企業概要
P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は、アメリカに本社を置く日用品メーカー。1837年にウィリアム・プロクターとジェームス・ギャンブルが石鹸などの日用品メーカーとして創業。1933年には世界初の家庭用合成洗剤を発売、1961年には布おむつに代わる使い捨て紙おむつを発売。優れた製品開発力と卓越したマーケティングによって競合を圧倒。1980年代にはヘルスケアや化粧品などへ事業を多角化。現在では世界180ヵ国以上で約48億人以上に製品を提供する世界最大の日用品メーカーとなっている。
・日用品メーカーとして世界首位、アメリカ発祥だが世界180ヵ国以上に展開
・売上高は緩やかに成長するが利益は横這い、財務体質はそこそこ優良
・総合職の30歳で850万~1,000万円ほど、福利厚生は給与に込み
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:74(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:最難関級
外資系メーカーとしてはトップクラスの人気度を誇るが、総合職の新卒採用は例年20人~50人と少なめ。総合職の出身大学は旧帝大・早慶クラスがボリューム層となっている。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・名古屋大学・北海道大学・神戸大学・東京工業大学・東京外国語大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・同志社大学・学習院大学など(出典:unistyle)
業績動向
✔売上高と営業利益
P&Gの売上高は2019年までは650億~670億ドルで横這いであったが、2020年以降は増加傾向に転換。直近の2023年には820億ドルに到達。営業利益は売上高ほどの増加ペースにはないが、直近の2023年は181億ドルとなっている。
✔セグメント別の状況
P&Gは、ビューティー部門(シャンプー・コンディショナー・スキンケア用品など)、グルーミング部門(シェービング剃刀・脱毛ケア用品など)、ヘルスケア部門(歯磨き粉・歯ブラシ・サプリメント・ヘルスケア用品など)、ホームケア部門(洗濯用洗剤・柔軟剤・選択用品・食器洗い用洗剤・キッチン用品)、ファミリーケア部門(ベビー用品・ペーパータオル・トイレットペーパーなど)、コーポレート部門(間接部門)、の3部門を有する。
当社は世界最大の日用品メーカーとして多種多様な製品ラインナップを誇るが、最大の収益源はホームケア部門となっている。同部門は祖業にあたる洗剤やキッチン用品などを主力としており、今なお高い競争力と利益率によって業績貢献を果たしている。
✔最終利益と利益率
P&Gの純利益は2019年に39億ドル*2まで減少したが、直近の2023年には純利益147億ドルまで回復。営業利益率は2019年を除けば20%強での推移が定着しており、日用品メーカーとしては大いに良好な利益率を誇る。
*1:2019年に純利益が急減した理由は、グルーミング事業における剃刀ブランド「ジレット」で評価損80億ドルが主要因。当社は2005年にジレット社を買収したが、近年は剃刀でのシェービング頻度が減少すると共に競争環境が激化したことで巨額の評価損を計上するに至った。
✔自己資本比率と純資産
P&Gの自己資本比率は2020年まで低下傾向が続いていたが、同年以降は38%前後で横這いの推移となっている。純資産も2020年まで減少傾向にあったが、同年以降はは470億ドル前後での横這いの推移となっている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
P&Gの平均年収は非公開。日本法人における総合職の場合、30歳で年収850万~1,000万円ほど、マネージャークラスで年収1,300万~1,500万円が目安。同業他社に比べて優位性のある給与テーブルを設定している反面、異業種他社と比べると(世間が思うほどに)傑出した給与水準でもない。
[日本法人の個別データは非公開]
✔従業員数と勤続年数
P&Gの従業員数はグローバルで10万人(2023年)レベルとなっており、世界最大の日用品メーカーに恥じない組織規模を誇る。日本法人における従業員数は3,500人ほどと推定される。日本法人における平均勤続年数は非公開。
[日本法人の個別データは非公開]
総合評価
企業格付け:AAA
世界最大の外資系日用品メーカーであり、年間売上高は12.9兆円にも達する巨大企業。日系首位の日用品メーカーである花王(売上高1.53兆円)を圧倒する規模感であり、強引に例えるならば三井物産(売上高13.3兆円)や日産自動車(売上高12.6兆円)に相当する売上規模である。グローバル市場における最大のライバルは英国発祥のユニリーバ(売上高10.2兆円)であるが、規模感・利益率いずれも当社がリードする状況が続いている。最近の苦悩は2005年に総額5兆円以上を投じて買収した剃刀ブランド「ジレット」の不振であり、先進国・新興国いずれにおいてもシェービング頻度が低下傾向にあることが予想外の逆境となっている。
就職格付け:AA
1990年代から就職人気ランキング上位常連に位置し続ける憧れの企業。日用品メーカーとして誰もが知る製品ブランドを生み出し続ける製品開発力・マーケティング力を学ぶべく当社を目指す人材が多いことは勿論、プロフェッショナル人財の輩出企業としても著名であり当社卒業生は「P&Gマフィア」とも呼ばれることがある。総合職で入社後した場合には20代から複数ブランドの責任を背負わされ、一般社員でありながらも経営目線での思考を問われ続けることでビジネスセンスを伸ばすことができる。給与水準もかなり恵まれており、30歳で年収850万~1,000万円ほどには達する。とはいえ、同業他社と比べると圧倒的な高給ではあるものの、自動車・電機業界などの日系最大手メーカーと比較するとやや劣る部分もあるのは事実。給与水準だけで言えば卓越しているわけではないことを理解しつつも、外資系メーカーにおいてビジネスセンスを鍛えたい場合には良い選択肢となるだろう。なお、日本本社は兵庫県神戸市に立地する為、関西エリアで外資系メーカーに勤務したい場合にはまさしくトップ企業である。
出典:The Procter & Gamble Company(Investor Relations)