カーボンニュートラル製品など)、の5事業を有する。
世間一般において当社は医療機器メーカーとして広く知られた企業であるが、売上高・利益において最大比率を誇るのはIAB事業(制御機器分野)である。IAB事業が売上高の約45%・利益の約49%を稼いでおり、同事業の潤沢な利益によって事業多角化を進めてきた歴史がある。
✔最終利益と利益率
オムロンの純利益は長年に渡って400億~750億円レベルで安定的に推移してきたが、2023年に81億円まで急減している*3。営業利益率も2022年まで8%~11%と優良な水準にあったが、2023年以降は急減。
*3:当社にとっての主力事業にあたるIAB事業が顧客企業の設備投資に依存するため、顧客企業の設備投資が縮小すると当社業績も落ち込みやすい傾向が伺える。
✔自己資本比率と純資産
オムロンの自己資本比率は2022年まで70%台で推移していたが、2024年には56.7%まで減少している。とはいえ、今なお大手メーカーとしては高めの水準にあり、依然として負債に依存しすぎない事業運営ができている*4。純資産は2023年に9,509億円に到達している。
*4:かつての当社は負債に依存しない経営を強く志向していたが、2025年には約47年ぶりに総額400億円の無担保社債を発行(参考リンク)。資金調達の手段を多様化させる方針にシフトしている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
オムロンの平均年収は873万円(2023年)となっており、大手電機メーカーに匹敵する給与水準を誇っている。大卒総合職は30歳で年収550万~650万円ほど、課長職レベルで年収1,000万~1,150万円が目安。平均年齢は45歳(2023年)となっており、大手企業の標準的な水準をやや上回る。
✔従業員数と勤続年数
オムロンの単体従業員数は2019年に4,980人に到達したが、同年をピークにやや減少傾向がみられる。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.84万人ほど。平均勤続年数は16.1年(2023年)と大手企業の標準的な水準を僅かに上回る。
総合評価
企業格付け:BB
京都発祥の大手電機メーカーとして、関西圏においては著名な存在。BtoB分野・BtoC分野いずれも幅広く展開しているが、世間一般においては医療機器メーカーとして認知されることが多いが、最大の稼ぎ頭となっているのは製造業向けの制御機器分野である。業績においては2022年に過去最高となる売上高・利益を記録したが、同年以降はピークアウト気味。主要顧客の設備投資の手控えによって稼ぎ頭の制御機器の販売が落ち込んだことで、営業利益・純利益は低迷を強いられている状況。財務体質においては自己資本比率56.7%(2024年)と高めの水準にあり、負債への依存度は低い。2024年には約47年ぶりに社債を発行したが、これは資金調達の多様化が主目的であり、特段の問題が発生しているわけではない。
就職格付け:BB
かつて「立石電機」の名前で知られた制御機器メーカーであり、制御機器分野では国内シェアの約40%を掌握する業界大手。給与水準においては平均年収873万円(2023年)と、大手電機メーカーにも見劣りしない水準。大卒総合職の場合、30歳で年収550万~650万円ほど、課長職レベルで年収1,000万~1,150万円が目安となるだろう。福利厚生においては企業規模なりの制度が整っており、住宅補助・家族手当などが揃う。その他の制度としては、①週あたり勤務日数を3日~4日に削減できる短日勤務制度、②本業以外での価値創造・キャリア形成を認める副業制度、③独立開業を目指す社員に支援金を支払うネクストチャレンジ制度、などがある。ただし、2023年には国内外において連結従業員数の約7%に相当する従業員数2,000人の削減を決定しており、目先の業績悪化を受けた人員削減の動向には注目しておきたい(参考リンク)。