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電通グループの企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

電通は、テレビ広告・デジタル広告などあらゆる広告宣伝・マーケティングに関わる戦略策定~実行を支援する大手広告代理店。1901年に光永星郎が設立した日本広告を源流とし、戦時中には国家総動員体制の下で国内広告会社を統合、巨大広告代理店として君臨。戦後も業界屈指の企業として君臨し続け、1955年に現社名の電通に社名変更。1973年には広告取扱高で世界首位に到達。海外広告代理店のM&Aが奏功して現在においても広告業界では世界6位、国内2位の博報堂DYに売上高で4倍の差をつけて独走。

POINT

・日系広告代理店として断トツ首位、世界でも上位6社に食い入る
・売上高は成長基調だが利益は伸び悩み。財務も自己資本比率23%と低め
・持株会社の平均年収1,520万円だが、事業会社は30歳で年収900万円ほど

業績動向

✔収益と営業利益

電通グループの収益は緩やかな成長基調が続いており、2022年には過去最高となる1.24兆円に到達*1。営業利益は年度により好不調が分かれるが、営業利益1,000億円レベルでの推移が多い。2020年は営業損失1,406億円を計上*2。
*1:電通グループの収益は2014年以前は2兆円に迫る水準で推移していたが、同年に国際会計基準IFRSへ移行。会計基準の収益認識の相違から2014年以前の収益とは単純比較できない。
*2:2020年はCOVID-19感染拡大によるマーケティング需要の激減で業績悪化。自粛ムードの広がりで主力のテレビ広告が打撃を受け、電通グループがマーケティング専任代理店を担う東京オリンピックも延期。持続化給付金の手続き業務に関するスキャンダルも発覚。

✔セグメント別の状況

電通グループは国内事業(国内向けの広告・マーケティングサービス、コンテンツビジネス、情報システム・ソフトウェア開発など)、海外事業(海外向けの広告・マーケティングサービス、コンテンツビジネス)の2事業を有する。
電通グループは収益の約57%を海外で稼ぐグローバル展開が進んだ広告代理店。2013年には同業の英イージスを約4,000億円で買収。世界100ヶ国に300拠点以上を有する同社の海外ネットワークを取り込み、世界的な広告代理店への成長を果たした。

✔最終利益と利益率

電通グループの純利益は年度により好不調が分かれるが、2019年・2020年は大幅純損失に転落。2021年には純利益1,084億円にまで急回復*3。営業利益率は好調時でも15~22%程度の水準であり世間のイメージ程の超高収益ではない。
*3:2021年に電通グループは構造改革の一環として電通本社ビルや研修所などを売却。固定資産売却益1,189億円を計上しての純利益確保であり、本業好調による増益ではない点に注意。

✔自己資本比率と純資産

電通グループの自己資本比率は緩やかな減少傾向にあり、直近では23.2%とやや低めの水準*4。純資産は1兆円前後での横這いが続いており、純資産を増加させられない状況が続く。
*4:電通グループは2013年に同業の英イージスを買収するために社債・有利子負債による巨額の資金調達を実施。自己資本比率は40%台から20%台まで下落した。それから財務体質の回復は緩慢であり、自己資本比率20%台での低空飛行が続く。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

電通グループの平均年収は直近の2023年で1,588万円と極めて高水準だが、これは持株会社の165名のみの平均年収。大卒総合職なら30歳前後で年収850~950万円ほど、課長職に昇進すれば年収1,300~1,900万円程度。平均年齢は2020年に46歳まで急増*5。
*5:電通グループは2020年に持株会社体制へ移行、これにより持株会社の従業員129名のみを対象とした平均年収・平均年齢に変更となったことに起因。

✔従業員数と勤続年数

電通グループの単体従業員数は2020年の持株会社制への移行により急減。子会社・関連会社を合わせた連結従業員数は6万人規模である。平均勤続年数は直近で16.9年だが、これは持株会社の165名のみの平均勤続年数。

総合評価

企業格付け:S

日本の広告業界において断トツ首位の存在であり、業界2位の博報堂DYに売上高で4倍の差をつけている業界の巨人。世間では陰謀論の槍玉にあげられがちな存在で超高利益企業のイメージがあるが、近年の業績に目覚ましいものはない。収益こそ増加するもの利益の増加ペースは緩慢、営業利益率も2021年以降は(固定資産売却益を除けば)10%に満たない。財務体質も自己資本比率23%とやや低め。こうした状況を招いたのは、①同業の英イージスの買収による企業規模の肥大化、②巨額を投じた英イージスの買収後にネット広告への急シフトが進んだこと、がある。英イージスを買収した2013年当時はまだスマートフォン黎明期であったが、それから10年余りで広告業界が激変して従来型のビジネスモデルの限界に直面している状況。新興ネット広告企業たちが新たな競合となっている他、近年はコンサルティング会社がマーケティング領域にも積極進出。電通グループの事業環境は大きく転換しつつある状況。

就職格付け:SS

マーケティング・クリエイティブといった華々しいイメージがある広告代理店業界で断トツ首位の存在であることから、就職最難関企業の1社。給与水準は平均年収1,500万円オーバーと日系企業最高峰だが、この数字は持株会社の従業員129名かつ平均年齢44歳での平均年収である点には注意。かつては超長時間労働により30歳で年収1,000万円の突破もありえたが、ワークライフバランス改革&業績不調により現在では30歳で年収1,000万円は超えにくい状況。とはいえ福利厚生は充実しており、①東京ディズニーリゾートへの社員・家族の無料招待(年1回)、②格安で入居できる借上げ社宅制度、③人間ドックの毎年受診(年1回)、などがある。転職市場においても、元電通という肩書の神通力は絶大であり、依然として就職格付けは最上位級である。

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