企業概要
高島屋は、衣料品・宝飾品・家庭用品・飲食品などを販売する大手総合百貨店。1831年に飯田新七が京都で開業した木綿商展を源流とし、江戸時代から大手呉服店として発展。明治以降は舶来品輸入にも参入、戦前期から関西・関東を二大地盤として総合百貨店の地位を確立。現在では百貨店業界において三越伊勢丹HDと並んで国内首位級の規模を誇り、東京・名古屋・大阪の三大都市圏すべてに大型店舗を展開。海外にも店舗展開しており、シンガポール・バンコク・上海・ホーチミンにも店舗展開。
・百貨店業界でトップクラスの企業規模、創業190周年以上の老舗企業
・売上高・利益はCOVID-19影響から急回復、財務体質は普通クラス
・平均年収777万円で業界上位級だが福利厚生は希薄、平均年齢が高め
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:58(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用数は年間15人~35人以上と少ない。一般知名度が高い割には採用枠が少ないため、難易度は高い。小売業界としては珍しく、ハイレベル大学からの採用もある。
採用大学:【国公立】大阪大学・筑波大学・千葉大学・横浜国立大学・東京都立大学・大阪公立大学・お茶の水女子大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・同志社大学・明治大学・青山学院大学・関西学院大学・立命館大学・日本大学・駒澤大学・甲南大学・龍谷大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
高島屋の売上高は2020年に売上高6,809億円に急落*1、2022年には会計基準の変更*2によって4,434億円まで減少した。2022年からは売上高の増加が続いており、2024年には4,984億円に到達。営業利益は2020年に▲134億円まで悪化したが、同年以降は急速に回復を遂げている。
*1:2020年は世界的なCOVID-19感染拡大を受けた臨時休業を約1ヶ月に渡って実施した他、外出自粛が長期化したことで売上高が大きく減少した。
*2:2022年から企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」を適用。収益認識の基準が変更されたことで売上高が数字上は減少している。
✔セグメント別の状況
高島屋は、国内百貨店事業(高島屋百貨店における衣料品・宝飾品・家庭用品・飲食品などの販売)、海外百貨店事業(海外における百貨店運営)、商業開発事業(国内外における不動産開発)、海外商業開発事業(海外における不動産開発)、金融事業(クレジットカード・保険・投資信託など)、建装事業(商業施設・ホテル・船舶などの内装設計~施工)、その他事業(通信販売・卸売など)、の7事業を有する。
当社は百貨店事業をコアとしたビジネスモデルとなっており、国内・海外の百貨店事業によって売上高の約70%を稼ぐ。旗艦店舗は大阪店・日本橋店・横浜店であり、この3店舗だけで売上高4,000億円以上を稼ぐ。利益においては他事業の貢献も大きく、商業開発事業・金融事業も利益の柱となっている。
✔最終利益と利益率
高島屋の純利益は2020年に▲339億円まで急減したが、同年以降は急回復。2025年には過去最高となる純利益395億円に到達。営業利益率は通常時で2%~3%ほどだが、2024年には11.5%に拡大。贅沢品の消費が活発化する好景気局面には利益が伸びるが、消費が冷え込む景気後退局面では利益が減りやすい。
✔自己資本比率と純資産
高島屋の自己資本比率は2019年までは40%台で安定していたが、2020年以降は35%前後に低下している。財務体質としては健全性に問題はないが、優良と言える水準でもない。純資産は2020年にやや減少したが、同年以降は回復傾向。2024年には純資産5,003億円となっている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
高島屋の平均年収は長年に渡って緩やかな増加傾向が続いており、2024年には777万円に上振れ。ただし平均年齢が49.4歳(2024年)と高めである為、他社比較時にはやや割り引いて見てもよいだろう。大卒総合職は30歳で530万~650万円、課長職レベルで750万~900万円ほど。
✔従業員数と勤続年数
高島屋の単体従業員数は長年に渡って減少傾向が続いており、2024年は3,621人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は6,574人ほど。COVID-19以降に社員数減少が進んだ他、2024年には岐阜高島屋・岡山高島屋を閉業。平均勤続年数は25.5年(2024年)と極めて長い。
総合評価
企業格付け:CC
創業120周年以上の江戸時代から続く老舗であり、百貨店業界における最大手企業。高級品から食料品までオールマイティな商品展開に特徴があり、富裕層から一般庶民・若者から高齢者までに親しまれやすい店舗づくりにも長ける。業績においては回復傾向にあり、2019年・2020年のCOVID-19感染拡大による最悪期から脱出を果たした状況。2022年に会計基準の変更が適用されたことで見かけ上の売上高は落ちているが、2022年からは世界的な景気好調によって贅沢品の販売が大きく伸長。円安による訪日外国人の増加も、高級品販売の追い風となっている。百貨店業界は優勝劣敗が急速に進みつつあるため、高い競争力・集客力がある都市部の大型店舗への集中を急ぎつつ、地方の老朽店舗の閉業を進めることで収益基盤の強化を図っている。2024年には採算が悪化していた岐阜高島屋・岡山高島屋を閉業、今まで地域社会との兼ね合いから維持してきた店舗の整理も辞さない。
就職格付け:CC
関東圏・中京圏・関西圏のすべてにおいて高いブランド力を持つ大手総合百貨店であり、日本を代表する百貨店会社の1つ。百貨店業界は地域性が強い業界であるが、こと高島屋については戦前から他地域展開に積極的であったことで現代においても全国区で知名度がある点で優位。給与水準においては平均年収777万円(2024年)と、小売流通業としては業界上位級。ただし平均年齢が49.4歳(2024年)と高齢化が進んだ組織内での平均年収であるため、若手層や30代における年収で言えば傑出しているわけでもない。が、大卒総合職ならば30歳で530万~650万円ほどには到達するため、やはり小売流通業としては恵まれている方である。次長クラスまで昇進すると年収1,000万円を超えるが、同期の10%ほどしか到達できないとされる。福利厚生においてはそこまで恵まれてはおらず、家賃補助制度では最大1万円/月ほどで社宅制度などはない(ただし会社都合による転勤者に対してはあり)。強いて言えば、2022年度の育児休業取得率は男性・女性いずれも100%である点は優秀だろうか。