企業概要
アドバンテストは、半導体業界向けテストシステム・計測機器を主力とする半導体製造装置メーカー。1953年に微小電流計の製造を目指して創業、1970年代には半導体の品質を出荷前に自動検査するテストシステム分野へと進出。現在においては同分野で米テラダインと世界シェアを二分する最大手であり、自動検査工程に必須となるシステム・ハンドラ・インターフェースをワンストップで提供できる点に強み。米エヌビディア社との取引関係が深い。
1.半導体テストシステムで世界2強の一角、世界シェアは首位
2.売上高・利益いずれも絶好調で成長基調、財務体質も大いに健全な水準
3.平均年収1,010万円だが賞与比率は高め、福利厚生もそこそこ良好
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:72(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用数は年間30人~40人とかなり少ない。一般知名度はかなり低いが、それでも総合職の出身大学はハイレベル大学が多い。昨今の業績好調により入社難易度も上昇傾向。
採用大学:【国公立】東京大学・東京工業大学・東北大学・大阪大学・九州大学・群馬大学・大分大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・同志社大学・立命館大学・東京理科大学など(出典:リクナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
アトバンテストの売上高は長年に渡って成長基調が続いており、2022年には売上高5,602億円に到達して過去最高を更新*1。営業利益は過去8年間で10倍以上の増加を遂げており、2022年には1,677億円に到達。
*1:業績が急成長している理由は、①5G通信やデータセンターの需要拡大による最先端半導体向け製品の販売好調、②AIブームによるGPU向けテスト装置の販売好調、③為替レートの円安推移による為替効果の享受、など。
✔セグメント別の状況
アドバンテストは、半導体・部品テストシステム事業(半導体デバイス向けSoCテストシステム、メモリ半導体向けメモリテストシステムなど)、メカトロニクス事業(半導体ハンドリング用テストハンドラ、デバイスインタフェース)、サービス他事業(ソリューション提案、アフターセールス、中古販売など)、の3事業を有する。
アドバンテストは自動検査工程に必須となるシステム・ハンドラ・インターフェースをワンストップで提供しているが、稼ぎ頭はテストシステム事業である。とりわけGPU向けテストシステムでは米テラダインを突き放して独占状態に等しく、急成長する米エヌビディアとの取引関係が大きな利益をもたらしている。
✔最終利益と利益率
アドバンテストは純利益も右肩上がりで急増しており、直近の2022年には純利益1,304億円に到達して過去最高を更新。営業利益率も右肩上がりで推移しており、直近では29%と高水準。ただし半導体業界の好不況に利益率を左右されるため安定性には乏しい。
✔自己資本比率と純資産
アドバンテストの自己資本比率は業績好調により増加傾向にあり、直近では61%とかなりの高水準に到達。かつて無借金経営の時期もあったが、最近は有利子負債も活用しつつ事業運営している。純資産は急激な増加傾向が続いており、過去8年間で3倍以上に増大。直近では3,687億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
アドバンテストの平均年収は2018年を境に底上げされており、直近の2022年は平均年収1,010万円ほど。大卒総合職は30歳で年収650万~750万円、課長職レベルで年収1,200万~1,300万円レベル。給与における賞与比率が高いため業績により大きく変動する。
✔従業員数と勤続年数
アドバンテストの単体従業員数は緩やかな減少傾向にあり、直近では1,988人規模。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数も6,500人ほど。平均勤続年数は直近で20年を優に上回っており従業員の定着は良い。
総合評価
企業格付け:AA
半導体テストシステムにおいて米テラダインと双璧をなす世界2強の一角、そのうえ現状では当社が世界シェアの約57%を掌握しており形勢は有利。昨今の生成AIブームを追い風として業績は絶好調そのもの、過去8年間で営業利益は約10倍にも増大しており著しい増益ペースを謳歌。GPU分野で世界最大手の米エヌビディアとの取引関係が強いが故に、【生成AIブームによるGPU需要増加→米エヌビディアの業績拡大→当社の成長】という構造となっている。財務体質は自己資本比率60%を上回っており良好な水準にあり、生成AIブームが一服したとしても十分に耐え凌げるだろう。生成AIの急激な技術進歩の影には当社の多大な技術貢献あると考えると、人類の進歩になかなか大きな貢献を果たしている企業である。
就職格付け:A
2017年頃から急激に株価を伸ばし続けたことで株式市場を大いに沸かせた半導体製造メーカー。かつて2009年頃には巨額の損失を計上して業績不振に陥っていたが、過去10年強で過去最高圏までの大復活を遂げた。給与水準は半導体業界らしい高水準であり、業績拡大期に突入した2018年以降は平均年収1,000万円以上が定着。ただし半導体企業の例に漏れず賞与比率が高い給与制度となっており、業績悪化時には大きく平均年収は落ち込む。業績悪化に苦しんだ時期には平均年収600万円台までの下落も経ており、いかに賞与比率が高いのかを示している。福利厚生もそこそこ恵まれており、条件を満たした適用対象者に限って家賃補助・借上げ寮が適用されるが補助額は2万〜5万円ほど。総じて優良なニッチトップ企業であり、将来的に生成AIが人類社会に不可欠の存在になった場合には更なる業績拡大も期待できるだろう。