カテゴリー
不動産 海運

【勝ち組?】飯野海運の就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

飯野海運は、外航海運・オフィスビル賃貸を主力とする海運会社。1899年に飯野寅吉が京都府舞鶴市で石炭運送会社として設立。1922年に海運事業へと参入して、1929年には自社保有タンカーを就航させた。終戦後の1946年には東京都へと本社移転、大型タンカーを就航させ原油輸送へと本格参入。1960年代からは不動産事業を本格化して、『海運×不動産』のビジネスモデルを完成させた。現在では96隻の船隊を保有しつつ、飯野ビルディングを筆頭とするオフィスビル運営も収益の柱としている。

POINT

・海運業と不動産業を両輪とする中堅海運会社、船隊規模は90隻レベル
・売上高・利益は2021年から急成長、財務体質も健全化が進む
・平均年収1,406万円だが不調時は900万円台に、福利厚生も恵まれる

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:71(上位)

日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関

総合職の採用人数は年間5名~10名と極めて少ない。一般知名度は低いが、大手海運会社との併願先となりやすいこともあって選考倍率は相当に高い。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・名古屋大学・東北大学・神戸大学・横浜国立大学・滋賀大学・長崎大学・東京外国語大学・東京海洋大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・立教大学・法政大学・関西学院大学・立命館大学・津田塾大学など(出典:マイナビ2027

業績動向

✔売上高と営業利益

飯野海運の売上高は2019年まで810億~890億円ほどで推移していたが、2021年からは急増傾向にある*1。2023年には過去最高となる売上高1,418億円となっている。営業利益は2020年まで30億~75億円で推移していたが、2021年には200億円に急増している。
*1:2021年から売上高・利益が急拡大した理由は、①原油タンカー・ケミカルタンカーの市況好調、②海運市況上昇を受けた高単価なスポット貨物の取り込み、③為替レートの円安推移による為替効果、など。

✔セグメント別の状況

飯野海運は、外航海運事業(大型原油タンカー・ケミカルタンカー・大型ガス船)、内航海運事業(国内水域・近海における液化天然ガス・液化石油ガス・石油化学ガスの海上輸送など)、不動産事業(国内外の賃貸オフィスビル所有・運営・管理、フォトスタジオ運営など)、の3事業を有する。
当社は海運事業で売上高の約90%を稼いでおり、不動産事業は売上高の10%ほどに過ぎない。が、不動産事業は高利益率が安定しているため、世界の海運市況による業績の浮き沈みが激しい海運事業の不安定性を補う役割を果たしている。直近では海運事業が全社利益の約77%を稼いでいるが、世界の海運市況が低迷期にあった2019年は不動産事業が全社利益の約69%を稼いでいた。

✔最終利益と利益率

飯野海運の純利益は2019年まで30億~76億円ほどで推移していたが、2021年には過去最高となる233億円まで急増。同年以降はやや減少傾向がみられるが、2023年でも純利益183億円を維持している。営業利益率は不調時には4%台に低下するが、好調時には14%以上の水準にまで上振れしている*3。
*3:当社に限らず、海運業界は世界の海運市況の浮き沈みによって業績が安定しない特徴がある。そのため営業利益率が好調時と不調時で大きく変動しやすい。

✔自己資本比率と純資産

飯野海運の自己資本比率は2019年から右肩上がりの推移が続いており、2023年には47.5%に到達している。純資産は2019年から業績好調を追い風に急伸しており、直近では1,456億円に到達している。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

飯野海運の平均年収は2021年までは900万~940万円ほどで推移していたが、2024年には1,406万円まで上振れ。業績変動による浮き沈みは激しいが、業績低迷期でも平均年収900万円以上は保っている。総合職の場合、30歳で年収850万〜950万円、課長職レベルで年収1,500万~1,700万円ほどが目安となる。

✔従業員数と勤続年数

飯野海運の単体従業員数は150人~190人ほどで長期的に推移しており、少数精鋭の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は680人ほど。平均勤続年数は12.8年(2023年)と、大手企業の標準的な水準を下回る。

総合評価

企業格付け:BB

■業績動向
絶好調。2021年からの海運市況の好転を追い風に、売上高・利益は過去最高圏で推移。長期用船契約への切り替えを進めたことで、当面は急激な業績悪化のリスクも少ない状態となっている。海運業界はドル建て決済が主であるため、為替レートの円安推移も恩恵。安定的な利益源として不動産事業にも注力しているため、海運業界としては業績の浮き沈みが激しくはない方である。

■財務体質
良好。かつては自己資本比率30%台であったが、昨今の業績好調によって純資産の増加が著しく、直近では自己資本比率47.5%(2024年)にまで到達している。当社の『海運×不動産』ビジネスモデルの弱点は「船舶・不動産への巨額投資が常に発生する」点にあるが、現状の財務基盤であれば当面は継続的な投資に支障がないだろう。

■ビジネス動向
2023年に新たな中期経営計画を策定。IINO MODELこと『海運×不動産』ビジネスモデルの継続を志向。過去5年間で強固となった財務基盤を活かしつつ、不動産・外航ガス船・ドライバルク船への投資を継続する方針。海運業界の脱炭素化の潮流をも見据え、バイオ燃料の段階的確保や船上CO2回収・貯留の導入も目指す方針。

就職格付け:AAA

■給与水準
平均年収1,406万円(2023年)と業界上位クラスだが安定しない。業績好調時には平均年収1,000万円を大きく上回るが、業績不調時には平均年収900万円台に後退する傾向。が、逆を言えば業績不調時にも平均年収900万円を超えるため、給与水準としては相当に恵まれているだろう。総合職の場合、30歳で年収850万〜950万円、課長職レベルで年収1,500万~1,700万円ほどが目安となる。

■福利厚生
極めて良い。独身の若手社員には独身寮が与えられ、既婚者には借上げ社宅制度が適用される。平均年収も高いうえに住宅補助が手厚いため、可処分所得は見た目の平均年収よりも更に上である。有給休暇とは別にバカンス休暇が年7日も与えられる。産休中も給与100%相当が保証されるうえ、育児中には月額1万円の育児支援補助が支払われる。

■キャリア
陸上総合職・海上職の2職種制。陸上総合職は営業・船舶運航管理・不動産開発に従事する一方、海上職は外航船・内航船における乗員としてのキャリアパスとなる。従業員数200名にも満たない少数精鋭の組織体制であるため、従業員1人1人の所轄範囲が広いうえジョブローテーションによる異動範囲も広い。

就職偏差値ランキング【完全版】はこちら!

出典:飯野海運株式会社(有価証券報告書)