企業概要
阪和興業は、鉄鋼・非鉄金属・食品・化学品・エネルギーなどを手掛ける大手専門商社。1946年に大手総合商社・安宅産業を退職した北二郎が創業。1950年代に鉄鋼商社として発展したのち、木材・水産品・エネルギー分野などに進出。現在では売上高の約60%を鉄鋼関連、他40%を鉄鋼以外の分野で稼ぐ。2021年には南アフリカで鉱業権を獲得、プラチナやニッケルの権益を掌握。鉄鋼系専門商社としては日本製鉄グループの日鉄物産を抑えて国内首位の売上高を誇る。日系7大鉄鋼商社の一角。
・鉄鋼専門商社では業界首位級の規模、非鉄鋼分野も規模大きい
・売上高・利益は2021年を境に急増、財務体質も概ね健全
・平均年収849万円だが総合職なら30代で1,000万前後、福利厚生はそこそこ
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:70(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
今なお一般職を大量採用する珍しい企業であり、例年の採用枠は総合職50名・一般職50名ほど。関西圏では著名企業ゆえ、近畿一円の大学から応募が集まる。最近の商社人気で難化傾向。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・名古屋大学・神戸大学・金沢大学・熊本大学・神戸市外国語大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・同志社大学・フェリス女学院大学・武庫川女子大学・日本女子大学・同志社女子大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
阪和興業の売上高は2000年代から売上高1.5兆レベルで推移してきたが、2021年以降は売上高2兆円を突破して過去最高圏を推移している*1。営業利益は2020年以降に売上高を超えるペースでの急増を遂げ、2022年には641億円に到達。
*1:2021年以降の業績好調の理由は、①世界的な資源価格高騰をによる鋼材・非鉄金属・原油の価格上昇、②戦略投資先である南アフリカのニッケル採掘企業の業績好調、など。
✔セグメント別の状況
阪和興業は鉄鋼事業(条鋼・鋼板・特殊鋼・鋼管など)、プライマリーメタル事業(ニッケル・クロム・マンガン・貴金属など)、リサイクルメタル事業(アルミ二ウム・銅・亜鉛・チタンなどのリサイクル)、食品事業(水産物・畜産物)、エネルギー・生活資材事業(石油製品・工業薬品・バイオマス燃料など)、海外販売子会社、その他事業の5事業を有する。
当社は鉄鋼系専門商社のイメージが先行する通り、売上高の約60%を鉄鋼分野(鉄鋼事業・プライマリーメタル事業・リサイクルメタル事業)が占めている。他40%は食品やエネルギーなどの非鉄鋼分野が占めており、エネルギー・生活資材事業は鉄鋼に続く売上高・利益を稼ぐ事業となっている。
✔最終利益と利益率
阪和興業の純利益は2019年に純損失137億円を計上*2したが、同年以降は急激に改善。2022年には純利益515億円まで到達して過去最高を更新している。営業利益率は1~2%レベルでの推移が続いており、ビジネス規模の大きさで利益を確保する構造となっている。
*2:2019年の最終赤字の理由は、①南アフリカのクロム採掘会社・サマンコールにおける大規模な損失発生(参考リンク)、②米中貿易摩擦やCOVID-19感染拡大による鉄鋼需要の減少、など。
✔自己資本比率と純資産
阪和興業の自己資本比率は概ね20%前後の水準。2021年には自己資本比率13.8%にまで急落*2したが、その後の業績好調によって2023年には30.1%まで回復。純資産は2019年から増加傾向にあり、直近では3,567億円に到達。
*3:2021年にはロシアによるウクライナ侵攻に伴う先物商品価格の急変動への対応として、巨額の資金調達と会計処理が発生。負債が一時的に急増したことで自己資本比率が急低下する現象に見舞われた事情がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
阪和興業の平均年収は平均年収800~850万円前後の水準で安定的。専門商社としては高くない給与水準にも見えるが、これは総合職以外の一般職採用も多い影響が大。総合職であれば30歳で750万~850万円ほど、課長職レベルで1,200万~1,500万円ほど。在阪上場企業では上位級の給与水準である。
✔従業員数と勤続年数
阪和興業の単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いており、直近では1,650人規模に到達。専門商社らしく少数精鋭の組織規模。平均勤続年数は12.0年と若干短いが、従業員数が増加傾向にあるため平均勤続年数が伸びにくい事情もあるだろう。
総合評価
企業格付け:A
大阪府に本拠地を置く専門商社としては長瀬産業・岩谷産業に並び立つ大手であり、日系7大鉄鋼商社の一角。戦後に創業された歴史が浅めの専門商社ではあるが、積極的な事業拡大と事業ポートフォリオ多角化に成功。売上高においては日本製鉄グループ傘下の日鉄物産を上回る規模にまで到達しており、鉄鋼専門商社としては国内最大手の一角にまで成長している。業績は2020年までは停滞感が強かったが、2021年以降は世界的な資源価格の高騰を追い風に売上高・利益いずれも急増。2021年には南アフリカのプラチナ・ニッケル権益も獲得しており、将来的な成長の起爆剤になるか期待される状況にある。財務体質においては自己資本比率30.1%とやや低めであるが、商社としては決して低くはない水準である。総じて、独立系の専門商社としては最大手クラスのビジネス規模を誇っている存在であり、業界内において一定以上の存在感を放っている。
就職格付け:AA
専門商社の宿命として主力事業がいずれもBtoB領域であるが故に一般知名度は悲しいほどに低いが、一定以上のリテラシーがある社会人に限ればよく知られた企業。給与水準はかなり恵まれており、平均年収こそ800万円前後で推移しているが、総合職であれば30歳で750万~850万円ほど、課長職レベルで1,200万~1,500万円ほどには達する。当社は職種区分が「総合職・エリア総合職・一般職・エリア一般職」に分かれており、総合職以外の職種によって全社の平均年収が下振れしている単純明快な事情がある(なお、一般職であっても年功を重ねれば年収600万円には到達するため、事務職種としてはかなり恵まれている部類である)。福利厚生もそこそこ、家賃補助が2.5~3.5万円は支給される他、社宅や独身寮も完備。併願されやすい総合商社と比べると流石に見劣りするが、在阪上場企業としては相当に上位級の待遇である。海外赴任すれば給与水準は1.5倍~1.8倍に跳ね上がるため、給与的には更に恵まれる。