企業概要
KADOKAWAは、アニメ・ゲーム・ライトノベルなどを主力とするエンタメ・出版会社。1945年に国文学者の角川源義が出版社として創業。1970年代には大衆向けの映像・音楽分野へと参入、『戦国自衛隊』『犬神家の一族』などをヒットさせた。1980年代からはアニメ・ゲーム分野に参入、メディアミックス戦略によりライトノベル分野で業界首位を掌握。2014年にはネット動画大手のドワンゴと経営統合。教育事業にも参入しており、『N高等学校』『バンタンゲームアカデミー』などを運営。
・メディアミックス展開に卓越する出版社、アニメ・ゲームが稼ぎ頭に成長
・売上高・利益は成長基調が続いており、財務健全性も良好
・平均年収843万円だが福利厚生は普通、平均勤続年数3.7年と短い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:70(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間25人~40人ほど。3大出版社と比べると事業規模は大きいが、人気度は発展途上。Z世代には大きな知名度があるため、今後の難化が予想される。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・筑波大学・千葉大学・東京都立大学・東京藝術大学・防衛大学校など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・青山学院大学・法政大学・学習院大学・関西学院大学・関西大学・明治学院大学・共立女子大学など(出典:unistyle)
業績動向
✔売上高と営業利益
KADOKAWAの売上高は2020年まで2,000億〜2,100億円で横ばいであったが、2022年には2,500億円以上に上振れ*1。2023年には過去最高となる2,581億円に到達。営業利益は2022年まで増加傾向が顕著であったが、2023年には184億円まで後退*2。
*1:2022年に売上高が急増した理由は、①海外における当社アニメ作品の人気高騰、②連結子会社フロム・ソフトウェアの『エルデンリング』の大ヒット、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:2023年に営業利益が減少した理由は、①前年に大ヒットした『エルデンリング』の人気一服による反動減、②ニコニコ動画のプレミアム会員数減少および先行投資の増加、など。
✔セグメント別の状況
KADOKAWAは、出版・IP創出事業(書籍・雑誌・電子書籍・電子雑誌の出版・販売、Web広告)、アニメ・実写映像事業(アニメ・実写映像の企画・製作・配信・権利許諾など)、ゲーム事業(ゲームソフトの開発・販売)、Webサービス事業(動画サイト・ライブ配信の運営)、教育事業(オンライン教育・専門学校の運営)、その他事業(キャラクターグッズ販売・施設運営)、の6事業を有する。
当社は出版社としての出自をもつ企業であるが、現在では非出版分野が売上高の約46%・営業利益の約59%を占めるに至っている。とりわけ映像事業とゲーム事業は全社利益への貢献が大きく、出版・IP創出事業と連携したメディアミックス戦略によるシナジーが強みである。
✔最終利益と利益率
KADOKAWAの純利益は2018年に▲40億円に赤字転落*3したが、同年以降は黒字圏に回復。2019年から2023年にかけては純利益80億~140億円ほどで横ばい。営業利益率は2018年には1%レベルまで低迷したが、2022年には10.1%まで上昇している。
*3:2018年に最終赤字に転落した理由は、①ニコニコ動画の課金収入の下振れ、②位置情報ゲーム『テクテクテクテク』の課金収入の読み違えによる赤字、が主要因。
✔自己資本比率と純資産
KADOKAWAの自己資本比率は2020年頃から増加傾向にあり、2023年には56.0%となっている。純資産も2020年から増加傾向にあり、2022年には2,231億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
KADOKAWAの平均年収は790万円~885万円での横ばいが続いている。ゲーム・エンタメ業界としては上位クラスの給与水準だが、3大出版社には及ばない。大卒総合職の場合、30歳で年収700万~750万円ほど、課長職へ昇格すると年収1,000万~1,200万円に到達する。
✔従業員数と勤続年数
KADOKAWAの単体従業員数は2019年に急増しており、2023年には2,164人となっている*3。平均勤続年数は3.7年(2023年)と大手企業の標準的な水準を明らかに下回る。
総合評価
企業格付け:AA
かつて国文学者・角川源義が1945年に創業した出版社であるが、現在では映画・音楽・アニメ・ゲームなど多種多様な事業を展開するエンタメ会社として発展している。出版事業で生み出したコンテンツ・IPを活かして、アニメ・ゲーム・映画・音楽などでメディアミックス化していく手法において卓越。最近では、『ソードアート・オンライン』『オーバーロード』『Re:ゼロから始める異世界生活』などが世界的な人気を集めている。業績においては、世界的なアニメ人気を武器に、売上高・利益いずれも成長傾向。2022年には『エルデンリング』の大ヒットによって過去最高となる営業利益259億円を叩き出し、ゲーム分野でも頭角を現しつつある。財務体質においても優良であり、自己資本比率56%(2023年)と負債依存度は低い。
就職格付け:A
ライトノベル分野において断トツ首位のシェアを誇り、数々の人気作品を生み出している人気企業。伝統的な大手出版社である講談社・小学館・集英社(いわゆる3大出版社)に対して格式では劣るが、アニメ・ゲームを起爆剤とした事業拡大によって業績面では3大出版社を凌駕する。給与水準においては平均年収は790万円~885万円での横ばいが続いており、総合職の30歳で年収700万~750万円ほど、課長職へ昇格すると年収1,000万~1,200万円が目安となる。3大出版社に比べると待遇面では大きな差があるのが現実だが、現在の当社の事業展開からすればゲーム・エンタメ業界と比較する方が適切であろう(実際、ゲーム・エンタメ業界としてはトップクラスの待遇である)。福利厚生においては意外と凡庸であり、家賃補助制度や借上げ社宅制度はない。在宅勤務をメインにすると在宅チョイス支援金として月額2万円が補助されるが、代わりにオフィスに固定席がなくなる(オフィスに固定席を用意して貰うと月額2万円の補助はなくなる)。地味だが、『サブスク手当』としてコンテンツ系サービスの加入費用が月額3,000円まで補助される。総じて、ゲーム・エンタメ業界としては大いに恵まれた待遇だが、給与水準が同レンジの大手メーカーと比べると福利厚生の弱さも垣間見える。