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【勝ち組?】近畿日本鉄道の就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

近鉄グループホールディングスは、大阪府・京都府・奈良県・三重県・愛知県を地盤とする大手鉄道会社。1910年に大阪-奈良を結ぶ奈良軌道として創業。戦前には大阪-名古屋を結ぶ鉄道網を完成させた。戦後には国際物流事業にも進出、現在の近鉄エクスプレスを発足。現在では私鉄会社として最長となる501kmの路線網を誇る他、不動産・ホテル・流通・国際物流事業など多種多様な事業を展開。売上高においては私鉄大手の東急・阪急阪神HDを抜き去り、JR西日本に肉薄する規模に到達している。

POINT

・売上高・路線長で私鉄首位、事業多角化が進んでいるが国際物流に特に強い
・売上高・利益は近鉄エクスプレスの連結子会社化で急成長
・平均年収780万円、福利厚生は微妙だが幹部候補としてのキャリアは魅力

就職偏差値

✔就職偏差値:66(上位)

かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。給与・待遇は大手企業の中でも上位クラス、満足度の高い人生を安定して歩むことができる可能性が高い。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関上位級

グループ全体での総合職の採用数は年間150人~200人前後、特に持株会社での採用枠は年間20人ほどに過ぎない。関西圏では馴染みの企業だけに応募数も多く、難易度は相当に高い。
採用大学:【国公立】京都大学・一橋大学・大阪大学・名古屋大学・大阪府立大学和歌山大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・関西学院大学など(出典:リクナビ2025

業績動向

✔売上高と営業利益

近鉄グループホールディングスの売上高は2019年までは1.2兆円前後で安定していたが、2020年・2021年には0.69億円まで後退*1。しかし、2022年には急回復*2を遂げ、2023年には売上高1.62兆円に到達。営業利益は2020年に営業損失621億円を計上したが、同年以降は回復傾向。
*1:当社はCOVID-19感染拡大で大打撃を被った1社。外出自粛によって通勤・通学・レジャーが急減したことで鉄道事業の採算が急激悪化。
*2:2022年に近鉄エクスプレスを株式公開買付によって連結子会社化、同社の売上高が加わったことで急上昇した経緯がある。

✔セグメント別の状況

近鉄グループホールディングスは、運輸事業(鉄道・バス・タクシー・貨物運送・フェリー・ロープウェイなど)、不動産事業(オフィスビル賃貸・ソーラー発電・農業、沿線不動産の仲介・販売など)、国際物流事業(近鉄エクスプレスによる国際海上貨物輸送・国際航空貨物輸送・ロジスティクス)、流通事業(近鉄百貨店・近商ストア・駅ナカ事業など)、ホテル・レジャー事業(近鉄都ホテルズ、旅館・ホテル、ゴルフ場・水族館など)、その他事業、の6事業を有する。
当社は鉄道会社のイメージが強いが、運輸事業が売上高に占める割合は約15%と非常に少ない。今や当社の売上高の約54%は近鉄エクスプレスの国際物流事業が占めている実態がある。が、利益面では運輸事業が依然として最大の利益貢献を果たしている。

✔最終利益と利益率

近鉄グループホールディングスの純利益は2019年以前は200~360億円ほどであったが、2022年には887億円まで急上昇*3。2020年のみCOVID-19影響で純損失601億円を計上している。営業利益率もCOVID-19影響期間を除けば4%~5%ほどで推移しており、大手鉄道会社としては標準的。
*3:2022年は近鉄エクスプレスの連結子会社化により同社の利益が加わったうえ、COVID-19以降の物流混乱によって国際物流事業の採算が向上していたことも追い風であった。

✔自己資本比率と純資産

近鉄グループホールディングスの自己資本比率は長期的に15%~20%とかなり低めの水準で停滞*4。純資産は2020年に急落したものの、同年以降は増加傾向に転換。直近では純資産3,805億円に到達。
*4:鉄道会社は鉄道車輛や線路の維持管理に膨大な設備投資資金を要する特性があり、自己資本比率は他業界と比べて低めとなる特徴がある。ただし、安定したキャッシュフローが得られる業態であるため自己資本比率がやや低めであったとしても大きな問題とはならない。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

近鉄グループホールディングスの平均年収は直近で780万円であるが、これは持株会社の279人のみの平均年収である。事業会社の場合で、大卒総合職の30歳で年収500万~650万円、課長職レベルで880万~980万円ほどが目安*5。
*5:近鉄グループの職種には、大別して総合職・鉄道職の2種類がある。各職種ごとに職務領域が異なり、待遇にも大きな違いがある。鉄道職の場合は30歳で年収400万~550万円ほどである。

✔従業員数と勤続年数

近鉄グループホールディングスの単体従業員数は長期的に130人~250人で推移している。従業員の大半は事業会社に属しており、子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は4.43万人ほど。平均勤続年数は16年~18年ほどで推移しており、大手企業の標準的水準よりやや高め。

総合評価

企業格付け:B

関西圏においてはお馴染みの大手鉄道会社であり、私鉄会社としては東急グループ・阪急阪神グループを上回る売上高を誇る。同業他社との大きな相違点は、国際物流事業の事業規模の大きさであり、今や売上高の約54%を国際物流事業が占めている。鉄道会社が不動産・ホテル・小売など事業多角化するのはよくある話だが、国際物流において当社ほどの存在感を発揮している鉄道会社は他に皆無である。そもそも、敢えて近鉄エクスプレスを連結子会社化した理由は、他事業とはまったく異なるグローバルな事業領域を取り込むことで、「沿線人口の将来的減少・COVID-19以降の生活様式の変化」のなかで持続的な成長を果たすことにあるという。業績は2022年に上場子会社・近鉄エクスプレスを株式公開買付によって連結子会社化したことで大きく変化しており、売上高・利益いずれもCOVID-19以前を上回る水準に到達。近鉄エクスプレスは2023年時点で売上高7,338億円・営業利益180億円であり、これが連結子会社化された意義は大きい。財務体質は自己資本比率20%前後と低めだが、鉄道会社としてはそれほど問題はない水準。

就職格付け:総合職=BB、鉄道職=CC

私鉄会社としてはナンバーワンとなる総延長501kmもの路線網を有する大手鉄道会社。そして、近鉄グループホールディングスは約260社にも及ぶ近鉄グループの事業統括会社として、グループ全体の事業運営を担っている企業である。給与水準はCOVID-19感染拡大期には600万円台まで後退していたが、最近ではやや回復して平均年収780万円(2023年)となっている。大卒総合職であれば、大卒総合職の30歳で年収500万~650万円、課長職レベルで880万~980万円ほどが目安となろう。ただし、福利厚生は私鉄大手のイメージの割にはそれほど卓越してはいない。30歳以下かつ実家遠方の若手社員は自己負担1万円/月で借上げ社宅に入居できるが、上記条件にあてはまらなければ借上げ社宅制度・家賃補助制度の恩恵は得られない。が、当社の本当の強みは、将来的に各事業やグループ全体を牽引する経営者・事業リーダーになるキャリアを歩める点。事業統括会社である当社に入社した総合職は、将来的に近鉄グループにおけるエリート街道を歩むことが期待される位置づけ。関西圏の名門企業の幹部候補となれるキャリアは、かなりの希少価値であろう。

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出典:近鉄グループホールディングス株式会社(有価証券報告書)