企業概要
イオンは、総合スーパー・ドラッグストア・商業施設・総合金融などを事業とする大手小売流通業者。江戸時代から呉服屋を経営していた四日市岡田家が1926年に株式会社化した岡田屋呉服店を源流とし、1950年代にスーパーマーケットへ業態転換。1960年代から数々の同業他社を吸収合併して規模を拡大、2000代以降にはダイエー・マイカルなどの業界大手も傘下に収めて巨大グループとなった。現在では売上高9兆円を超え、連結従業員数11万人以上。セブン&アイに並ぶ、日本屈指の大手小売流通業者である。
・売上高10兆円を超える巨大小売流通グループ、三重県発祥・千葉県本社
・売上高は増加傾向だが利益は横ばい、財務体質は健全で問題なし
・総合職30歳で年収450万~550万円ほど、地域社員は地方・共働き夫婦に推奨
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:58(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:易しい
グループ合計の採用数は年間3,400人以上と、日本企業として最多となる超大量採用。新卒・中途採用いずれも募集は多く、アルバイトからの正社員登用も。有名企業を目指したい場合はかなりの狙い目。
採用大学:非公開(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
イオンの売上高は2021年まで8兆円レベルで推移していたが、同年以降は緩やかな増加傾向。2024年には過去最高となる売上高10.1兆円に到達*1。営業利益は2020年に1,505億円に減少したが、同年以降は増加傾向。2023年には過去最高となる営業利益2,508億円に到達している。
*1:2021年から売上高が増加している理由は、①コクミン・ふく薬品・フレンチなどの同業他社の買収、②子会社であるウェルシアの急成長、③物価上昇による販売商品の値上げによる客単価の上昇、など。
*2:2020年に営業利益が減少した理由は、①COVID-19感染拡大期における外出自粛による買い物控え、②COVID-19感染拡大による景気後退を受けた消費意欲の低下、③COVID-19休業期間中のテナント賃料減免による収入減少、など(参考リンク)。
✔セグメント別の状況
イオンは、GMS事業(総合スーパー・惣菜店など)、SM事業(スーパーマーケット・コンビニ)、DS事業(ディスカウントストア)、ヘルス&ウェルネス事業(ドラッグストア・調剤薬局)、総合金融事業(イオン銀行・クレジットカード・保険業など)、デベロッパー事業(ショッピングモール開発・賃貸)、サービス・専門店事業(外食店・専門衣料店・ゲームセンターなど)、国際事業(中国・アジア地域)、その他事業、の9事業を有する。
当社はGMS事業・SM事業によって売上高の約65%を占める反面、利益においては総合金融事業・デベロッパー事業だけで約47%を占める構造。GMS事業・SM事業によって事業規模を拡大しつつ、金融・不動産領域において利益を稼ぐビジネスモデルである。
✔最終利益と利益率
イオンの純利益は2020年に▲710億円に転落*3したが、同年を除けば210億~440億円ほどの水準で安定的に推移している。営業利益率は長期的に2%ほどで推移しており、売上高の規模の割には利益率は高くない。つまり、事業規模の大きさによって利益を確保する構造となっている。
*3:2020年はCOVID-19感染拡大による臨時閉店・休業補償や感染防止策などの特別損失が多発したことで最終赤字に転落。それゆえ、特殊な状況における例外的赤字と見てよい。
✔自己資本比率と純資産
イオンの自己資本比率は右肩下がりで推移しており、2024年は7.6%とかなり低い水準に留まっている。ただし、これは傘下にイオン銀行があることが主要因であり、財務の健全性に問題はない*3。純資産は2020年まで減少傾向がみられたが、同年以降は増加傾向。2024年は純資産2.12兆円となっている。
*3:傘下のイオン銀行は顧客から預金4兆円規模で預かっており、貸借対照表での負債が広がっている。それゆえ自己資本比率が低くなりやすいが、イオンは1兆円以上の現預金を保有しているため財務健全性・流動性は十分に健全である。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
イオンの平均年収は947万円(2024年)と高水準だが、これは持株会社の490名のみの平均年収であるため参考にならない。実際には、事業会社に所属する大卒総合職・30歳で年収450万~550万円ほど、課長職レベルで年収800万~930万円レベルが目安となる。
✔従業員数と勤続年数
イオンの単体従業員数は490人(2024年)となっており、ほとんどの従業員は事業会社に所属している。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は16.8万人を超える巨大組織である。平均勤続年数は17.8年(2024年)と長いが、これも持株会社の490名のみの平均勤続年数であるため参考にならない。
総合評価
企業格付け:BBB
日系小売流通業としてはセブン&アイに続く業界2位の大手であり、売上高10兆円を超える巨大小売グループ企業。とりわけ地方都市において当社の『イオンモール』は商業インフラそのものであり、日本の地方社会を経済的に支える企業でもある。業績においては売上高の増加が続いており、2024年には売上高10兆円を突破。営業利益率は2%台とまったく高くはないものの、売上高10兆円を超える事業規模の大きさを活かして営業利益2,000億円程度はしっかり確保できている。ただし祖業のスーパーマーケットでは利益による利益は僅かであり、金融・不動産が大きな稼ぎ頭。それゆえ、数ある子会社の中でも、総合金融事業を担うイオンフィナンシャルサービスおよびデベロッパー事業を担うイオンモールが殊更に重要な存在となっている。長期的には国内人口縮小・地方都市衰退が逆風となる企業ではあるが、地方都市においては既に代替がきかないレベルの商業インフラとして機能しているが故に安定性は高いだろう。これまでも数々の同業他社を吸収することで企業規模を拡大してきた歴史の通り、人口減少社会においても統廃合による規模拡大・合理化を進めることで商機を見出すことはできる。
就職格付け:C
小売流通業におけるトップ企業の1社であり、日本人ならば誰もが知る超大手企業。…が、あまりにも日本人の生活に根差しすぎた企業である為に、就職したとしても羨望の眼差しまでは受けられない可能性が高い。給与水準においては大手企業ではあるものの、そこまでは高くなく、大卒総合職は30歳で年収450万~550万円ほどが目安。見かけ上の平均年収は947万円(2024年)を超えており高給にも思えるが、①持株会社の従業員490人のみで算出された平均年収である点、②持株会社の従業員490人は平均年齢49.1歳・平均勤続年数17.8年とベテラン社員で固められていると想定される点、からして本社勤務のベテラン社員のみの平均年収であると考えざるを得ない。逆を言えば、連結従業員数16.8万人に及ぶ巨大グループを統率する持株会社のベテラン社員490人の平均でも947万円台どまり…という見方もできるだろう。福利厚生においては大手企業並みのものは一通り揃うが、そこまで目を見張るような制度はない。強いて言えば、転勤による住居変更の場合には借上げ社宅として住宅支援を得られる点はメリットであろうか。総合職の場合には広いエリアでの転勤がある割に給与水準もそこまでの為に旨味は少ない。が、転勤がない地域職の場合であれば地方都市における数少ない巨大企業の正社員雇用枠であるため、共働き夫婦など転勤リスクを排除したい場合には大いなる選択肢となり得る。